サンタ通信No287(06)表 R5.06.18発行

夏と冬の感染症が一緒に流行中

 梅雨の季節になり,紫陽花がきれいです。今年の梅雨はよく雨が降っています。患者さんも,病気の子どもを連れて雨の中の受診は大変だと思います。私も買い物は,屋内の駐車場があるイオンをよく利用します。傘を使わずに買い物ができるのはとても快適です。この病院を建てる時にもう少し考えた方がよかったと後悔することがあります。駐車場に屋根があれば,雨の日や夏の暑い日に便利だったのに,当時は外側のことはあまり考えずに,病院の内部のことだけいろいろ考えていました。市立病院で働きながら,開業準備をしましたので,患者さんの立場から考えるという視点ができていなかったなあと反省しています。

 さて,最近1週間(6月5日〜6月11日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのはインフルエンザA型16人でした。次いで,ヘルパンギーナ14人,感染性胃腸炎8人,溶連菌感染症5人,手足口病5人,新型コロナウイルス感染症4人でした。この時期の特徴である夏カゼの手足口病やヘルパンギーナが多くなってきました。でも,この時期にインフルエンザがこれだけ流行しているのは珍しいです。夏の病気と冬の病気が一度に流行していて,しかも患者数が多いのですから,小児科の外来は大忙しです。これまでのコロナ対策で,人の移動がなくて,日本国中がマスクで完全防御していた時期は,本当に感染症が少なく,小児科外来は予防接種や健診が主な仕事になっていて,楽な2年間を過ごしました。忙しくなるはずの冬にインフルエンザが全く流行しなかったのですから,病院の経営は大丈夫だろうかと心配するくらいでしたが,コロナ対策が緩和され,通常生活に戻ると同時に,それまで流行していなかった感染症がまとめて流行してきた感じです。発熱する患者が多く,コロナだったりインフルエンザだったりしますので,診察に気を遣いながら,多くの患者を診なければならないので,大変な仕事になっています。「楽あれば苦あり」を充分に感じるこの頃です。感染症の多い状態は,夏休みくらいまで続くのではと私は思っています。本来ならば感染症にかかるはずの子ども達がかからずにいたわけですから,感染の機会が増えれば,いつもより大きな流行になるはずですが,まだ日常生活でマスクをされている方も日本では多いので,ある程度感染症が抑られて,今の状態になっているのだと考えられます。願わくは,少しずつコロナ対策が緩和されていくことですね。

7月12日,13日が休診となり,14日金曜日は診療致します。

7月17日(月)海の日は当番医を担当します。お盆休みは8月14〜22日が休診です。

サンタ通信No287(06)裏 R5.06.18発行

ヘルパンギーナについて

 夏カゼの代表が,手足口病とヘルパンギーナです。どちらもエンテロウイルスによる感染症です。ヘルパンギーナは,エンテロウイルスの中のコクサッキーウイルスA群が主な原因ウイルスです。7月を中心に6〜8月に流行します。症状は38〜40℃の発熱と咽頭痛で,1〜3日間で解熱します。のどを診ると,軽く発赤していて,のどの奥に直径2〜4mmの小水疱や浅い潰瘍を認めます。1〜4歳の乳幼児に多い病気です。感染経路は飛沫感染ですが,症状が治まった後もこのウイルスは腸管で増殖し,便に排出されるため,おむつや下着が汚染されて,手を介した間接的経口感染(糞口感染)も少なくありません。1〜4週間便にウイルスが排出されるため,普段からオムツ交換時の手洗いなどを励行する必要があります。また,洗濯物は日光で乾かすと消毒になります。

 治療は解熱剤を適宜使用するだけです。解熱すれば元気になってきますので,食事が普通に摂れるようになれば,集団生活も許可しています。合併症で,まれに髄膜炎を引き起こすことがあります。発熱,頭痛,嘔吐などの症状がある時は,注意が必要です。

 同じウイルスで起こる手足口病も増えてきました。手足口病の場合は,コクサッキーウイルスA群とB群に加え,エンテロウイルス71型などが原因ウイルスになります。5歳以下が80%を占め,口の中と手足に発疹が出ます。発熱はないことの方が多く,あっても軽度の発熱です。感染経路や治療もヘルパンギーナと同じですが,エンテロウイルス71型の場合は髄膜炎や脳炎などの中枢神経疾患を合併する割合が高いことが知られていますので,このウイルスが流行した時には注意が必要です。

新型コロナウイルスはどうなる?

 新型コロナウイルス感染症が2類から5類に引き下げられ,季節性インフルエンザと同格になりました。コロナウイルスは,元々は冬に流行する子どもの風邪の主要原因ウイルスです。ほとんどの人が6歳までにこのウイルスに感染して,風邪を繰り返しながら,免疫ができるようになります。ところが,このウイルスは人間以外の動物にも感染します。

 コウモリのコロナウイルスがヒトに感染して重症肺炎を引き起こすようになったのが,重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV)で,2002年に中国広東省で発生し,2002年11月から2003年7月の間に30を超える国や地域に拡大しました。SARS患者は8,069人で,うち775人が重症の肺炎で死亡しました(致命率9.6%)。

 次に中東呼吸器症候群(MERS-CoV)が発生しました。ラクダに風邪症状を引き起こすコロナウイルスで,ヒトに感染すると重症肺炎を引き起こします。2012年にサウジアラビアで発見され,これまでに27カ国で2,494人の感染者が報告され,その内858人が死亡しました(致命率34.4%)。

 今流行しているのは,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)で,日本では病気の名前は新型コロナウイルス感染症,病原体の名称は新型コロナウイルスと呼ばれています。SARS-CoV-2は2019年に中国武漢市で発見され、瞬く間に全世界に感染拡大しました。最初は肺炎を起こし,死亡率も高い怖い病気でしたが,次第にウイルス自体が変異を繰り返し,オミクロン株ではインフルエンザと同じくらいまで軽症化しました。軽症化とともに感染力は強くなり,日本では約半数の人が感染したと考えられています。軽症化したとはいえ,高齢者にとってはまだまだ怖い病気です。私の母も92歳ですが,ワクチンを5回くらい受けています。私も3回までは受けました。そのおかげか,コロナに感染した時は,高熱2日間,微熱2日間で軽快しました。ワクチンがこれからどのような扱いになるのか,想像もできませんが,日本でコロナによる死者数が少なくてすんだのは,ワクチンの恩恵があったと思っています。