サンタ通信No296(03)表 R6.03.18発行

感染症の流行がひと段落

 自宅の庭にラッパスイセンやムスカリが咲いて,春の花壇になってきました。シンビジウムも黄色の花が咲き出しました。春の気候になるとともに,インフルエンザやコロナの感染症も少なくなってきました。これからの季節はどんどん暖かくなってきますので,それに伴い,感染症は少なくなるのではと思われます。ただ,入学,就職,転勤など,この時期は人の移動が多くなり,送別会や歓迎会などの宴会も多くなりますので,一時的に感染症が増えることがあります。4月頃までは注意が必要でしょう。

 さて,最近1週間(2月26日~3月3日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,インフルエンザで週15人でした。その他は,溶連菌感染症7人,アデノウイルス感染症6人,新型コロナ感染症4人,感染性胃腸炎1人,RSウイルス感染症1人,手足口病1人,突発性発疹1人,ヘルパンギーナ1人でした。インフルエンザの最盛期が終わり,終盤にさしかかっているのではと思われます。インフルエンザはA型がほとんどだったのに今はB型に置き換わっています。通常ならばB型は流行の終盤に出てきますので,今が流行の終盤だと判断しています。

 溶連菌感染症も流行しています。感染力が強いので,以前に大流行した時は当院で週に80人を超えた時もありました。学校や幼稚園で流行すれば集団感染が起きますし,家庭内だと家族全員が感染することもよくあります。マスク生活でしばらく溶連菌の流行が抑えられていたため,反動で一気に流行するパターンだと思います。このような流行が起きると,検査キットが足りなくなります。検査キットもいろいろなメーカーが販売しているのですが,大流行がいつ起こるのか分からないので,とりあえず需要がある分しか作りません。売れなければ在庫を抱えてしまいます。民間の業者にお願いする場合は,大流行した時に備える予備の在庫に対する補助が必要だと思います。日本の場合は,色々な感染症が予想以上に流行した時に,迅速検査キットが不足して,診断に困ることが多いです。検査キットがない時代は,症状と周囲の感染状況から,たぶんこの感染症でしょうと類推して治療していました。検査キットの出現で,これまでの類推による診断は正確でなかったことを思い知らされました。検査キットのない時代には戻れなくなっています。

 

3月24日は当番医で,救急患者優先です。

4月7日と14日,20日は休診です。

5月1日午後〜9日,12日,30日は休診,26日は当番医です

サンタ通信No296(03)裏 R6.03.18発行

ワクチンの接種方法

 子どもの予防接種はほとんどが皮下注射です。日本以外の国では多くのワクチンが筋肉内注射になっています。それは,接種部位の副反応が少なく,効果も高いためです。日本でそれができなかったのは,過去に解熱剤や抗生剤,ビタミン剤などの筋肉内注射を多用して,大腿四頭筋拘縮症という日常生活に大きな支障となる薬害があったためです。それ以降,ワクチンも筋肉内注射は許可されませんでした。コロナワクチンがアメリカで作られ,それを輸入する形になった日本はそのまま筋肉内注射での接種をすることにしました。今回,新しい5種混合ワクチンは筋肉内注射でも皮下注射でもどちらでも良いことになりました。できれば,当院も筋肉内注射を選びたいのですが,従来の4種混合ワクチンもまだ接種が続きます。この4種混合は皮下注射のみで,筋肉内注射は認められていない製剤のため,間違って4種を筋肉内にすると,接種ミスになってします。したがって4種と5種が入れ混じる1年間は,どちらも適応のある皮下注射を選び,ミスを避けるようにしたいと思います。もちろん新しい5種を筋肉内注射で接種したいという患者さんに対しては,注意しながら筋肉内注射をすることはできます。

 5種混合以外でも新しい肺炎球菌ワクチンも皮下注射と筋肉内注射を選択できるようになりましたので,筋肉内注射の希望がありましたらスタッフまでお伝えください。1歳までの赤ちゃんの筋肉内注射は大腿部外側だけが接種部位として推奨されています。

先輩のひと言

 私が小児科医になって一番忙しかったのは,医師になって3年目の県立大島病院時代です。今から40年ほど前のことになります。まだ独り立ちできない小児科医の私と2年先輩の2人体制で県立大島病院の小児科を守っていました。私が奄美大島に行った時に,ちょうど未熟児室が開設されて,まだ未熟児を治療したことがない私が担当しなければなりませんでした。未熟児以外にも一般の小児科病棟が10床以上あり,一人で病棟全部を24時間担当します。その頃は分娩数も多く,年間1,000例くらいありましたので,未熟児もたくさん生まれました。700g,800gの超未熟児が生まれる時は,あっという間に生まれてきます。自宅で夕食を摂っていたら,妊娠24週の患者さんが破水しましたと産科から電話連絡をもらい,5分で病棟にかけつけると,もう手のひらにすっぽり乗るような770gの赤ちゃんを手渡されるほどです。すぐに気管内挿管し,人工呼吸器に繋ぎ,お臍から血管を確保し,輸液を開始します。赤ちゃんはとても小さいので,赤ちゃんが顔を少し傾けただけで気管に入れたチューブが外れるくらいです。最低1週間は自宅に帰ることなく,未熟児室の控え室に泊まり込みが必要でした。

 病棟は私が担当しましたが,小児科の先輩は外来担当でした。日勤帯の通常外来と時間外の急患を担当します。時間外の急患は全館当直が交代制で回ってきます。そのため,小児科でも脳出血や心筋梗塞などの患者を診察して,どの科の先生を呼ぶかを決めます。時間外は小児科の急患が多いのですが,当直の先生が自分で対処するのは難しいと判断すれば,小児科の医師が呼ばれます。そのため,先輩も日勤帯は通常業務で,時間外は常時待機しておく必要があります。つまり,先輩も24時間体制を取らなければなりません。夜中の3時に小児科の急患の電話があり,先輩に患者さんからの電話がつながり,39℃の発熱で診察してほしいとのことでした。先輩が「今何時だと思っているの?」と言いながらも,救急外来を受診させ,診察・治療をしたそうです。数日後の地元紙南海日日新聞の投書欄に時間外の対応が悪いと苦情の記事が出ました。離島医療に貢献したいと県立大島病院に就職という形で勤務していた先輩は,次第に意欲がなくなり,数年後には県外の病院に移ってしまいました。24時間拘束されて働くストレスは大変なものです。なぜそんな対応になってしまうのか,病院の勤務体制も同時に取材してほしかったです。