サンタ通信No286(05)表 R5.05.18発行

いろいろな感染症が流行中

 5月5日に久しぶりに坊津の海に潜りました。気温は23℃で,半袖で十分なのですが,水中は19℃と冷たく,水に濡れないドライスーツで潜ります。水深30mの場所に赤いチェック模様のクダゴンベがいたので,撮影に夢中になっていたら,ガイドの姿を見失って,普通なら周囲を探しながら一回りするのですが,深い場所で動き回ると空気の消費が進むため,あえて動かず,じっと周囲を見回すだけにしました。そしたら遠くで光の合図を見つけ,無事合流できました。何事も慌てないことが大切です。

 さて,最近1週間(5月8日〜5月14日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは感染性胃腸炎で週9人でした。次いで,溶連菌感染症6人,ヘルパンギーナ4人,新型コロナウイルス感染症2人,RSウイルス感染症1人,アデノウイルス感染症1人,突発性発疹症1人,インフルエンザA型1人でした。この時期は夏カゼの手足口病やヘルパンギーナが目立ってくるのが恒例でしたが,今年は溶連菌感染症やRSウイルス感染症,アデノウイルス感染症,インフルエンザなどの感染症が混在していて,熱が出た患者を診断する時に,疑う病気の範囲を広く考えなければなりません。コロナ下の生活では,感染予防を心がけたために,多くの感染症にかからずにすみました。インフルエンザや溶連菌感染症などは,毎年多くの人がかかっていました。これらの病気は一度かかると,免疫ができて,しばらくはかからずに済みます。また,周囲にその病気が流行していると,少しずつ免疫が刺激を受け,感染予防に十分な抗体を維持できるのです。しかし,3年間これらの病気に触れることがなかったため,私たちの免疫は徐々に低下してきて,インフルエンザや溶連菌に感染しやすくなっています。さらに,3歳以下の子ども達はその感染症に罹患することがなかったので,全く免疫がない状態です。今,コロナ前の生活に急速に戻ろうとしています。マスクなしの生活で,大勢で会食するようになれば,当然インフルエンザなどは例年規模の流行が起こります。それが3年分まとめて流行すると,医療機関はパンクしてしまいます。日本人は周囲を気にしながら生活しますので,周りの人がマスクをしていれば,なかなかマスクを外しません。マスクなしの生活に戻りましょうと国が声をかけても,スーパーの売り場ではマスクの人がほとんどです。おかげで感染症の流行が徐々に増えるくらいで済んでいます。徐々にコロナ前の生活に戻っていくという考え方で良いのではと思います。

5月25日(木)は学会のため休診となります。

7月12日,13日が休診となり,14日金曜日は診療致します。

7月17日(月)海の日は当番医を担当します。

サンタ通信No286(05)裏 R5.05.18発行

新型コロナ感染症の後遺症

 日本国内で新型コロナウイルスに感染した子どものうち,発症から1カ月以上経過しても続く後遺症がある割合は3.9%だったとの調査結果を日本小児科学会の研究チームが報告しました。症状は発熱や咳,嗅覚障害,倦怠感などが目立ち,入院したり,学校や保育園などを休んだりしたケースもありました。

 大人に比べるとコロナに罹患した時の症状では,子どもは軽く済むことが分かっています。従来株で大人の死亡例がどんどん報告される中,小児の死亡例は2021年2月まではゼロでした。デルタ株やオミクロン株が出現してきて,感染力が増したため,患者数が多くなるのに比例し,死亡する症例が時折報告されるようになってきました。また,後遺症についても,その割合は少ないですが,子どもも一定の割合で後遺症に悩んでいる実態が判明しました。研究に関わった聖マリアンナ医大の勝田友博先生は,「半年後までに良くなることが多いが,気になる症状があれば気軽にかかりつけ医に相談してほしい」と呼びかけています。この研究は,2020年2月から23年の4月11日までに,小児科学会のデータベースに小児科医らから任意で寄せられた,0~15歳を中心とした20歳未満の感染者4606人の情報を分析したものです。この中で明らかに他の疾患の影響と考えられるケースは除外されています。1カ月後も症状が残っていたのは181人で,30%に発熱や咳の症状が残っていて,18%に嗅覚障害,17%に倦怠感,15%に味覚障害がありました。他に腹痛や頭痛,下痢,嘔吐なども報告されています。

 これらのコロナ後遺症とみられているものの中には,コロナ禍での心理的・社会的ストレスが原因である例も混在している可能性があります。その子の心理状態について,周囲の人が寄り添いながら自信をつけさせ,楽しく生活させていくような,心身症のカウンセリングが役立つかもしれません。

溶連菌感染症について

 溶連菌感染症は子どもではよく診る病気です。原因となる細菌はA群溶血性連鎖球菌です。一般に溶連菌という言い方をします。この菌に感染した人が咳をしたり,会話をした時に,飛沫に含まれる菌で,周囲の人に感染させる飛沫感染を起こします。また,菌がついた手で口や鼻に触れることで感染する接触感染が起こることもあります。

 幼児から学童期の小児に多く発症し,家庭内や学校で集団発生が多いことが特徴です。流行の時期としては,冬と春〜初夏にピークがあります。今は新しいクラスになって,感染が広がる時期に当たります。

 溶連菌感染症の症状は,2~5日の潜伏期を経て,発熱,のどの痛み,嘔吐,全身倦怠感が出現します。溶連菌が産生する発赤毒素に対して免疫のない人は発熱の後に,全身症状として身体や手足に紅い皮疹が現れ,皮疹がおさまった後に指先の皮がむけることがあります。合併症として急性糸球体腎炎やリウマチ熱を引き起こすことがあり,合併症を防ぐためにも,早期の診断,治療を受けることが大事です。溶連菌の迅速診断キットを使えば,数分で診断することができます。綿棒でのどの奥をぬぐう検査になります。

 治療は,抗生剤を最低でも7日間服用しなければなりません。感染を繰り返す時には10日間,2週間服用することもあります。発熱や咽頭痛などの症状は,抗生剤を服用開始後すぐに消失するため,抗生剤の服用を止めてしまう人がいますが,しっかり除菌できないと,すぐに再発します。溶連菌感染症の登園再開の目安は抗菌薬の内服後24~48時間が経過して,症状が改善し,医師が感染のおそれがないと認めるまでとなります。家族全員が溶連菌に感染した例もよく経験します。家族の中で,溶連菌の患者が出た場合に,患者以外の家族にのどの痛みがある時は,溶連菌の検査をする必要があります。