サンタ通信No297(04)表 R6.04.18発行

サンタも満25歳になりました

 25年前の1999年4月1日,エイプリルフールの日にこのサンタこどもクリニックは開院しました。職員も小児科クリニックに勤務した人はいなくて,素人の寄せ集めで診療を始めました。開業初日は30人くらいの患者さんを診療するのにバタバタしながら,やっと仕事を終えて,戸締りをしていると,医療事務の中心スタッフがストレスで食事も摂れなくなったと開業初日に辞職されて,前途多難な幕開けになったことが今でも思い出されます。それでも少しずつ仕事をこなせるようになり,日曜診療をしているという口コミがあっという間に広がり,開業1年目はとても忙しい日々を送りました。当時は火曜日と金曜日午後だけがお休みで,朝8時半から夜8時まで診療し,日曜日も朝9時から夜6時まで診療しました。さらに夜の急患に対しては,電話で診療依頼があれば,夜中でも病院を開けて診療しました。それから25年間,日曜診療を続けてきました。医師会で決められた休日当番医にはたくさんの急患が来て,診療しきれない状態でしたので,その負担を軽くしたいと考えて,日曜診療を始めました。開業当初は,日曜日に通常の診療をしているため,当番医の割り当てを当院が休みになる祝日にしてもらっていましたが,特別扱いだという意見が出て,当院も日曜日に当たるようになりました。当番医に押し寄せる患者さんに加え,かかりつけの患者さんの受診もあるため,日曜日の負担は重くなりましたが,日曜日に急患のお子さんが困らないようにしたいと考え,今まで頑張ってきました。今年に入り,さすがに私も70歳になるので,日曜診療を月2回お休みさせていただくことにしました。

 さて,最近1週間(4月1日~4月7日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症で週9人でした。その他は,RSウイルス感染症2人,新型コロナ感染症2人,インフルエンザ2人,手足口病2人,感染性胃腸炎1人でした。インフルエンザは本当に少なくなりました。これから増えることはないと思われますので,今シーズンはそろそろ終わりそうです。新型コロナウイルス感染症も流行が落ち着いてきています。周囲に感染者がいないと,検査で陽性になる確率は低いと思われます。また,溶連菌感染症は年度初めの今の時期に多くなる傾向があります。溶連菌感染症を疑う所見は発熱と咽頭痛が主ですが,嘔吐を伴うことも多いです。溶連菌が疑わしい時にはなるべく迅速検査をするようにしています。

 

4月20日は休診です。

5月1日午後〜9日,12日,30日は休診,26日は当番医です。

6月2日,17日,30日は休診です。

 

サンタ通信No297(04)裏 R6.04.18発行

5種混合ワクチン始まる

 4月から初めて予防接種を受ける赤ちゃんに対しては,これまでの4種混合ワクチンに代わり,5種混合ワクチンが使われるようになりました。従来から使用されてきたジフテリア,百日咳,破傷風,ポリオの4種混合ワクチンに,新たにヒブワクチンを加えた5種混合ワクチンです。4種とヒブの2回注射していたのが1回で済みますので,お子さんの負担は少なくなります。副反応もこれまでのところ,重篤なものはみられていません。このワクチンは皮下注射と筋肉内注射の2通りの接種が可能です。従来の4種混合もあと数年は接種しなければなりませんし,4種混合は皮下接種に限定されていますので,混乱を避けるために,5種混合も皮下接種を基本として,患者さんからの希望があれば筋肉内接種をするように考えていました。実際に接種が始まると筋肉内接種を希望される人が多かったため,これからは5種混合の筋肉内接種,皮下接種は患者さんが自由に選択できるようにしたいと思います。13価から15価に新しくなった肺炎球菌ワクチンも,これまで皮下注射だけでしたが,筋肉内注射を選択できるようになりました。この肺炎球菌ワクチンもどちらの接種方法を選ぶかは,患者さんの自由選択にしたいと思います。従来の皮下注射が安心という方もいらっしゃいますし,筋肉内注射が接種部位の腫脹やしこりが少ないということで筋肉内注射を希望される方もいらっしゃいます。どうぞ遠慮されずに,接種方法の希望をお知らせください。

RSウイルスとヒトメタニューモウイルス

 RSウイルス感染症は乳幼児における肺炎の約50%,細気管支炎の50〜90%を占めると報告されていて,年長の小児でも気管支炎の10〜30%に関与していると報告されるように,カゼの原因ウイルスとしてはよくみられるウイルスです。生まれて最初の1年間で50〜70%以上の新生児・乳児が罹患し,3歳までにすべての小児が抗体を獲得します。このウイルスに感染すると,咳込みが強く,ゼイゼイするような呼吸になることも多いです。このウイルスが問題になるのは,新生児や乳児の罹患,未熟児の罹患の際に,呼吸状態が急激に悪化することがあるためです。無呼吸発作でそのまま死亡することもあるため,未熟児ではこのRSウイルスに対するモノクローナ ル抗体製剤を1か月ごとに注射し,感染予防しています。

 一方,ヒトメタニューモウイルスは子どもにカゼのような症状を起こし,ひどくなると気管支炎や肺炎を引き起こします。小児の呼吸器感染症の5~10%はこのヒトメタニューモウイルスと考えられています。ヒトメタニューモウイルスの初感染は1~10歳(平均年齢は22か月)で,RSウイルス(0~2歳)と比べてやや遅めです。

 どちらのウイルスも何回も感染しますが,年齢が高くなるにつれ,症状は軽くなります。検査は鼻ぬぐいの迅速検査で診断できますが,RSウイルスは1歳未満が保険適応で,ヒトメタニューモウイルスは6歳未満で肺炎が強く疑われる場合に保険適応になります。ですから園にRSウイルスやヒトメタニューモウイルスの人がいたからと,カゼ症状のある方全員に検査するようなものではありません。年齢や病状に応じて検査をする必要があります。集団生活する時にRSウイルスなのかヒトメタニューモウイルスなのかという情報は,感染を広げないために必要ですが,ありふれたカゼのウイルスであるため,あまり神経質にならず,重症化しやすい人を守るという立場で考えれば良いと思います。保育所における感染症対策ガイドラインでは,RSウイルス感染症を含めて,一般的な感染症対策として,それぞれの感染症の特性を考慮した上で,症状が回復して感染力が大幅に減少するまでの間,罹患児の登園を避けることを保護者に依頼する等の対応を行うことが重要で,検査の実施の必要性の有無は医師が判断するものであり,保育所や認定こども園は,一律に保護者及び医療機関に対し検査の実施を求めないようにとされています。