サンタ通信No285(04)表 R5.04.18発行

感染症が増えてきました

 日本小児科学会が品川で開催され,2日間お休みをいただいて現地参加してきました。Web参加もできたのですが,現地参加では日本各地の小児科医と顔を合わせることができます。私も金沢で小児科医をしている後輩に久しぶりに会場で会うことができました。昼食を摂りながら,世間話をして,一緒に講演を聞いて,以前の楽しい学会が戻ってきた感じがしました。また,東京滞在では外国人が多くて驚きました。私が泊まったインターコンチネンタルホテル東京は,外国のお客様が半分以上を占めていたように思います。その流れが全国に及んでくれば,旅行支援で国内の旅行業界がようやく盛り返してきたところに,さらに海外からのお客さんが増えてきて,昔のような賑やかさに戻るかもしれないですね。

 さて,最近1週間(4月10日〜4月16日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのはRSウイルス感染症で週9人でした。次いで,インフルエンザA型7人,感染性胃腸炎2人,溶連菌感染症2人,新型コロナウイルス感染症2人,水痘1人,ヘルパンギーナ1人でした。この週は小児科学会のための休診日があったにも関わらず,この患者数ですので,感染症が多くなったと感じます。インフルエンザは例年ではこの時期は患者数が少なくなるはずですが,これまで3年間流行がなかったせいで,多くの人でインフルエンザに対する免疫が落ちていることと,昨年冬に受けたインフルエンザワクチンの効果が約6か月でなくなることを考えると,もう少しインフルエンザの流行が続くかもしれません。コロナを警戒してほとんどの人がマスクをつけ,会食など避けていた頃にはインフルエンザは全く流行しなかったので,周囲にインフルエンザの流行がある間は,人混みなど感染機会が高い状況ではマスクをするメリットがありそうです。

 RSウイルス感染症も多い状態が続いています。家族にカゼの症状があり,新生児や乳児に咳がみられる場合は,RSウイルスの検査をするようにしています。小さな赤ちゃんでは呼吸状態が悪くなり,入院が必要になる確率が高いからです。小児科の入院設備をもつ病院はどこも感染症患者でいっぱいのようです。マスクなしの生活に戻りたい気持ちは分かりますが,いっぺんにコロナ前の社会に戻るのではなく,少しずつ戻らないと,小児医療は限界を超えてしまうかもしれません。

 

 ゴールデンウィークは4月28日〜5月5日が休みになります。

 5月3日は当番医を担当します。

 5月25日(木)は学会のため休診となります。

サンタ通信No285(04)裏 R5.04.18発行

子宮頸がんワクチンについて

 厚生労働省のホームページには,次のような文章が掲載されています。子宮頸がんは,毎年約2,800人が亡くなるたいへん重大な病気です。主ながんは中高年以上で増加しますが,子宮頸がんは20代前半の発症者もおり,30~40代までの若い患者が増加しています。子育て世代に多いことから,マザーキラーともいわれます。子宮頸がんは,若いうちから定期的に検診を受けることで,前がん病変やごく早期のがんを発見することが可能です。言い換えれば,子宮頸がんは検診以外では発見が難しく,自覚症状が現れた時には,がんが進行しています。

 子宮頸がんを起こすパピローマウイルスの遺伝子型は150種類以上あります。16,18,31,33,45,52,58型などががんを起こしやすいとされています。ワクチンの2価や4価,9価というのは,そのうちのいくつの型を対象にワクチンを作ったかを示しています。そのため,有効率は9価が一番高くなります。2価と4価の有効率は約70%,9価では約90%の子宮頸がんを予防できます。どのワクチンも,効果は20年くらい続くとされています。日本より7~8年前からワクチン接種をはじめた欧米やオーストラリアでは,ワクチンの有効性が報告されています。イギリスやスウェーデンの大規模調査でも,子宮頸がんワクチンの接種によって子宮頸がんが大幅に減少すると報告されました。

 今年4月からこれまでの2価,4価ワクチンに加え,9価ワクチンが定期予防接種に追加されました。9価ワクチンの接種方法は1回目の接種を15歳以上で受ける場合には3回接種が必要で,標準的な接種間隔としては,初回接種から2か月後に2回目,初回接種から6か月後に3回目。上記方法をとることができない場合は,初回接種から1か月以上の間隔をおいて2回目,

2回目の接種から3か月以上の間隔をおいて3回目というスケジュールになります。1回目の接種を15歳未満で受ける場合には2回接種ですみます。標準的な接種間隔は,初回接種から6か月の間隔をおいて2回目を接種します。上記方法をとることができない場合には初回接種から5か月以上の間隔をおいて2回目を接種します。ただし,5か月未満の間隔で2回目を接種した場合、2回目の接種から3か月以上の間隔をおいて3回目を接種することになっています。

 以前のサンタ通信に,これまでに2価や4価のワクチンを受けた人で,接種が残っている場合は,同じワクチンを受けるように書きましたが,厚生労働省の考えは,以下の通りです。

 2価や4価のワクチンを1回または2回接種している場合は,原則として同じ種類のワクチンを接種することをお勧めしますが,医師と相談のうえ,途中から9価ワクチンに変更し,残りの接種を完了させることができます。この場合も定期接種の対象となります。また,キャッチアップ接種の対象の方も,途中から9価に変更し,残りの接種を完了させることができます。なお,2価,4価ワクチンで接種を開始し,定期接種として9価ワクチンで接種を完了させる場合は,9価ワクチンの接種方法にあわせて,1回目と2回目の間隔を1か月以上,2回目と3回目の間隔を3か月以上あけて接種します。ただし,異なる種類のワクチンを接種した場合の効果と安全性についてのデータは限られています。WHOも途中でワクチンの種類を変更することは勧めていません。無理して途中から9価に替える必要はないという立場です。ワクチンの種類にこだわるよりも,子宮頸がんの検診が大切だと発表しています。

 鹿児島市では,子宮頸がんワクチンの積極的な接種勧奨の差し控えにより,定期接種の機会を逸し,定期接種の対象年齢(小学6年生から高校1年生相当)を過ぎて,自費で接種を受けた方に対して,接種費用の助成(償還払い)を行っています。令和4年4月1日時点で鹿児島市に住所を有する方で平成9年4月2日から平成17年4月1日生まれの女子が対象になっています。詳しくは鹿児島市のホームページをご覧ください。