サンタ通信No280(11)表 R4.11.18発行

新型コロナ第8波が始まりそう

 新型コロナウイルスの流行が少し落ち着いたと思ったのもつかの間,国が全国旅行支援を始めて,旅行を自粛していた人々が,我先に旅行に出かけ,観光地や宿が賑やかになっています。人の移動が多くなると感染症は増えます。特に国際的な人の移動が盛んになれば,感染症は一段と多くなります。これから年末年始を迎え,確実にコロナは第8波が出てくるでしょう。これまでに日本では2,300万人が感染しています。およそ5人に1人がかかっていることになります。現在世界で一番新規患者数が多いのは日本です。ほとんどの人がマスクを手放さないし,ソーシャルディスタンスもよく守っていると思われる日本人なのに,なぜ感染が多いのでしょうか。一つは,日本ではこれまで感染予防対策をしっかりしてきたので,未感染者が多く,感染力が強いオミクロン株に代わったため,その未感染者が次々に感染していることが考えられます。もう一つは,日本以外の国が感染者数を正確に把握していないからです。海外では大変な病気という取り扱いはしなくなっているため,検査数自体が少なくなっています。検査しないと正確な感染者数は出ません。日本は皆保険制度があるので,多くの人が発熱時に病院を受診して,コロナの診断を受け,解熱剤などの処方を受けます。そのため,報告された患者数が流行の規模を反映しています。欧米では軽くすむような発熱の病気の場合は,病院に行きません。安静にしながら,必要に応じて解熱剤を服用します。熱が続くとか,咳込みがひどくなるとか,重くなってから病院を受診するのです。コロナ対策で大事なのは,重症化しやすい高齢者や基礎疾患のある人たちを,コロナからどう守るかです。日本ではコロナに関連した死亡数が低く抑えられています。日本の感染対策は正しかったということでしょう。

 さて,最近1週間(11月7日〜11月13日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのはヘルパンギーナ4人でした。次いで,RSウイルス感染症2人,手足口病1人,感染性胃腸炎1人,水痘1人でした。手足口病やヘルパンギーナといった夏カゼのウイルス感染症が少し流行しています。RSウイルスとヒトメタニューモウイルスの感染症も多くはないですが,流行が続いています。コロナ前と比べると,感染症はまだ流行が少ないですが,コロナ感染対策が少しずつ緩やかになってきているため,小児の感染症も少しずつ増えてきている印象があります。今年は忙しい冬になりそうな予感がします。

 

11月22日(火)は診療します。11月23日(水)〜25日(金)は休診です。

年末年始は12月27日〜1月3日です。1月2日は当番医を担当します。

 

サンタ通信No280(11)裏 R4.11.18発行

赤ちゃんを泣き止ませる方法

 赤ちゃんが泣いてぐずり,なかなか寝てくれない時があります。抱っこしながら,うとうとし始めた時に,ベットにそっと寝かせるとまた泣き始めてしまい,自分が忙しい時に困ってしまうことがよくあります。赤ちゃんがどういう時に泣き止むのか,どうすればうまく寝かしつけられるのかを理化学研究所が実験しました。国内外の生後7カ月以下の赤ちゃん21人とその母親を対象に,赤ちゃんを「抱っこして歩く」「抱っこして座る」「ベッドに置く」「ベビーカーに乗せて前後に動かす」という4つの行為をした時に,その時の赤ちゃんの状態と心電図を記録します。これらの行為を30秒間行い,赤ちゃんの状態を声や眼の開閉から解析します。すると,激しく泣いていた赤ちゃんは,抱っこして歩いた時とベビーカーに乗せて前後に動かした時に有意に泣き止みましたが,座ったままの抱っこでは泣き止まないことが分かりました。また,おとなしくしている,少しだけぐずっている赤ちゃんは,抱っこして歩く,ベビーカーを動かすなど,動いている時は変化がありませんでしたが,座ったままの抱っこやベッドに置くなど動いていない時は,むしろ泣き出してしまう傾向が見られました。このことから,赤ちゃんの泣き止みには輸送反応(哺乳類の赤ちゃんに生まれつき備わっている,運ばれる時におとなしくなる反応。運ばれる時に赤ちゃんは,泣きの量が減り,鎮静化し,副交感神経優位状態となる。四足歩行動物ではコンパクトな姿勢になることも多い。親が子を運ぶときに安全にスムーズに運べるよう,親に協力する反応だと考えられている)が効果的であることが分かりました。

 そこで,赤ちゃんが泣いている時に,母親が抱っこして5分間連続で歩いたら,泣き止むだけでなく,約半数の赤ちゃんが寝つくことが分かりました。また,親の腕の中で眠った赤ちゃんをベッドに置く時,赤ちゃんが目覚めやすいのは親から体が離れるタイミングであり,ベッドに置いた後一部の赤ちゃんは起きてしまいますが,眠り始めから5~8分間待ってからベッドに置くことで,赤ちゃんが起きにくくなることが分かりました。「抱っこ歩き」は赤ちゃんがぐらぐらしないよう,赤ちゃんの体と頭を親の体につけて支えるようにします。歩き始めたら急に向きを変えたり不必要に立ち止まったりせず,一定のペースで淡々と5分間ほど歩くことが,赤ちゃんの心拍を落ち着かせ,泣き止ませる上で効果的でした。

 もし5~10分間歩いても赤ちゃんが全く泣き止まないようなら,赤ちゃんの様子にいつもと違ったところはないか,観察してみることが必要です。例えば,中耳炎などで具合が悪くて泣いている場合には,輸送では泣き止まないと考えられるからです。一方で,赤ちゃんの泣きには個人差が大きいことも分かっていて,医学的な問題がなければ、泣きの量自体はその後の発達には影響がないとされています。また,今回調べた5分間の輸送は,今泣いている赤ちゃんを泣き止ませるのに即時的な効果がありますが,赤ちゃんが寝つきやすいように生活リズムや環境を整えるなど,普段の育児の方法を代替するものではありません。今回の方法はむしろ,毎日の寝かしつけというよりも,旅行や親の不在など普段と異なる状況において,赤ちゃんが眠いのに寝つけなくて,ぐずっているような場合に役立つのではないかという内容の報告でした。

 産後に赤ちゃんが泣き止まずにイライラするとか,どうしていいか分からずオロオロするという母親は多いです。それが心理的なストレスになって,赤ちゃんを叩くなどの虐待につながることもあります。この実験のように,赤ちゃんが泣き止んで,スムーズに眠ってくれる方法があれば,母親の負担も少しは減るのではと思います。この実験の対象は母親だけですが,今後は母親以外に父親や祖父母,ベビーシッターなど,母親以外の人でも効果があるのかを実験したいと書かれてありました。育児は大変な仕事です。家族全員が力を合わせて助け合う必要があります。赤ちゃんの笑顔は育児の大変さを癒してくれます。