サンタ通信No279(10)表 R4.10.18発行

RSとヒトメタニューモウイルス感染症に注意

 夏の暑さと秋の爽やかさが交互に訪れる季節になりました。幸いにも新型コロナの第7波が収束してきています。感染力の強いオミクロン株は,ワクチンを3〜4回受けていても,マスクをしていても感染します。私の場合は,突然38℃台の熱が出て,4日で完全に解熱し,咳もほとんどなく,軽くすみました。これはワクチンを3回受けたおかげだと思っています。でも今,世界中で一番患者数が多いのは日本だということは不思議ですよね。欧米ではマスクなしで,コロナ以前の生活に戻っているのに患者数は増えていません。日本では,人と接触したり,屋内にいる時はマスクが必須の状態なのに,患者発生が世界一になっています。その理由は,海外ではすでにほとんどの人がコロナに感染していて,すでに免疫をもっているため,流行が抑えられているのだと考えられます。日本は感染予防を一生懸命続けたので,感染した人の割合がまだ少なく,反対に未感染の人が第8波で次々に感染したため,流行が世界一の状態になったのだと思います。世界の流行から遅れてピークを迎えたわけですが,今流行が収まった欧米では,それまでに大きな流行があり,亡くなった人も大勢いた時期があったのです。日本は死亡数を抑えるために,マスクや行動制限で流行を小さくし,その間にワクチンで免疫をつけてもらい,重症化を抑える方法をとったわけです。中国はゼロコロナという極端な感染予防策をとっているので,未感染の人がほとんどです。生活を犠牲にしても感染予防を続けていますが,日本と同じように,今後患者数が増えてくるのでは思われます。

 さて,最近1週間(10月10日〜10月16日)の感染症情報です。1週間でRSウイルス感染症1人,手足口病1人,感染性胃腸炎1人でした。RSウイルスとヒトメタニューモウイルスの感染症は流行が持続していますが,今,ヒトメタニューモウイルスの検査キットが現在全く手に入らないため,診断できない状況です。元々それほど大流行したことはなく,検査キットも必要最低限で流通していたようで,今回の流行であっという間に検査キットがなくなりました。今は,周囲にヒトメタニューモウイルスの感染があって,発熱や咳嗽が続く時は,検査なしで診断しているような状態です。今はコロナの検査キットを作ればどんどん売れる状態なので,いつもはあまり流通しないヒトメタニューモウイルスの検査キットは後回しになっているのかもしれません。

 

11月22日(火)は診療します。11月23日(水)〜25日(金)は休診です。

年末年始は12月27日〜1月3日です。1月2日は当番医を担当します。

サンタ通信No279(10)裏 R4.10.18発行

インフルエンザワクチンとコロナワクチン

 今年は南半球のオーストラリアとニュージーランドでインフルエンザがコロナ以前の規模で流行したため,今年は日本でもインフルエンザとコロナの同時流行がおこるのではと,政府は対策を懸命に行っています。インフルエンザの時でも,コロナの時でも,発熱した時にまず受診するのが発熱外来です。当院もようやく発熱外来でコロナやインフルエンザの検査を開始しました。もし冬場に同時流行したら,発熱外来に患者が殺到して,医療逼迫が起こりそうだと国は心配しています。そのため,コロナで重症化のリスクが低い若い人は,コロナの検査キットで自己検査して陽性ならば,医療機関を受診せずに,健康フォローアップセンターに登録して,自宅療養することを勧めています。小児は重症化することは少なく,数日の発熱で終わることが多いのですが,鼻腔からの検査は鼻粘膜を傷つけることがあり,全身状態の評価も難しいので,発熱外来を受診することを勧めています。もしコロナ陽性が出たら,対症療法の薬を処方し,自宅で経過をみることになります。

 この同時流行を抑えるために,ワクチンで免疫をつけておくことができます。特にインフルエンザはここ数年流行がなかったため,免疫力が落ちていることが考えられます。もちろん,インフルエンザにかかったことがない幼児は抗体がないので,ワクチンで少しでも免疫をつけておいた方が良いでしょう。コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同じ時期に受ける予定の人も多いと思います。この2つのワクチンは同時接種が可能になりました。違う日に接種する場合でも接種間隔の制限はなくなりましたので,いつでも接種を受けられます。ただ,インフルエンザ以外のワクチンでは同時接種の安全性がまだ確認できていないため,コロナワクチンと2週間以上の間隔を空けて接種してください。

ヒトメタニューモウイルス感染症

 ヒトメタニューモウイルスというのは,まだ聞きなれないウイルスです。発見されたのが20年前で,迅速検査ができるようになってまだ10年も経ちません。呼吸器疾患の原因ウイルスで,咳や発熱が主な症状です。1〜3歳の呼吸器疾患の1割くらいがこのヒトメタニューモウイルスによるものとされています。この感染症にかかると,発熱,咳がみられ,1週間程度で症状は治まってきます。しかし,1回の感染で免疫は獲得できません。感染を繰り返しながら,年齢が上がるにつれて徐々に免疫がつきます。繰り返すたびに,症状は軽くなってきます。初回の感染でゼイゼイするような呼吸困難がみられたり,発熱で水分補給ができない時は入院が必要になりますが,多くの場合は咳止めや解熱剤を外来で処方して,様子をみることができます。

 RSウイルスも同じような症状を起こすウイルスで,年齢を問わず,生涯にわたり感染を繰り返します。生後1歳までに半数以上が,2歳までにほぼ100%の子どもがRSウイルスに感染します。このウイルスは未熟児の突然死の原因になっていました。呼吸機能が未熟なため,このウイルスに感染すると,無呼吸発作を起こし,突然死に至ることが分かりましたので,現在では未熟児に対して,遺伝子組換え技術を用いたモノクローナル抗体製剤の注射をして,抵抗力をつける治療をしています。未熟児だけでなく,3か月以内の乳児でも無呼吸発作を起こすことがあり,哺乳不良や呼吸が止まって顔色が悪くなる発作があれば,入院が必要です。

 この2つのウイルスは,インフルエンザと同じように,迅速検査ができますので,診断はすぐにできるのですが,大きな流行になると迅速検査キットが足りなくなります。新型インフルエンザが大流行した時に,インフルエンザの検査キットがなくなり,検査なしで診断しなければならない状況に陥りましたが,ヒトメタニューモウイルスでも,今年の流行が大きかったため,キットが不足し手に入らない状態が続いています。