サンタ通信No267(10)表 R3.10.18発行

新型コロナ感染症は一休み

 秋を迎えて,爽やかな日和が多くなりました。ちょうど,病院の外壁もきれいになったので,気持ちよく診療ができそうです。コロナ感染症も鹿児島は患者数が一桁の状態が続いていて,このまま落ち着きそうです。東京や大阪など都市部の患者数もかなり抑えられています。ワクチンを済ませた人が多くなったことと,どのような生活をすれば感染を抑えられるのかが判ってきたことが主な要因でしょうか。飲食店や旅行業界の経済的損失は想像を絶するものがありますが,感染の再流行に注意しつつ,少しずつ元の社会に戻っていくことができれば,苦境にある人々にも支援できるのではと思います。コロナの第6波がいつ来るのか,誰にもわからないですが,ワクチンを受けていれば,ほとんどの人が感染しても無症状か軽症ですみます。まれにワクチン2回接種受けたにもかかわらず,感染後に死亡する方がいらっしゃいますので,用心は必要ですが,これまでのような医療現場の混乱は避けられるのではないでしょうか。ワクチンの対象になっていない12歳未満の子ども達をコロナ感染症から守るためには,周囲の人がワクチンで免疫を持つ必要があります。ワクチンの効果は95%の発症予防効果です。これは2万人ずつを対象にして,ワクチンを受けたグループでは8人が発症し,偽のワクチン(生理食塩水)を受けたグループでは162人が発症したという報告から導き出されたものです。

 最近1週間(10月4日〜10月10日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,RSウイルス感染症7人でした。次いで,手足口病4人,ヘルパンギーナ2人,感染性胃腸炎1人,突発性発疹1人でした。先月に続き,RSウイルス感染症と手足口病の流行がみられます。どちらもマスクができない年齢の子どもに流行しています。学校などでしっかりマスク生活ができる小学生以上の年代では,感染症はほとんど流行していません。これらのウイルスは飛沫感染や接触感染で流行しますので,現在行っている感染対策を続ければ,マスクができる年齢層には大きな流行はないと考えられます。おそらく,インフルエンザもマスクをしていれば,例年のような流行はないだろうと予想しています。ただ,コロナ禍から社会が回復して,人の移動が以前のようになれば,マスクをしていても,多少は感染症が増えてきます。さらに,マスクを有効に装着できない低年齢では,感染症の患者数は増えます。インフルエンザの流行が昨年なかったため,免疫力のないお子さんの数が増えています。従って,大きな流行にはならなくても,小さなお子さ

んのいる家庭では,インフルエンザワクチンを積極的に受けた方が良いと思います。当院では,確保できたワクチンの数だけ,予約を取るようにしていますが,先日すでに確保ワクチンを上回りそうな予約数になったため,一旦予約を止めました。医薬品卸の人にお願いして,さらに上積みしてワクチンを確保できたため,予約を再開しましたが,その数は限定的です。早めの予約をお勧めしています。

 

11月23日(勤労感謝の日)は当番医です。

年末年始のお休みは12月28日〜1月4日までとなります。定期薬を服用の方は,薬が切れないようにご注意ください。

サンタ通信No267(10)裏 R3.10.18発行

頭部打撲について

 お子さんが転んで頭を打った時は,すぐに病院を受診しますね。脳外科を受診することもあれば,小児科を受診することもあります。当然,打撲時に強い力が働けば,頭の骨は骨折します。車にはねられたとか,自転車から落ちて頭を打ったなどは,脳外科の方が良いでしょう。家の中で転倒して頭を打ったくらいだと,小児科を受診することが多いと思います。ほとんどの患者さんが打撲のみで,経過観察になりますが,時々気になる症状を訴える患者さんがいます。お子さんの機嫌が良く,哺乳や食事がいつも通りにでき,元気に遊んでいる時は,そのまま数時間様子をみて構いません。気になるのは,ぼーっとしている,嘔吐が続く,会話の内容がおかしい,手足の動きに左右差があるなどの症状です。このような症状があれば,脳外科での診察が必要になります。

 頭部CT検査をすれば,頭の中の骨折や出血がはっきりしますが,子どもの場合は,薬で鎮静させて検査する必要があり,被曝の問題もあります。そのため,頭部CT検査は,国際基準で検査が推奨されるかどうか判断します。意識状態や嘔吐,激しい頭痛,強い衝撃での受傷かどうかなどが判断基準になります。当てはまらずにCT検査しない場合でも,帰宅した後に以下の症状が出た時は注意が必要です。けいれんする,普段と違う,ミルクの時間になっても起きない,顔色が悪い,手足の動きがおかしい,頭や首の痛みが悪化する,繰り返し吐くといった症状があればすぐに病院へ連絡する必要があります。1歳以上は受傷後24時間,1歳未満では48時間程度の経過観察が推奨されています。

コロナワクチン3回目の追加が必要か?

 日本ではコロナワクチン2回接種を終えた人が,全人口の65%に達しています。高齢者の9割が接種を終え,重症化する人の数が著しく減ってきました。しかし,海外の報告では,ほとんどの国民に2回接種できたにもかかわらず,デルタ株の感染により,流行を食い止められなかったとの報告が相次ぎ,3回目の追加接種が必要だろうと判断しています。実際に3回目の接種を始めたのはイスラエル,イギリス,フランス,ドイツ,シンガポール,アメリカなどです。それに追従するように,日本でも3回目の追加接種が必要という方向性が決まり,対象をどのように決めるか,接種の進め方をどうするか,具体的な検討に入っています。2回目の接種が終わって8か月以降に,早ければ今年12月から開始する方向で準備しているようです。

 本当に3回目が必要なのかは,実際に3回目のワクチンを終えた国での感染状況を見て,効果を検証するしかないのですが,アメリカは,65歳以上の人や,18歳以上で重症化リスクが高い人,それに感染リスクが高い職場で働く医療従事者などを3回目の接種の対象にしています。追加ワクチン接種のメリット,デメリットがもっと明確になれば,社会にとって何が一番良い方法なのか分かるのですが,とりあえずは,先行する海外の成績を見ながら,考えていくしかないと思います。

 さらに,3回目をするとしても,世界中はまだまだワクチンが手に入らずに,1回目もできていない国も多い状況で,限られた国だけ3回目をすることに対して,本当にそれで良いのかという疑問もあります。新型コロナウイルスが世界中に広がり,人々を恐怖に巻き込みましたが,このウイルスが,各国と全世界の関わりを考える機会を与えてくれている気がします。何が正しくて,何が間違っていたのかは,後世の人々が判断するのでしょうが,今を生きる私たちも後悔しない生き方をしたいものです。