サンタ通信No266(09)表 R3.09.18発行

RSウイルス感染症が流行中

 朝晩が涼しくなって,過ごしやすくなりました。窓を開けると,明け方は肌寒いほどです。「暑さ・寒さも彼岸まで」と言われますが,本当にそうですね。毎年秋の彼岸には,彼岸花が咲き,残暑が和らいで,ほっと一息つけます。今,当病院は外壁のお色直し中で,足場が組まれています。2階の花壇にも足場ができ,ちょうどそこに彼岸花の花芽が伸びてきていました。早く咲きそうな1本でしたが,茎が折れて地面に倒れてしまっています。驚いたことに,倒れた状態で赤い花を咲かせてくれました。植物の生命力はすごいです。

 最近1週間(9月6日〜9月12日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,RSウイルス感染症9人でした。次いで,手足口病8人,感染性胃腸炎1人,突発性発疹1人でした。昨年はコロナ禍で感染症があまり流行しなかったのですが,夏休みに多くの人が移動したようで,

RSウイルス感染症や手足口病の流行が,例年ほどではないものの,昨年よりは確実に多くなっています。RSウイルスとは,呼吸器で増殖するウイルスという意味で,乳幼児における肺炎の約50%,細気管支炎の50〜90%がこのウイルスによるものと報告されています。年齢を問わず,何度でも感染します。普通は発熱,咳,鼻水などのカゼ症状ですが,生後数週間から数か月の時に感染すると,非常に重症になることがあります。特に未熟児は重症化しやすいため,抗体注射で重症化予防をしています。以前は冬場に多い疾患でしたが,最近は夏から秋に流行することが多く,今が流行のピークになっています。鼻水を取って,迅速検査キットで診断できるため,赤ちゃんにカゼの症状があれば,なるべく検査をするようにしています。1歳を超える年齢になると,あまり重症化することがないため,保険適応が認められていません。当院では,ゼイゼイする呼吸が強い場合や,発熱期間が長い場合などでは,1歳過ぎても検査して確定診断するようにしています。初めてRSウイルスに感染した子どもは,大量のウイルスを排出するため,その保護者や医療スタッフが肺炎になることがあります。マスクや手指消毒を心がけましょう。免疫力が弱くなる高齢者も,このウイルスに感染すると重症化することがあり,注意が必要です。

 手足口病が目立つようになりました。昨年あまり流行しなかったせいで,手足口病に免疫を持たない子どもが多くなりました。これは大きな流行を引き起こす要因になります。人の移動が少なくて,マスクや消毒が徹底されていた去年と比べると,最近は感染予防対策が緩んできています。それが感染症の増加に繋がっていきます。小さいお子さんはマスクができません。その分,大人がしっかり感染対策をとると,子どもの感染症はかなり抑えられると思います。コロナ対策をしっかり続けていれば,家族内の感染症も予防ができます。マスクなしで,自由に旅行も行けた時の生活に戻るということは,インフルエンザなどの感染症が以前の水準に戻って,多くなるということにもなります。

 

11月23日(勤労感謝の日)は当番医です。

サンタ通信No266(09)裏 R3.09.18発行

インフルエンザワクチン予約開始

 例年10月からインフルエンザワクチンの接種が始まりますが,今年はコロナワクチンの製造に追われて,インフルエンザワクチンが例年に比べ,少なめになりそうだと言われています。このため,当院では,ワクチンが確保できた量に見合う予約枠で接種を始めることにしました。つまり,予約数を限定するため,それ以上の予約はお受けできません。今年は早めの予約をお勧めします。接種料金は去年と同じ1回3,000円(1回目,2回目ともに同じ料金)です。接種回数は生後6か月から13歳未満は2回接種が必要で,接種間隔は2〜4週間です。できるだけ4週間あける方が効果は高いとされています。13歳以上は原則1回接種です。この時期に,コロナワクチンを接種する予定の方は,それ以外のワクチンとの同時接種は認められていませんし,コロナワクチンとそれ以外のワクチン接種は,それぞれ2週間の間隔をとる必要がありますので,慌てないように早めに準備しておきましょう。

 昨年はコロナ禍にあって,インフルエンザが流行しては大変だということで,インフルエンザワクチンに対して,鹿児島県は小児を対象に補助金を出してくれましたので,ワクチンを受ける人が例年以上に多くなり,最後の方はワクチンが不足して,大混乱に陥りました。今年度はインフルエンザワクチンの接種希望者は,例年並みか,やや少ないのではと予想しています。去年のインフルエンザは,全く流行がありませんでした。人の移動がほとんどなく,マスク・アルコール消毒などのコロナ対策が功を奏し,インフルエンザまで押さえ込んだからです。今年もまだ,マスクは必須アイテムだと思いますが,コロナの流行が少なくなれば,年末年始の人の移動は多くなるでしょうし,飲食店に対する規制がなくなり,忘年会などができるようになれば,インフルエンザの流行を警戒しなければなりません。インフルエンザが流行するかどうかは,コロナの流行に大きく影響されるということです。

子どもにコロナワクチンは必要か?

 12歳以上の小児にコロナワクチンの接種が始まりました。接種した方が良いのかという問い合わせが当院にも寄せられます。日本小児科学会は,基礎疾患を有する小児では,コロナによる重症化が危惧されるため,それを防ぐためにワクチンは有効だとしています。しかし,高齢者と比べて思春期の子ども達,若年成人では接種部位の疼痛出現頻度は約90%と高く,接種後,特に2回目接種後に発熱,全身倦怠感,頭痛などの全身反応が起こる頻度も高いことが示されています。そのため,ワクチン接種を検討する際には本人および養育者に十分な接種前の説明と接種後の健康観察が必要であると提言しています。

 12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種の必要性については,小児のコロナ患者の多くは軽症ですが,まれながら重症化することがあり,同居する高齢者の方がいる場合には感染を広げる可能性もあります。そのため,ワクチン接種の意義は大きいものの,長所・短所をよく理解した上で,接種を考えなければなりません。

 接種の対象者については,日本でも,接種の対象年齢が広がる可能性があります。実際に,海外では生後6ヶ月~11歳を対象とした臨床試験もファイザーとモデルナのワクチンで開始されています。その結果は今年秋に発表される予定です。その結果をみて,日本でも12歳以下の子どもへの接種を進めるべきかを判断するものと思います。欧米はコロナワクチンについて,日本よりかなり先を行っていますので,日本は海外の知見を参考にしながら,ワクチン接種計画を進めることができます。デルタ株のような変異株出現で,コロナウイルスへの対処方法が大きく変わりました。あと1,2年はどのような経過をたどるのか,目が離せないですね。