サンタ通信No265(08)表 R3.08.18発行

新型コロナの感染拡大が止まらない

 新型コロナウイルス感染症は,デルタ株という感染力が強くなった変異株の影響で,ワクチン接種が進んでいるにもかかわらず,全国的に流行が拡大してきています。鹿児島県も8月17日の時点で1日で245人という信じられない新規感染者数になりました。これは,感染症を拡げる人の移動が多くなったことが一つの原因です。夏休みに首都圏から地方へ,里帰りや旅行のため,多くの人が移動しています。ステイホームを1年以上も余儀なくされていたため,我慢できずに沖縄や鹿児島などに夏休みを求めて若い人たちが押し寄せるのだと思います。人の移動が多くなると,コロナウイルスだけでなく,他のウイルス感染症も多くなります。去年は子どもの感染症が激減しましたが,今年は例年ほどではないものの,去年よりは明らかに多くなっています。高齢者のワクチンが終わり,コロナで亡くなる人は減っていますが,若い人もデルタ株で重症になることがあり,まだまだ注意が必要です。先ほど鹿児島県にもコロナまん延防止等重点措置が指定されました。今は動き回らずに,じっと我慢の時だと思います。

 最近1週間(8月2日〜8月8日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,RSウイルス感染症4人と溶連菌感染症4人でした。次いで,ヘルパンギーナ3人,感染性胃腸炎2人でした。RSウイルス感染症の流行がみられます。この病気は3歳までにほとんどのお子さんが罹患します。発熱や鼻水といったカゼのような症状で発症しますが,すぐに咳が目立つようになります。1歳未満の新生児・乳児が罹患するとゼーゼーするような呼吸になり,哺乳や睡眠ができなくなることがあります。そのような状態になったら,酸素投与が必要になるので,入院治療が必要になります。特に,3か月未満の赤ちゃんは,咳込みが強くなると呼吸を止めてしまい,顔色が悪くなることがあります。そのような症状が出ればすぐに入院が必要です。小さな赤ちゃんには,とても怖い病気です。未熟児で生まれた赤ちゃんは,無呼吸のまま突然死することもあります。私が市立病院に勤めていた頃は,周産期センターで生まれた赤ちゃんが退院後に,自宅で呼吸が止まったと救急車で運ばれてくることが多かったです。その原因がRSウイルスだと分かり,今では未熟児にこのウイルスに対する抗体注射をしながら,感染防御や重症化予防を行うようになり,突然死はほとんどなくなりました。この病気は何度もかかりますが,初回の感染が一番症状が重く,2回目以降は徐々に軽くなります。大人や年長児でも感染して,強い咳の症状がみられます。そのように咳が出る時は,赤ちゃんに接触しないことです。飛沫感染の病気ですから,赤ちゃんの近くで咳をしないことが重要です。

 溶連菌感染症もよくみられます。のどの痛みと発熱で発症し,抗生剤を服用すると,翌日には解熱します。薬を飲んで24時間経過すれば,人に感染させてしまう力もなくなります。すっかりよくなったと思い,抗生剤を止めてしまう方もいらっしゃいます。最低でも1週間は飲み続けないと,完全に除菌できていないため,すぐにぶり返すことになります。

サンタ通信No265(08)裏 R3.08.18発行

コロナまん延防止等重点措置へ

 鹿児島県でコロナ患者が245人/日と急増し,鹿児島県にまん延防止等重点措置の指定が決まりました。県や市の施設は休館が多くなり,不要不急の外出を避けることを求めています。昨年のお盆休みの帰省については,かなり少なく抑えられていましたが,さすがに今年は人の移動も多くなり,首都圏で急増しているコロナ感染が地方へ波及してきました。私が通っているスポーツジムも,県外の流行地に行った人や県外から来られてPCR検査をしていない人と接触のあった人は,2週間利用しないように制限がかかりました。しかし,これだけ市中感染が広がってしまえば,誰が感染者か分からない状態です。ランニングトラックでマスクをせずにずっとおしゃべりをしながら歩いている人や,浴室で大声でおしゃべりする人など,知り合いが多い場所ですから,ある程度の挨拶は仕方ないとしても,この時期は感染防御を考えながら,生活することが大事だと感じました。

 お盆の15日は当番医を担当しましたが,184人が来院され,朝8時半から夜10時まで,休憩なしで診察しました。さらに,県外の人や周りにコロナの人がいる場合には,防護服に着替えて車庫で診療しなければならず,終わった時は頭がクラクラするほどでした。来院されても3〜4時間待ちの状態でしたので,予約時間を改めて指定し,一旦帰宅してもらい,診療ができる時間に再度来院してもらいました。熱性けいれんや肘関節が外れたなど,緊急の病気の場合もありますので,予約時間からさらに待ち時間が延びてしまうことがあります。それでも当番医の診療を原則予約制にすると,患者さんも待ち時間が短縮されますし,2回来院せずにすみます。是非とも当番医の予約制を考えてほしいものです。また,当院の受付電話は2回線あり,それぞれスタッフが受けていますが,ずっと鳴り止むことがなく,電話が通じないため直接来院されて,駐車場から溢れて長蛇の列になっている車の数を見て,受診を諦めた方もいらっしゃるかと思います。当番医の数を増やすことが根本の解決策なのですが,他の小児科医の先生たちは,なかなか休みを削られたくないようです。開業医の働き方改革はまだまだ先のようです。

パラリンピック開催の意義

 オリンピックはテレビの前で懸命に応援したけど,パラリンピックはあまり興味がないという人がほとんどだと思います。テレビ放送もオリンピックの放送枠と比べると,はるかに少ないです。視聴率が高くないと,テレビ業界は放送をしません。商業ベースですから,ある程度は仕方ありません。NHKは頑張って放送枠を取っていますが,オリンピックと比べると見劣りがします。パラリンピックは障害者が様々な障害の中で,競技を通じて限界に挑戦します。その姿を目にしたり,応援しようとする姿勢が,多様性を認め,誰もが個性や能力を発揮できる共生社会をめざすのにとても役立ちます。バリアのない社会をめざしても,障害者の気持ちになることは,とても難しいです。これまで障害者は哀れみや同情という目で見られがちでした。スポーツ競技を通して,自分を磨き高めていく姿に同情は必要ありません。生きがいを見つけて,自分の人生を楽しんでいるのです。オリンピックで活躍するアスリートとなんら変わりません。多くの人がパラリンピックに関心を持って応援してくれたら,社会も少し変わっていくような気がします。

 私の趣味であるダイビングでも,ハンディキャップを持つ方と潜ることがあります。そのような時に気をつけることは,本人ができることには手を出さず,サポートを求めた時だけ手伝うように心がけています。もちろん水中ですから,何かトラブルがあれば命にかかわります。トラブルを未然に防ぐためには,相手の状態によく気を配る必要があります。自分が好きなように潜るのではなく,一緒に潜る人が安心して楽しめることがダイビングでは大切です。