サンタ通信No260(03)表 R3.03.18発行

すっかり春!

 今年の春は花がよく咲いています。庭に放置しているシンビジウムもちょうど花を咲かせてくれました。花芽が伸びているなと思っていたら,あっという間に花が咲き始め,切り花にして楽しんでいます。手入れをせずに,肥料もあげていないのに,毎年花を咲かせるなんて,とても強い花ですね。シクラメンも室内に置いて,枯れないように水だけを与えていますが,この季節には必ず花を咲かせてくれます。本当なら,もっと手をかけて育てるべきなのでしょうが,植物の強さにばかり頼っています。病院の花壇もかわいい花が咲き誇っています。コロナで不安な世の中ですが,自分の周りに花があると,心が豊かになって,ほっと一息つけます。

 さて,最近1週間(3月8日〜3月14日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,感染性胃腸炎と溶連菌感染症が1人ずつのみでした。感染症は本当に少ないですね。そのため,小児科の外来は,予防接種と健診で半分を占めているような状況です。感染症の流行が少ないことは,大変良いことですが,困った面もあります。通常なら,自分の周囲に流行しているインフルエンザやウイルス性のカゼなどに少しずつ触れながら,免疫力を高めているのですが,長くその病気に接触することがないと免疫力が低下します。その後,実際に感染したら,免疫が働かず,重い症状になりやすいのです。例えとして,麻疹(はしか)を考えてみましょう。私が子どもの頃には,麻疹ワクチンはありませんでした。麻疹は空気感染しますので,同じ空間にいるだけで感染し,マスクをしていても感染します。麻疹に罹患して終生免疫を獲得すれば,もう麻疹の患者と接触しても怖くはありません。しかし,麻疹は,1000人のうち数人が死亡するような,命にかかわるような重い病気です。そのため,かからないように予防接種をするようになりました。1978年から麻疹ワクチンが定期接種になり,最初は1回接種でした。1回の接種で95%の人に抗体ができ,ワクチン接種後に時々麻疹と接触することにより,抗体が刺激を受け,その抗体の力を維持できていました。ところが,皆がワクチンを受けるようになると,麻疹の流行が減り,それまで麻疹の人と接触することで抗体を高めていたことができなくなりました。麻疹ワクチンを受けたのに,麻疹に罹患してしまう人が多くなってきて,2006年頃から麻疹ワクチンは2回接種に変わりました。

 これをインフルエンザに置き換えてみると,1年間流行がないと,自分の持っている免疫を十分維持できなくて,感染した時に発症してしまう危険性が高まります。さらに1回もインフルエンザにかかっていない乳幼児の数が増えますので,マスクなしの生活になった時は,インフルエンザの大きな流行になる気がします。コロナ感染が収束して元の生活に戻っても,マスクなしの生活にいっぺんに戻らずに,公共の場ではしばらく続けるなどの対策が必要と思います。

 

4月25日(日)は当番医です。救急患者さんが優先になります。

サンタ通信No260(03)裏 R3.03.18発行

熱性けいれんについて

小さなお子さんがひきつけを起こしてしまうと,だれでも慌てて救急車を呼びたくなります。医療関係者であれば,けいれんへの対処方法を学んでいますので,慌てずにすみますが,けいれん発作の最中に呼吸が止まり,唇が紫色になってくると,さすがにけいれんが早く止まらないかなと焦り始めます。熱性けいれんは高熱に伴うけいれん発作で,日本では100人中7〜8人が経験します。1歳前後の年代に多く,大部分の熱性けいれんは5分以内に自然におさまります。なるべく刺激を与えないように,静かに横に寝かせて,おさまるまでの時間を計ってください。呼吸が止まって顔色が悪くなっても,待っていれば呼吸は再開して,顔色も正常に戻ってきますので,体を揺すったり,口を開けようと指を入れたりしないでください。

 まれに,けいれんの最中に嘔吐を伴うことがあります。この時には窒息に気をつけます。顔を横に向け,吐物が気管に入るのを防ぎます。5分経ってもけいれんが止まらない時には,救急車を呼びます。熱性けいれんがおさまったら,落ち着いてから病院受診しましょう。特に初回けいれんの場合は,重い病気のことがありますので,病院でしっかり診察をしてもらってください。夜間や休日などに起こした時は,5分以内のけいれんであれば,目が覚めた後に意識がしっかりしていたら,翌日の病院受診で大丈夫です。

 ダイアップというけいれん予防の座薬があります。これまでは2回以上熱性けいれんを起こしたら,発熱と同時にこの座薬を使用して,けいれん予防をしていましたが,最近はこの座薬の使い方が変わってきています。けいれんの持続時間が15分以上だった発作を経験している人と,以下の6つの項目を2つ以上満たした熱性けいれんを2回以上繰り返した人に推奨されるようになりました。①部分的なけいれん,または24時間以内に反復するけいれん ②以前からあった神経学的な異常や発達遅滞 ③家族に熱性けいれんやてんかんの人がいる ④12か月未満 ⑤発熱後1時間未満でのけいれん ⑥38℃未満でのけいれん の以上6項目です。つまり,けいれんが長く続いた人や,普通の熱性けいれんとは少し違う場合には,ダイアップ座薬を使って予防した方が良いということです。5分以内の短い熱性けいれんならば,何回起こしても上記の項目に当てはまらない人は,座薬による予防は必要がないということです。

学会に安心して行けるようになるのはいつ?

 4月16日〜18日に日本小児科学会が京都で開催されます。小児科専門医を維持するためには,学会を利用して最新の知識を学ぶ必要があります。県内にも年3回開催される鹿児島地方会があり,そこでも少し勉強はできるのですが,その会はいつも日曜に開催されますので,私は開業して以降,ほとんど参加できませんでした。そのため,全国規模の学術集会には毎年行くようにしていました。昨年はコロナの影響で,神戸での学会がWeb上での開催になりました。しかし,鹿児島にいながら,学会の教育講演を全部見ることができて,例年以上に勉強になりました。これまでの学会では,現地で教育講演を聴く場合は,どれか1つだけを選んで受講していましたが,Web上では,すべての教育講演をいつでも聴けるのです。

 今年は京都で現地参加とWeb参加のどちらでも選べることになりました。鹿児島に1年以上も閉じこもっていますので,できれば京都へ行って現地参加したいという想いはありますが,関西地区もまだ安心して行けるような状態ではないため,もし自分が感染してしまい,さらに患者さんへも感染させてしまうことを想像すると,とても怖くて,現地参加は諦めました。おそらく,開業している小児科医の大多数は,Web参加で勉強されるのではと思います。しかし,ワクチン接種が進み,コロナの感染が収まってくれば,来年は福島県で予定されていますので,是非とも現地を訪れて福島を実感したいです。