サンタ通信No256(11)表 R2.11.18発行

小児科の感染症は減少中

 季節は晩秋から初冬になりましたが,寒くなるとともに,新型コロナウイルス感染症が日本国中で増えてきました。旅行業界を助けるGo To キャンペーンなど,経済活動を後押ししているため,感染も増えてしまいます。最終的にはどちらを優先させた方が正しいのか,誰にも分かりませんが,どちらも大事なことに間違いはありません。冬場は換気がしにくくなること,帰省で多くの人が移動すること,忘年会,新年会など宴会が多くなること,初詣など3密が起こりやすくなることなどを考えると,来年春までは感染症を抑え込む方に軸足を移してもいいのではないでしょうか。アメリカやヨーロッパのように手がつけられなくなってから街をロックダウンするのでは失うものが大きすぎます。マスクや手洗いなどの感染予防策を徹底しながら,感染しやすい会食での対策が必要と思われます。おしゃべりしながら食事を楽しむことはこれまでの常識でしたが,食事中はなるべく口数を減らし,食後にマスクをしておしゃべりを楽しむようになってゆくのかなと思っています。そんな新しい生活様式が定着するには,まだまだ時間がかかりそうです。

 さて,最近1週間(11月9日〜11月15日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,RSウイルス感染症2人でした。次いで,手足口病1人でした。最近は本当に感染症が少なくなりました。新型コロナの影響で,感染予防を全国民が心がけているおかげで,感染症が流行しなくなり,小児科の外来は病気のお子さんより,ワクチンや健診を受けに来られた元気なお子さんが多くなっています。RSウイルス感染症の流行はまだ続いていますが,1歳以上の年齢ではRSウイルスの迅速検査は保険適応外で,しかも重症化することも少ないため,当院では経過が良くない症例に検査するようにしています。もちろん1歳未満の新生児や乳児に対しては,積極的に検査しています。

 新型コロナウイルスに対するワクチンは現在,開発中です。アメリカのファイザー社は有効率90%超と報告があり,同じくアメリカのモデルナ社は有効率94.5%と治験段階での報告がありました。ワクチンの効能としては素晴らしいものです。モデルナ社の治験は,3万人の半数に本物のワクチンを投与し,残りの半数には効果がない偽物を投与しました。この3万人のうち,新型コロナに感染した95人の内訳は,90人が偽物を受けており,本物のワクチンを使った人は5人だけだったとのことです。本物のワクチンを受けた人は,発症しても重い症状にはならなかったと報告されています。まだ治験段階ですので,もっと多くの人に接種して,有効率が同じようにあるのか,どんな副作用が出るのかを詳しく調べなければ,安心はできません。若い人はコロナに罹患しても無症状ですむ人も多いので,ワクチンを接種して副反応が強ければワクチンを受ける価値がなくなるからです。

 

12月6日(日)は当番医です。救急患者さんが優先になります。

12月29日〜1月3日は休診となります。

 

サンタ通信No256(11)裏 R2.11.18発行

インフルエンザワクチン予約終了

 鹿児島市はインフルエンザワクチンの予防接種を小学生までの子どもと妊婦に1回2,000円を補助していますが,他の自治体でも色々な補助を出して,接種を積極的に呼びかけています。新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行で,医療体制が破綻するのを防ぐためですが,そのために例年より多くの方が,接種を希望されています。当院でも予約数が多すぎて,確保できたワクチンでは足りなくなって,あちこちの医薬品卸会社にお願いして,ワクチンをかき集めました。しかし,どこにもワクチンは余っていないようで,11月初めには新たな予約を受けられない状態になりました。現在,すでに予約された方に1日40〜50人のインフルエンザワクチンを接種していますが,発熱や咳などの一般の外来患者さんが少ないので,外来の仕事量としてはそれほど忙しくはないです。

 今年のインフルエンザワクチンは,過去5年間で最大の6,650万人分を供給することになっていますが,補助金を使って接種を勧めるのであれば,もっと多くのワクチンを準備するべきだったのではと考えます。インフルエンザワクチンの保存期間は1年以上あるので,少し多めに製造して,余った分は半年後の南半球で使ってもらったり,1年後に大きな株の変更がなければ,自国でも格安ワクチンとして希望する人に接種したりする方法を考えれば,ワクチンの安定供給ができて,無駄が少なくなると私は考えているのですが,ワクチンメーカーとしては,在庫を抱えたくないようで,いつも必要最小限の製造を続けています。このため,出来上がったワクチンが国の検定に通らないという緊急事態が起これば,一挙にワクチン不足に陥ることもあります。どうすれば国民の健康を守れるのか,国は長期ビジョンを示しながら,ワクチン製造についても,検定を行うだけでなく,予防接種をどうしていくのかを具体的に説明してほしいものです。

新型コロナウイルスが強くなった?

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大が止まらず,今が第3波襲来と恐れられています。世界中で感染拡大しており,日本でも大都市だけでなく,地方にも感染が広がっています。元々,このコロナウイルスは冬に多い子供のカゼのウイルスです。子供達は寒くなると咳や鼻水が出て,かぜをひいた状態になりますが,これを起こすのがコロナウイルスです。カゼの1〜2割がコロナウイルスと言われ,ほとんどの子は6歳までに感染を経験します。時々高熱を伴う場合がありますが,それでも重症化することはありませんでした。ところが,このウイルスが変異して,重い病気を引き起こすようになりました。今回の新型コロナと言われる前に,SARS(サーズ)と呼ばれるコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群が2002年に中国広東省で発生し,この時は致死率10%で世界中には広がらずにすみました。2012年にはサウジアラビアでラクダから人へ感染して,MERS(マーズ)と呼ばれる中東呼吸器症候群を引き起こし,致死率34.4%と高かったのですが,後にサウジアラビアの人口0.15%がこのウイルスに対する抗体を持っていることが判り,何万人もの感染者がいる中での858人が死亡したことが証明されています。今回の新型コロナは中国武漢で発生し,中国は感染を抑え込むことに成功しましたが,世界中に広がってしまったウイルスはヨーロッパで大きな感染を引き起こし,今に至っています。

 東京大学のチームが,発生当初の中国のウイルスと,次にヨーロッパで感染拡大した時のウイルスを比較したら,変異により感染力が強くなっていると報告しています。体内での増殖力が高くなっていることも判りました。力が強くなったウイルスの影響で,イタリアやフランスなどでは医療崩壊が起こり,多くの死者が出てしまいました。日本は経済の方を優先しており,コロナに対しては国民のマスク・手洗いなどの励行で抑え込もうとしています。市中感染が広がってしまったら,対策が難しくなりそうですが,もうすぐできるワクチンに期待しているのでしょうか。それでもまだまだ不安は尽きませんね。