サンタ通信No252(07)表 R2.07.18発行

ヘルパンギーナが少し流行中

 例年,梅雨末期に降る大雨は,浸水や土砂崩れなどの水害を引き起こしてきました。今年は,球磨川流域を中心に多くの人の命が犠牲になってしまいました。住宅の1階部分が完全に水没してしまうほどの水害で,亡くなられた方も溺死が多かったとのことです。球磨川の治水対策については,50年も前から川辺川ダムの建設を国が進めていましたが,反対運動が強く,建設できませんでした。今は熊本県がダムに反対の立場をとっていて,ダムに頼らない治水を目指してきましたが,今回の水害をみると,この流域の治水はダムなしでは難しいと思われます。ダム工事が自然を破壊するものだという主張も理解できますが,毎年のように大雨で大勢の命が失われてしまうのが現実です。暮らしを守るための治水をどう進めるべきか,住民の意見も重要ですし,専門家の意見も参考にしながら,国と県,住民,皆が納得できるように,オープンな話し合いを続ける必要がありそうです。豪雨災害は災害の規模も大きいのですが,復旧にも莫大な予算が必要になります。税金をどう使うと効率的なのか,他人事だと思わずに,皆さんしっかり考えましょう。鹿児島県も新しい知事になったことですし,災害に対する備えを,行政と住民でよく話し合いたいものです。

 さて,最近1週間(7月6日〜7月12日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,ヘルパンギーナで週9人でした。次いで,溶連菌感染症2人,突発性発疹2人,手足口病1人でした。感染症は全般的に少ないですが,手足口病やヘルパンギーナなどの夏カゼがようやく診られるようになりました。手足口病はまだ少ないですが,ヘルパンギーナは毎日診ますので,のどが痛くて,発熱があれば,ヘルパンギーナの可能性が高いです。ただ,9人の患者さんはすべて3歳以下の小さなお子さんでした。そのため,小学生くらいの年齢で発熱する時には,ヘルパンギーナよりも溶連菌感染症や扁桃炎などが疑われます。

 ヘルパンギーナの原因ウイルスは,コクサッキーA群ウイルスが多く,まれにコクサッキーB群ウイルス,エコーウイルスでも起こります。好発年齢は乳幼児です。感染経路は,飛沫感染と汚染された手や飲食物を介した糞口感染の2通りがあります。感染後2〜4日で発症します。症状は38〜40℃の高熱と咽頭痛です。のどの奥に直径2〜4mmの小水疱や浅い小潰瘍がみられます。治療方法は特にありません。水分を十分に摂りながら,熱が高くてぐったりする時は解熱剤を使用します。合併症としてまれに髄膜炎を起こすことがあります。高熱とともに頭痛・嘔吐があれば注意が必要です。登校・登園は,解熱した後,食事が普通に摂れるようになれば,登園できます。しかし,解熱後にもウイルスは便に2週間くらいは排泄されますので,おむつを触ったり,便に触れた時は,しっかり手洗いをすることが大切です。

 

8月13日(木)〜15日(土)は休診となります。

9月13日(日)は当番医を担当します。救急患者さんが優先になります。

サンタ通信No252(07)裏 R2.07.18発行

子どものマスクは必要か?

  新型コロナウイルス感染症が蔓延している今,大人は皆,マスクを着用しています。もし,マスクをせずに,買い物に行こうものなら,周囲の人の視線が痛いほどです。子どもはうまくマスクを着用できないことや,呼吸が苦しくなりやすいため,無理にマスクをさせない方が良いと言われています。日本小児科学会は『乳幼児のマスク着用には危険があります。特に2歳未満の子どもでは気をつけましょう。』と提言しています。それは以下の理由からです。

 乳幼児は,自ら息苦しさや体調不良を訴えることが難しく,自分でマスクを外すことも困難で,また,正しくマスクを着用することが難しいため,感染の広がりを予防する効果はあまり期待できない。むしろ,次のようなマスクによる危険性が考えられる。

・呼吸が苦しくなり,窒息の危険がある。
・嘔吐した場合にも,窒息する可能性がある。
・熱がこもり,熱中症のリスクが高まる。
・顔色,呼吸の状態など体調異変の発見が遅れる。

特に,2歳未満の子どもではこのような危険性が高まります。子どもがマスクを着用する場合は,いかなる年齢であっても,保護者や周りの大人が注意することが必要です。感染の広がりの予防はマスク着用だけではありません。保護者とともに集団との3密(密閉、密集、密接)を避け,人との距離(ソーシャル・ディスタンス)を保つことも大切と発表しています。もちろん,小学生くらいになると,マスクをしっかり着用できるようになりますので,集団の中ではしていた方が良いです。登下校や野外での活動で,人と人の距離が離れている時には,マスクは必要ありません。

with コロナの生活

 新型コロナウイルス感染症のため,自粛生活が続き,最近ようやく普通の生活に戻りつつありますが,それとともに,東京では感染者が増えてきました。鹿児島でも,ショーパブのクラスターが発生し,100人以上の感染者を出したために,患者数が急増しました。そのせいで,医師会関係の会合などが軒並み中止となり,Webを介した講演会だけになっています。日本小児科学会や日本小児神経学会もWeb開催になり,自宅で視聴できることになりました。便利でいいのですが,開催都市を歩いたり,その土地の美味しいものを食べたりという楽しみがなくて,ちょっと寂しいです。私の場合は,非日常を感じられる旅行が仕事をする上でのエネルギーになっていましたので,どこにも行けない状況というのは,ストレスが溜まってしまいます。政府はGo To キャンペーンとして大規模な予算を使い,国内旅行を活性化しようとしています。私もそれに乗っかって,旅行に行きたい気持ちはありますが,今多くの人が旅行を楽しんでも本当に大丈夫でしょうか。確かに旅行業界は自粛が続いたため,青息吐息の状態になっていて,救いの手が必要ですが,今のコロナ感染が落ち着かないうちに,人々が大きく動き始めると,コロナの流行はきっと手がつけられないくらいまで増えてしまいます。インドやアメリカのように1日数万人の感染者が出てしまうと,それから再自粛しても遅いです。政府から,コロナの流行はある程度仕方なくて,大きな流行になることだけを防ぎながら,いつもの社会生活を目指すという方針が示されれば,国民は納得すると思いますが,数年先までのビジョンをなかなか示してくれません。