サンタ通信No246(01)表 R2.01.18発行

明けましておめでとうございます

 令和になって初めてのお正月,皆様どのように過ごされましたか?小児科の仕事をしていると,帰省するつもりが,子どもがインフルエンザにかかり,航空券をキャンセルするための診断書を依頼されたり,東京や大阪在住のお子さんが発熱で来院されたりと,年末年始に子連れで旅行する時のトラブルをよく経験します。ご家族で楽しいお正月が過ごせたらいいですね。今年の正月は天気に恵まれて,初詣や初商いに出かけた方も多かったのではないでしょうか。山形屋の初商いに 8,000人も行列ができたというニュースを聞くと,最近の景気はそれほど悪くないのかもしれません。私は元旦が当番医でしたので,朝8時半から夜8時まで休みなく働き,昼に1分間の食事・手洗いを済ませるというハードワークが今年最初の仕事でした。翌2日から7日まで6日間のお休みをいただき,フィリピンのセブ島で疲れた体と心を癒してきました。韓国の仁川空港経由で行ったのですが,日本・韓国間の乗客は日本人がほとんどいなくて,周りは韓国人ばかりでした。日韓関係の悪化で,韓国に向かう日本人が少なかったのだと思いますが,お正月にもかかわらず飛行機のチケットが取れましたので,私にとっては都合が良かったのですが,隣同士の国ですので,何とか仲良くしていきたいものです。

 さて,最近1週間(1月8日〜1月14日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,インフルエンザで週7人でした。次いで,感染性胃腸炎5人,水痘4人,溶連菌感染症3人でした。昨年末から急増していたインフルエンザが急減したのは,年末年始で集団生活が少なくなり,流行が一時的に減少したためだろうと思います。しかし,全国で猛威をふるっていて,大勢の帰省客などで流行が拡散されますので,まだまだ油断はできません。ほとんどの患者さんはA型ですが,たまにB型の患者さんがいらっしゃいますので,今後はB型の流行にも気をつけなければなりません。

 インフルエンザ以外の感染症は,感染性胃腸炎(ロタウイルス・ノロウイルスによる嘔吐下痢症)と水痘,溶連菌感染症が時々みられています。嘔吐下痢症はロタワクチンを皆さんが受けてくださるので,点滴をするケースが少なくなりました。ぐったりした赤ちゃんの点滴はとても難しく,時間がかかるので,冬場の小児科医の一番の悩み事でしたが,その苦労から解放された感じがします。ロタワクチンが始まるまでは,冬に待合室で点滴をしているお子さんが毎日数人はいたものです。今年の10月から定期接種になりますので,全員が受けるようになれば,さらにロタウイルスによる嘔吐下痢症は少なくなり,点滴をする機会はもっと減りそうです。

 溶連菌感染症も冬に多くなる病気です。細菌ですので,抗生剤内服で良くなるのですが,感染力が強い菌のため,家族内や集団生活で流行してしまいます。症状は発熱とのどの痛みです。周囲に溶連菌の流行があれば,できるだけ迅速検査をするようにしています。

 

 2月24日(月)振替休日は当番医を担当します。救急患者優先となります。

サンタ通信No246(01)裏 R2.01.18発行

ハンディキャップとの付き合い方

 今年のお正月にセブ島へ行きましたが,宿泊しているホテルでダイビングを楽しみました。ゲストは私以外にアメリカ人男性1人。よろしくとあいさつした時に,彼の両手の指が親指と小指以外はなく,残っている親指と小指もわずかに突起しているだけでした。その状態でダイビングができるのか心配でしたが,彼は10数年ダイビングをしていて,私のログブックにもサインをしてくれました。ハンディキャップがあるから趣味を諦めるのではなく,ハンディキャップをカバーしながら,趣味を楽しみ,生き生きとした生活を送っているようでした。もちろん水中では空気の残量をガイドに知らせなければなりません。指がないと数字を伝えられないのですが,彼は手をグーにして,これは大丈夫というサインだとガイドに教えていました。ガイドの方も,残量を示すゲージを直接見せてもらえばO.K.ということで,不安な表情はありませんでした。5つ星のホテルでしたので,ゲストにそれぞれ1人ずつガイドが付くという贅沢な布陣で気持ちよく潜ることができました。

 日本人は身体に障害があると,趣味やスポーツに参加することに消極的になってしまいます。欧米人は自分の障害を隠さずに,できない時は人の手助けをもらって,積極的に何でも参加してきます。国民性もあるのでしょうが,人目を気にして障害を隠してしまう日本人と,障害を隠さずに普通に生活する欧米人とでは,住んでいる社会が違うように感じます。日本も一人一人の個性を大切にできる社会であってほしいものです。

嘔吐下痢症の対処方法

 今の時期に多い嘔吐下痢症はロタ,ノロなどのウイルスによる胃腸炎です。嘔吐から始まり,半日後くらいから下痢になります。ロタによるものは白色下痢便が特徴的で,白色や灰色の便になります。嘔吐のために水分摂取ができず,脱水状態になりますので,吐き気を止めて,少しずつ水分を摂らせることが重要です。吐き気止めの薬は座薬と内服薬がありますが,内服薬を服用できるくらいの人は,水分を少しずつ摂れることが多いので,吐き気が強い人には座薬を処方します。座薬を使って1時間経過すると,吐き気が治まってきます。その時点から経口補水液OS

-1を少しずつ飲んでいけば,ほとんどの人は点滴をせずに済みます。

 OS-1の飲ませ方は,スプーン1杯(5ccくらい)ずつを数分おきに飲ませて,少しずつ量を増やしていきます。1日量としては,学童以上は500〜1000ml,幼児は300〜600ml,乳児は体重1kg当たり30〜50mlくらいが目安になります。嘔吐は半日から1日で治まることが多いので,その間は脱水にならないように,こまめに水分摂取をさせましょう。本人がごくごく飲んでも,量が多いと吐いてしまますので,1回に飲む量は親がコントロールしてあげましょう。離乳食が始まっていない乳児では,母乳でも大丈夫です。母乳は胃の中に長く留まります。できるだけ少量ずつ頻回に飲ませてあげてください。

 経口補水液を使っても,なかなか水分摂取ができない時は,早く病院を受診し,点滴を受けてください。子どもの脱水は急速に進み,1日で重症化することがよくあります。ぐったりしていたり,意識がもうろうとしているなどの症状があれば,危険なサインです。また,嘔吐下痢症が流行している時に,見逃しやすい病気が腸重積です。ウイルス性の嘔吐下痢症の最中に,腸が活発に動き,腸の一部が他の腸の中に入り込んでしまう危険性が高いのです。腸重積は緊急度の高い病気です。繰り返す腹痛と嘔吐が持続し,便にいちごジャムのような血液が混じるようになります。高圧の空気を腸に送り込み,腸を元に戻す処置を行います。時間が経ってしまうと,腸が壊死して穴があいてしまいますので,すぐに医療機関を受診しましょう。