サンタ通信No255(10)表 R2.10.18発行

RSウイルスと溶連菌に注意

 10月に入って,朝晩が涼しくなり,過ごしやすくなりました。秋の気配を求めて,えびの高原の池巡りコースを5km歩いて回り,韓国岳登山口のススキの群生を眺めてきましたが,Go To トラベルの効果か,えびの高原の駐車場は結構混んでいました。観光地の宿泊施設や飲食店もお客さんが多かった印象です。確かに旅行代金や宿泊費を一人1泊2万円を上限に補助してくれますので,ステイホームで窮屈な思いをしていた人たちが,一斉に旅行を始めています。旅行業界の苦しい経営状況に灯りが見え始めたばかりですが,国からの補助がなくなれば,旅行しようという意欲はなくなります。コロナの感染を気にして,皆が旅行を控えたら,Go To トラベル以前に戻ってしまうのは明白です。今回のキャンペーンで一息ついた旅行業界がまた苦しくなってくれば,同じようなキャンペーンを打ち出す必要があります。いろいろな業界の苦境に対し,政府は様々な補助をしていますが,国の財政は収入が少なく,支出が大きいため,毎年赤字国債を発行し,借金の残高は1,000兆円に迫っています。予算の無駄遣いをせずに,私たちもコロナ対策を徹底しなければなりません。

 さて,最近1週間(10月5日〜10月11日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,RSウイルス感染症と溶連菌感染症で週4人ずつでした。次いで,感染性胃腸炎1人,水痘1人,手足口病1人でした。RSウイルス感染症の流行はまだ続いています。小さな赤ちゃんに感染しないように注意が必要です。咳が出ている子どもと赤ちゃんを接触させないようにしましょう。3か月までの赤ちゃんに咳・鼻水の症状が出た場合は,RSウイルスの迅速検査を行うようにしています。それ以降の年齢の赤ちゃんでは,咳が強くなり始めてから検査しています。哺乳量が少なくなってきたり,ゼイゼイで眠れないようならば,入院が必要になります。発症して1週間で,かなり強い咳やゼイゼイがみられるようになり,さらに1週間が症状のピークになります。ここを過ぎると,徐々に咳が治ってきます。発症から1週間くらいはウイルスの排出がありますので,その間は集団生活はできません。咳が軽くなってきて,食事もいつも通り摂れるくらいになれば,登園登校ができます。

 溶連菌感染症も同じくらいの患者数になっています。溶連菌は,幼稚園から小学生くらいに多く,のどの痛みと発熱が主な症状ですが,病初期に嘔吐がみられることが多く,診察でのどが赤く,嘔吐を伴う時は,溶連菌の検査をするようにしています。感染力が強く,家庭やクラスで集団発生しやすい病気ですが,今コロナウイルスを警戒して,皆さんマスクをされますので,クラスでの集団発生は少なく,マスクをはずす機会が多い家庭での感染が目立っています。抗生物質を服用後,24時間経過して症状が治れば,集団生活はできます。7〜10日間の抗生剤を最後まで飲みきることが大切です。

 

 12月6日(日)は当番医です。救急患者さんが優先になります。

サンタ通信No255(10)裏 R2.10.18発行

インフルエンザ予防接種を補助!

 鹿児島県が,小学生以下の子どもと妊婦に対するインフルエンザ予防接種を1回2,000円ずつ補助することが決まりました。子どもは2回接種しますので,合計4,000円の補助になります。どのような形で補助されるのか,詳細は未定ですが,実際に接種が始まってしまっています。今月13日付で医師会の方からこの新規事業について受託するかどうかを尋ねてきました。もちろん,当院は受託しますので,当院でインフルエンザ予防接種を受けられたお子さんについては,1回2,000円の補助が受けられます。生後6か月から小学校6年生までの児童と,妊婦さんが対象になります。

 新型コロナウイルス感染症とインフルエンザが今年の冬に同時流行したら,インフルエンザの患者にもコロナの検査が必要になるため,インフルエンザの流行をなるべく抑えるための対策を国が考えて,インフルエンザの予防接種を高齢者は10月1日から接種し,医療従事者や小児,妊婦,基礎疾患を持つ人は10月26日から接種するように呼びかけていました。その方針に協力するように呼びかける通知が当院にも来ましたが,すでに接種予約が始まっていましたし,当院では高齢者が予防接種を受けることはほとんどないため,10月初めから子どもに接種することにしました。今度は接種が始まった後に県から補助についての通知が来て,どんな手続きが必要なのかいまだに不明ですが,とりあえず補助があることについて,皆様にお知らせする次第です。行政がバタバタしながら,泥縄で対策を立てていることがよく分かりますね。

マスクによる感染症への影響

 新型コロナウイルス感染症がじわじわ流行し続けているため,どこに行くにもマスクが欠かせません。WHOは5歳以下の子どもは必ずしもマスク着用にこだわらなくてよいと見解を出しています。この年齢は適切にマスクを着用できないということ,さらに他人に感染させる可能性も他の年代に比べて低いためです。また,2歳以下はマスクを着用する方が危険だとという見解を出しています。6~11歳については,地域での感染の広がりや高齢者と同居しているかどうかなどを考慮して,マスクをさせるか,マスクなしでみるか,判断するように提言してしています。12歳以上は大人と同じようにマスクの着用を求めています。

 アメリカのトランプ大統領は,コロナに罹患してすぐに,色々な治療を受けて,もう回復したから他の人に感染させることはないと,マスクなしで選挙遊説を再開しています。このウイルスに対して,もう少し用心しておいた方が良い気がします。トランプさんは,未承認の人工的に作られたウイルスに対する抗体で治療を受けたようですが,私たちの体ではウイルスと闘う時に,自分の体の中で,そのウイルスに対する抗体ができて,免疫が成立します。外から入れた抗体では,効果は一時的なので,完全にウイルスを排除できなければ,これから再発することもあり得ます。

 アメリカと比べて,日本ではほとんどの方が,外出する時にマスクをします。マスクで感染を完全に防ぐことはできないのですが,人に感染させるリスクは大幅に減ります。マスクで飛沫感染が少なくなりますから,飛沫感染する病気は少なくなるはずです。例えば,新型コロナウイルスは咳で感染させる飛沫感染ですし,インフルエンザや普通のカゼも飛沫感染です。RSウイルス感染症も飛沫感染ですが,今年は結構多い印象です。これは,3歳までの小さな子どもが主に罹患しますので,マスクの効果が少ないのだと思います。インフルエンザも飛沫感染です。インフルエンザは年齢を問わず,誰でも罹患しますので,マスクで流行をかなり抑えることができると思います。今シーズンの冬はインフルエンザの流行がこれまでの半分くらいになってくれるのではと考えています。患者数がどれくらいになるのか,子どもの流行も少なくなるのか,私の医学的な興味は尽きません。