サンタ通信No254(09)表 R2.09.18発行

RSウイルス感染症が流行中

  朝晩が少し涼しく感じられるようになり,秋が近くなってきました。コロナウイルス感染症も少し落ち着いてきています。都会では毎日100人,200人の感染者が発生していますが,鹿児島県内は1週間に数人程度ですんでいます。世界中に蔓延したコロナを根絶するのは不可能なので,これからはコロナの危険性を感じながらも,できるだけ普通の生活をしていくことになります。3密を避けながら,人と接する時にはマスクを着用して,感染を広げないように努力することです。

 さて,最近1週間(9月7日〜9月13日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,RSウイルス感染症で週7人でした。次いで,咽頭結膜熱2人,突発性発疹1人,手足口病1人,感染性胃腸炎1人でした。RSウイルス感染症が多くなってきました。入院が必要になる場合もあり,これから注意が必要な感染症です。RSウイルスは11月から3月の冬期に流行しますが,最近は夏にも流行がみられるようになっています。これまでRSウイルスに感染したことがない乳児は,1回の流行で約半数が感染すると言われています。再感染も起こりやすいですが,再感染した時は,初感染の場合と比べて,軽くてすみます。感染すると,最初に咳や鼻水などの普通のカゼ症状がみられますが,次第に咳込みが強くなり,ゼイゼイする呼吸になってきます。哺乳量が落ちてきたり,睡眠が障害されるようになれば,そろそろ入院を考えます。特に注意が必要な人は,0〜3か月の乳児と未熟児で生まれた赤ちゃんです。咳が強くなる前に,無呼吸発作を起こすことがあり,急に顔色が青ざめることがあるからです。そのため,未熟児にはRSウイルスに対する抗体が入った注射を定期的に接種して,感染してもひどくならないようにします。

 大人も再感染することがあります。赤ちゃんのRSウイルス感染症を診断した時に,親がコンコンと咳をしているのをみることがあります。感染源は親からだろうなと推測しますが,大部分のお子さんは,保育所などの集団生活で感染します。保育所でRSウイルス感染症が発生した時は,乳児のクラスに感染が広がらないように,施設側は注意が必要です。

 診断は,インフルエンザと同じで,鼻水を取って迅速検査すると10分くらいで診断できます。ただ,この検査ができるのは,0歳児と入院になるお子さんのみです。1歳過ぎたお子さんについては,保険適応がありません。これはRSウイルス感染で重症化しやすい年齢にのみ保険がきくようになっています。保育所などでRSウイルス感染症の可能性があるから検査をしてきてくださいと言われることがありますが,1歳を過ぎたお子さんについては,検査は自己負担で受けなければなりません。当院では,高熱が続く場合やゼイゼイが強い場合など,1歳過ぎても必要に応じて検査をするようにしています。治療については,特効薬はありません。咳・鼻水の薬を使いながら,良くなるのを待ちます。一般的な経過は,1週間で強い咳込み・ゼイゼイが落ち着き,さらに1週間たつと咳が軽くなってきます。咳が落ち着いてくれば,集団生活が可能になります。

サンタ通信No254(09)裏 R2.09.18発行

ロタワクチン定期接種化に伴う変更点

  10月1日からロタワクチンが定期接種になります。定期接種ですので,自己負担なしで受けられます。ただし,今年8月1日以降に生まれたお子さんが対象になります。ロタワクチンは2種類あり,ロタリックスは1価のワクチンで2回接種します。ロタテックは5価のワクチンで3回接種します。1価と5価の違いについては,1価は1種類のロタウイルスを弱毒化させて作ったワクチンで,1種類ですが,他のタイプのウイルスにも交差免疫が働いて効果がありますので,2回接種で済みます。5価の方は5種類のワクチンを弱毒化したワクチンです。このワクチンは3回接種が必要になります。効果はどちらも同じと考えて良いでしょう。どちらのワクチンも生後6週から接種可能ですが,他のワクチンとの同時接種を考えて,生後2か月からの接種が最適です。1回目の接種は生後14週6日までに受けることが必要です。最終の接種は,ロタリックス2回接種の方が生後24週までに接種を完了する必要があります。ロタテック3回接種の方は生後32週までに完了させます。 ロタワクチン接種で注意しなければならないのが,腸重積という病気です。接種時期が遅くなると,この腸重積を引き起こす確率が高くなります。接種後7日以内に,急に不機嫌が続いたり,嘔吐や血便がみられたら,すぐに病院を受診してください。

 また,これまでロタリックス2回接種の方は,接種後に嘔吐した時には,再投与が認められていましたが,10月からはどちらのワクチンでも再投与は認められなくなりました。嘔吐した場合でも,接種した量の20%くらいが接種できていれば,十分な効果が期待できるということ,1回だけの接種でも80%の人に一定の抗体価の上昇を認めたということから,定期接種としては,再投与はしないという方針になりました。また,ロタテック3回接種の方は,嘔吐しても残り2回の接種ができていれば問題ないとされており,現時点でも再投与はしていません。

 ロタワクチンの定期接種化に伴い,他のワクチンとの接種間隔がきつくなりそうなため,異なるワクチン同士の接種間隔は制限なしになりました。生ワクチンの注射(麻疹・風疹,水痘,おたふくかぜ,BCG)の後は4週間空けますが,他のワクチンは制限がなくなります。もちろん,同じワクチンについては,接種間隔の規定はこれまで通り守る必要があります。ワクチンのスケジュールを立てる上で,融通がきくようになりました。

神経の再接続に成功

  神経細胞は電気信号を細胞から細胞へつなぎながら,情報をやりとりして働きます。神経細胞と神経細胞の間はシナプスという接続部位があり,そこで信号のやりとりの調整をします。家の電気で例えると,脳という発電所で電気が造られ,神経細胞という電線を通して家の中に運ばれます。家の入り口に配電盤があり,電気を調整しながら,筋肉という電化製品を動かすというイメージです。ちょうど配電盤がシナプスというつなぎ目の役割を果たします。神経が正常に働くために,とても大切なシナプスです。先日,慶應大学と愛知医大のチームが,シナプスが切れてしまったマウスに,人工的に作ったタンパク質を用いて,つなぎ直すことに成功したというニュースを目にしました。脊髄損傷させたマウスにこのタンパク質を投与すると,麻痺した後ろ脚が動くようになりました。また,遺伝子操作でアルツハイマー病のような状態にしたマウスにこのタンパク質を投与したら,餌がある場所への最短の道順を間違えなくなるなど,記憶力が良くなることが確かめられました。人間に応用するのは,まだまだ先のことですが,高齢化社会が進む日本にとっては,認知症の増加が大きな問題になっていますので,この実験の成功が小さな明るい希望になりそうです。早く人間にも実用化されて,衰えていた記憶力が戻るのを期待したいです。本当に科学の進歩は,私たちの想像を超えて,進んでいきますね。