サンタ通信No250(05)表 R2.05.18発行

ステイ・ホームはどうでした?

 私はゴールデンウィークには,まとまったお休みを取って1週間くらいの海外旅行をよくしていました。去年はインドを旅してきました。今年はニュージーランドを旅行する予定でした。今年の初めに新型コロナが流行し始めた時も,ニュージーランドは患者発生が少なく,まだ安心して旅行ができると思っていましたが,ニュージーランド政府が早々と航空路線を閉鎖して,鎖国状態に入ったため,旅行ができなくなりました。せっかくのゴールデンウィークでしたが,図書館やスポーツジムにも行けず,ひたすら自宅にこもる毎日になりました。仕方がないので,1週間かけて自宅にあった20年分の書類の整理をしたり,実家の植木の手入れをしたりと,巣ごもり生活を送りました。皆さんも同じような時間の過ごし方になったようで,家のゴミや庭木のゴミが非常に多くなったみたいです。こんなことなら,長いお休みはなくてもよかったのにと思いながら,いつもの診療体制に戻りました。

 ゴールデンウィーク明けの5月10日に当番医を担当しましたが,1日で診察した患者さんが55人という少なさでした。ゆっくり昼ご飯が食べられた当番医は久しぶりでした。いかに皆さんが感染予防を心がけているかが分かります。小児科の当番医では,ほとんどが感染症の患者さんですので,感染症が流行しない時には患者数が激減します。駐車場整理員も準備していましたが,駐車場が満車になることはありませんでした。ただ,当番医の時は,県外からの患者さんも受診する可能性があるため,防護服やN95マスクなどを準備しようと,医師会に申し込みましたが,残念ながら当番医の時には届かず,いつになったら届くのかさえもわからない状態です。

 さて,最近1週間(5月7日〜5月13日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,感染性胃腸炎で週4人でした。次いで,溶連菌感染症2人,手足口病1人でした。嘔吐・下痢のウイルス性胃腸炎と溶連菌感染症が少し目立ちますが,感染症は全体的に少ないです。この週にはいませんでしたが,水痘や伝染性紅斑も時々みられています。学校の休校が続いたことと,皆さんがどこへ行くにもマスクをしてくれますので,いつもなら手足口病が増えてくる時期ですが,今年は流行が抑えられていて,ほとんど流行していません。新型コロナウイルス感染症への対策が他の感染症の流行も抑えています。もし冬まで今の状況が続けば,インフルエンザもあまり流行せずにすむのかもしれません。マスクが生活の一部になり,3密を避ける行動が無意識でも出てくるようになれば,小児科の外来も様変わりしてくるかもしれません。発熱や咳の患者さんが少なくなり,健診や予防接種などが主な仕事になり,ゆっくりと時間をかけて発達をみることができるようになりますし,育児の悩みやストレスに対しても相談に応じる時間をかけられます。全国的に非常事態が解除され,人の移動が多くなったり,海外へも自由に移動ができるようになった時に,このコロナウイルスの流行が再び大きな波になって襲いかからないかを,慎重に見極めることが大事です。そして,患者数が増えてきた時には,再び生活の制限が必要になるでしょう。

サンタ通信No250(05)裏 R2.05.18発行

これから変わる予防接種と健診

 鹿児島市が今年7月からおたふくかぜワクチン接種に1回あたり4,000円を助成する事業が始まります。鹿児島市に住民登録がある方で,1歳以上2歳未満の方と5歳以上7歳未満で小学校就学前の1年間の方が対象です。対象者には6月末に案内ハガキを個別に送付するそうです。

 10月からロタウイルスの予防接種が定期接種に変わります。これまで鹿児島市には一部を助成する制度がありました。1回に4,000円〜6,000円の助成をしていましたが,今回は定期接種になりますので,自己負担はなくなります。対象者は令和2年8月1日以降に生まれた人で,鹿児島市に住民登録している方です。1価のワクチン2回接種と5価のワクチン3回接種,どちらでも選べます。どちらのワクチンもこれまで世界中で使用されていて,効果は同程度とされています。副作用も特に差がないため,どちらを選択するかは,ご家族の自由選択とさせてもらっています。あえて言えば,利点として,1価の方は2回接種と回数が少なくてすみ,服用量も1.5mlと少ないことです。5価の方は,生後32週までと接種期間が長いため,スケジュールに余裕を持たせることができます。

 同じく10月から鹿児島市では産婦支援小児科連携事業を始める予定にしています。お産の後,1〜2か月くらいで産婦はうつ状態になることがあり,産科では赤ちゃんの1か月健診と一緒に産婦の健診も行っています。ところが,小児科では2か月になると赤ちゃんの予防接種のために受診しますが,母親の心の状態まで診ていませんでした。3か月健診では母子手帳に「育児が大変かどうか」の記載欄があり,そこで母親の心理を判断していましたが,今後は産後2か月の時点で母親に必要な支援をすることになります。10月1日以降出産した妊婦が対象になります。

緊急事態解除後の生活を考える

 鹿児島県は新型コロナウイルスの患者が1か月近く発生していないため,緊急事態宣言が解除され,普通の生活ができるようになりましたが,世界中に拡散したこの病気は,根絶するのは困難です。どんなに日本国内で押さえ込んだとしても,世界のどこかできっと流行は続き,海外から持ち込まれて,流行が起こるという危険性は少なくとも数年にわたり続くと思われます。その間に,ワクチンができたり,特効薬が開発されたりすれば,今のインフルエンザと同じくらいの脅威になりそうですが,それまではこの病気を流行させないように,一人ひとりが生活の中で感染防御の配慮をいつも持つことです。マスクや手洗いなどは習慣になってきましたし,3密の場面をなるべく避けようと多くの人が意識するようになりました。

 もちろん,この病気の流行を抑えるために,営業を自粛された方や仕事ができなかった方に対するセーフティネットが大切になりますし,経済を立て直すために,全国民が心を一つにして,助け合わなければいけません。飲食業や宿泊業,旅行業者など大きな損害を受けた人たちも多いでしょう。その人たちが仕事を続けられるような支援が必要です。そうしないと,再び自粛が必要になった時に,休業要請しても,応じてくれなくなってしまいます。病気の拡散と経済の発展を,うまくバランスを取りながら,慎重に進めることが,これからの私たちに課された大きな命題です。もちろん,経済活性化のため,人的な移動が多くなってきて,海外からも人が入ってくれば,コロナの流行は起こりやすくなります。流行の波が起これば,一旦経済活動を弱め,流行が収まれば経済活動を強めるという,臨機応変の社会にならなければいけません。自己中心ではいけません。皆が協力し,助け合うことです。自分のこれまでの生き方を振り返りながら,進む  べき方向を修正していける良い機会だと思います。コロナのせいで社会がおかしな方向に進むのでなく,コロナのおかげで良い社会になってくれたと思えるような新しい生き方をしたいですね。