サンタ通信No251(06)表 R2.06.18発行

梅雨の季節も楽しみましょう

 世界中でコロナ騒動が続き,私たちの心もなかなか落ち着きませんが,それでも季節はいつもと同じように巡ってきます。梅雨の時期は雨の日が多く,外出するのもおっくうになりますが,優しく降る雨は,空気をしっとりさせて,桜島の灰も流してくれます。庭の植物も水をたっぷりもらって嬉しそうです。さらに,雨上がりに虹を見つけたら,元気が出ます。雨が降ることに感謝することで,自分の心も穏やかになってきます。「今日も雨。嫌だなぁ」と考えずに,「雨のおかげで作物が実り,自分たちの食卓を豊かにしてくれる」と感謝しながら生きることが,豊かな人生なのだと思います。コロナで生活が制限され,ストレスがたまる日々ですが,ちょっとしたことに対して感謝の心を持つと,心が落ち着きます。私は,4月の神戸での学会,ゴールデンウィークのニュージーランド旅行,5月の新潟での学会,すべてキャンセルになり,鹿児島から一歩も出られない状態が続いていますが,せめて夏休みにどこか出かけることができないかと,わずかな希望を抱きながら,日々暮らしています。現実的には無理でも,希望だけでも持っておきたいですよね。

 さて,最近1週間(6月8日〜6月14日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症とヘルパンギーナでともに週2人でした。次いで,感染性胃腸炎1人,突発性発疹1人でした。本当に感染症が少ないですね。外来を受診される患者さんは,発熱や鼻水,咳など,上気道炎の症状の方が多く,伝染するような疾患はほとんどいません。朝夕の気温の変化で体調を崩したり,軽いカゼ症状だったりする患者さんがほとんどです。学校や幼稚園,保育所など,子ども達の集団生活の自粛が終わり,以前と同じように集団生活が再開されていますが,集団生活の中ではマスクと手洗いが励行され,密にならないような配慮ができているために,感染症が伝播しないのだと思います。6月から7月にかけては,手足口病やヘルパンギーナなどの夏カゼが一番多くなる時期ですが,両疾患ともに患者さんを時々診ますが,流行の規模はとても小さくて,大きな流行を見ないままに今年の夏は終わりそうです。病気が少ないことは,子ども達にとってうれしいことです。小児科医にとっても,夏の季節は仕事の忙しさから解放されるうれしい季節なのですが,この状態が1年中続くようなら,小児科の仕事が予防接種と健診だけになっていくため,病院経営が難しくなってくる所も出てきそうです。感染症の患者さんの比率が高いのは,小児科と耳鼻科だと言われています。それ以外の科ではコロナの影響は少ないようです。このままでは,小児科を目指す医学生は,ますます少なくなってしまいそうですね。月1回,当院にも鹿児島大学の医学生がクリニック実習に来ていましたが,実習でコロナ感染症にかかる危険性があるため,学校外での実習は,コロナが収束するまで見合わせることになりました。当院で実習を受けた学生の中で,小児科に入局した人も多かったので,実習見合わせは残念です。コロナは病気としても怖いものがありますが,社会を蝕む面もあって,色々な視点から見てゆく必要があります。

サンタ通信No251(06)裏 R2.06.18発行

子どもからみた新型コロナウイルス感染症

  新型コロナウイルスは高齢者や基礎疾患のある人に対しては,重症の肺炎や全身性のウイルス血症を起こし,重症化しやすいことが判っています。さらに,タバコを長く吸っている人は,慢性閉塞性肺疾患を起こしていることが多く,今回の新型コロナウイルス感染症により,人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)が必要になる確率が高くなります。

 一方,子どもにとっては,この新型コロナウイルス感染症はどのくらい危険な病気なのでしょうか。これまで世界中で報告されている小児の感染例からみると,重症例はほとんどなく,大人と比べると軽症ですんでいます。また,患者の中で小児が占める割合も少なくて,大多数が家族内感染によるもので,学校や保育所での集団感染はほとんどありません。まれに学校や保育所での患者発生が報告されますが,子ども達に集団感染しているというよりも,そこに勤めている大人達が主に感染しているのが現状です。このため,学校や保育施設を休みにすることは,流行を抑えることにあまり役立たず,反対に保育ができなくなったために,医療従事者が仕事を休まなければならないことの方が,流行を拡げてしまう危険性があります。

 治療について,子どもの場合は,大人と比べ軽症ですので,経過観察あるいは対症療法で十分とされています。ですから,あまり心配し過ぎて,精神的に参ってしまうことがないように,気持ちを楽にして,普通の生活を送ることです。ただ,これから第2波,第3波と感染が押し寄せる可能性はあります。その時には,流行を抑え込むために,これまでやってきたマスクや手洗いを徹底させ,3つの密を避ける行動をとりましょう。

世界が少しずつ動き始める

  インドの知人から毎週のように国内の動きがLINEで送られてきます。それを見ていると,インドは3月末に国内で感染が広がり始め,すぐにインド全土の封鎖に踏み切り,食料品の買い物以外は家から出られない状態が2か月間も続いていました。最近ようやく,電車やバスなどが動き始め,制限は徐々に解除されてきたようです。でも新規感染者が1日だけで1万人にもなるという状況で,患者増加には歯止めがかかっていません。しかし,このまま封鎖を続ければ,国の経済が持たないとのことで,多少の患者増はしかたないとあきらめて,封鎖を解除しているようです。インドに行った時に,路線バスの屋根に何人も乗客が乗っているのを見ました。どこに行ってもたくさんの人が身動きできないほど密集していました。衛生状態も悪く,屋内にトイレを持っている家庭は全国で半分以下しかなかったのを,ここ5年間で100%にしようと「クリーン・インディア」キャンペーンを打ち出し,トイレを増産するほどです。ただ,ヒンドゥ教では,大小便を不浄として,家から離れた所で処理すべきだとされていて,家のトイレを使わずに川原の茂みで済ませる人もいます。そんなインドで,コロナが終息するのは非常に長い時間を要すると思われます。南米やアフリカでも患者が増えています。私はあと数年は流行が続くと考えています。日本国内に限ってみると,コロナはコントロールされていますので,来年は国体が開催できそうですが,全世界から来るオリンピックは来年でも開催は難しいだろうなと思っています。海外旅行もコロナ対策を十分に取って,押さえ込んだ国だけが許可されるのではと考えます。仕事で海外に赴任する人はもう少し早く行けるかもしれませんが,観光目的ならば,日本にコロナを持ち込まないように,リスクのある国からの渡航はまだ許可されないだろうと思います。どこの国でも自由に行き来できるようになるのは数年後になるのではと思います。3回目のインド訪問をしたいのですが,まだ先になりそうです。