サンタ通信No247(02)表 R2.02.18発行

インフルエンザ流行は減少傾向

 新型コロナウイルスによる重症肺炎がCOVID-19(コビッド19)と名付けられました。コロナウイルス(coronavirus)による病気(disease)の頭文字を組み合わせ,2019年に発生したため,19が付いています。このCOVID-19が中国で大流行し,日本は水際作戦で国内に入って来るのを阻止していました。しかし,新型インフルエンザの時と同じように,国内でも中国と関係のない一般の人の感染が発生し始めました。それまでは国の方針で,中国に滞在した人や中国人と接触した人だけが検査を受けていましたが,ようやく重症の肺炎の患者にも自治体の判断で検査ができるようになり,普通の人が感染していることが分かってきました。これからしばらくは,あちこちの病院から患者発生の報告が続くのではと思われます。

 さて,最近1週間(2月3日〜2月9日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,インフルエンザで週16人でした。次いで,感染性胃腸炎7人,溶連菌感染症3人,手足口病2人,水痘1人,咽頭結膜熱1人,ヘルパンギーナ1人でした。インフルエンザについては患者数が減少傾向です。今年は11月から大きな流行になりましたので,いつもの流行パターンが早い時期にずれたため,例年ならピークになる2月に患者数が少ないのだと思います。ただ,週16人は注意報レベルの患者数ですので,今後もまだまだ注意が必要です。流行の終盤になると,B型が流行してきますが,現時点では,ほとんどの患者さんがA型で,B型は月に1〜2名程度です。3月いっぱいはインフルエンザの流行が続くと思いますので,もうしばらくは流行の経過を注意しておきましょう。

 インフルエンザ以外の感染症は,感染性胃腸炎(ロタウイルス・ノロウイルスによる嘔吐下痢症)と溶連菌感染症,水痘,手足口病が散発的にみられています。どれも大きな流行になっていませんが,いろいろな感染症がみられています。嘔吐のお子さんを診る場合は,ウイルス性胃腸炎なのか,鶏刺しを食べたための細菌性胃腸炎なのか,腸重積による嘔吐なのか,診察しながら鑑別していきます。その時に判らない場合でも,翌日に水のような下痢が出てくればウイルス性胃腸炎だと判りますし,数日前に鶏刺しを食べたということを聞き出せればカンピロバクター菌による胃腸炎だと診断できます。今流行している病気については,あまり重症になる危険性は少ないですが,ごく稀に命にかかわるような合併症を併発することがあります。そのため,診察は常に緊張感を持って全身状態を診るようにしています。子どもの病状は急速に変化することがあり,気になる患者さんには翌日に再診を指示することもよくあります。呼吸が苦しそうだとか,水分摂取ができていないとか,心配な時は遠慮せずに受診されてくださいね。私も長年の小児科医としての経験を生かして,的確な診断と治療を心がけたいと思います。

 

 2月24日(月)振替休日は当番医を担当します。救急患者優先となります。

 4月11日(土)は学会のため休診となります。

 4月26日〜5月4日は休診となります。

サンタ通信No247(02)裏 R2.02.18発行

コロナウイルス感染症について

 コロナウイルスは風邪のウイルスです。鼻水や咳といったごく普通の風邪が冬になると多くなります。そんな風邪の10〜15%がコロナウイルスによって引き起こされます。ほとんどの子どもは6歳までに感染を経験します。多くの患者さんは軽症の風邪で終わりますが,たまに高熱が出ることもあります。このコロナウイルスが変異して病原性が強くなり,重症肺炎を引き起こすようになったのが,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)です。2002年に中国で発生し,8,069人の患者のうち775人が重症の肺炎で死亡しました。致死率は9.6%でした。

 2012年にはサウジアラビアで中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)が発生しました。2,494人の患者のうち858人が死亡し,致死率は34.4%にも達しましたが,後に大規模な疫学調査を行い,サウジアラビアの1000人に1人がこの抗体を持っていることが判り,患者に軽症の人や不顕性感染(感染しても症状が出ない場合)の人が大勢いたことが分かっています。重症化した人は高齢者と,糖尿病や心肺疾患などの基礎疾患を持つ人でした。15歳以下の子供は感染者全体の2%くらいを占めましたが,その多くは不顕性感染か軽症ですんでいます。2015年に韓国で,中東帰りの1人の感染者から医療関連の186人に伝播し,36人が死亡し,韓国では大騒ぎになりました。

 今回の新型コロナウイルス感染症も同じような性質をもっていると思われます。発生源の中国湖北省において致死率は2%くらいと言われていますが,それ以外の地域や国ではそれよりも低くなっています。今は患者発生数と重症化して死亡した人の数だけを見て,怖い病気だと不安に思いますが,おそらく不顕性感染や軽症の人がまだ検査されていない状況なのでしょう。インフルエンザのように簡易キットで検査ができるようになれば,どれくらいの頻度で重症化するのか明らかになると思いますが,ウイルスがのどや鼻に少なくて,気管や肺に多く存在するため,正確な診断をするには課題がありそうです。日本でも中国と関係のない人たちから感染が確認されていて,死亡例も出ました。中国に関係した人だけに検査をしていたため,街中には広がっていないと思われていましたが,これから検査を進めていけば,もっと多くの患者が出てくると思われます。現時点では,ハイリスクである高齢者や基礎疾患を持つ人への対策が大切です。これまでの研究で,重症例の人からは発症後30日でも,気管からウイルスが検出されたという報告があり,比較的長期にわたり痰や尿,便などにウイルスが排泄される可能性があります。流行を食い止めるためには,マスク・手洗い・うがいなどの基本的な感染症対策が必須です。また,肺炎になった人には,コロナウイルスによるものかどうか検査ができるようになってほしいものです。早く暖かくなって,流行が終息してくれることを祈っています。

ヒブ(Hib)ワクチンの供給停止

 インフルエンザ桿菌という肺炎や敗血症,髄膜炎を起こす細菌に対して開発されたヒブワクチンは,子どもを守る非常に大事なワクチンの一つです。このワクチンを作っているのはフランスのメーカーですが,注射針が一部錆びている商品が数件見つかり,その原因追求と対策のため,1月末から供給を停止しています。このため,当院で予防接種を予約されていてもワクチン自体が手に入りません。どこの小児科でもワクチンが足りなくて困っていますが,できるだけ1回目と2回目の接種を優先できるように,3回目以降の方には接種を待ってもらっています。2月末にはメーカーから供給についての報告が予定されていますが,十分な量が確保でき次第,通常のワクチン接種に戻るつもりです。このワクチンが開始されて以降,細菌性髄膜炎という小児にとって最も恐ろしい病気が激減していますので,1日も早いワクチンの供給を待ち望んでいます。