サンタ通信No253(08)表 R2.08.18発行

じっと我慢のお盆休み

 長かった梅雨が明けて,気温35℃前後の猛暑が続いています。病院内は冷房が効いて涼しいので,働くのにはあまりきつい思いをしなくて済みます。換気をするために窓を全開にすると,外の熱風が入り込んできます。外で働く人は大変でしょう。熱中症を心配しながらの労働は,水分補給と休憩をしっかり取る必要があります。日本人は勤勉な民族と言われています。だらだらと働けば叱られます。私が訪れたインドで,道路工事をしている人の動きを見る機会がありましたが,あまり熱心に働いていませんでした。木陰で休む人が多く,作業をしている人も,ゆっくり動いていました。訪れた5月は暑季という季節で,外気温は43℃くらいでした。時には50℃まで上がることもあるそうです。そんな環境で,懸命に働いていると,熱中症で命を落としかねません。無理をしないようにのろのろ働いているのは,その土地に合った働き方をしているということですね。

 さて,最近1週間(8月3日〜8月9日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,ヘルパンギーナで週8人でした。次いで,突発性発疹2人,溶連菌感染症1人,感染性胃腸炎1人でした。感染症全般は非常に少ないのですが,ヘルパンギーナだけは,まだ流行の最中にあります。ただ,このヘルパンギーナは,これからの季節は次第に流行は収まっていきますので,後1か月くらい注意しておけば良いでしょう。ヘルパンギーナの好発年齢は乳幼児で,この週の患者さんも0〜2歳の子どもだけ8人でした。高熱は出ますが,のどの痛みで水分摂取ができなくて点滴が必要になった人はいませんでした。高熱できつい時は,解熱剤を適切に使いながら,2〜3日待てば解熱してきます。

 熱が38.5℃を超えたらすぐに解熱剤を使う人もいますが,解熱剤は一時的に熱を下げるだけです。また数時間経てば元の高熱に戻ってしまいます。体に入り込んだウイルスや細菌から体を守ろうとして,自ら熱を出しているのですから,薬で熱を下げるのは,本当は治療に逆行します。できるだけ解熱剤を使わずに様子をみる方が理にかなっています。では,どのような時に解熱剤は使うべきなのでしょうか。高熱のために水分摂取ができなくなっている時や,睡眠がとれない時には解熱剤を使った方が良いです。病気を直すのに必要な高熱ですが,水分が取れずに脱水になると,体を守る働きが障害されてしまいます。また,十分な睡眠は免疫を高めてくれます。ですから,水分や睡眠が足りない時は,一時的に解熱剤を使って熱を下げ,水分補給をしたり,十分に休ませることが大事なのです。反対に,高熱があっても元気があるお子さんもいらっしゃいます。その場合は,解熱剤を使う必要はないということです。ほとんどの解熱剤は,鎮痛作用もあります。頭痛がひどくて,食事ができない時にも,解熱剤を服用すれば,一時的に痛みが和らぎ,食事や睡眠がとれます。その子に合った解熱剤の使い方を知っておきましょう。

 

9月13日(日)は当番医を担当します。救急患者さんが優先になります。

サンタ通信No253(08)裏 R2.08.18発行

指宿の病院でクラスター発生

 新型コロナウイルス感染症が指宿の病院で入院患者や職員に発生し,33人陽性のクラスターになったというニュースを聞きながら,この通信を書いています。感染者が少しずつ増えてきて,自分の周囲にもその影が忍び寄ってきているのを感じます。だれが感染者か判らない今,不安が大きくなり,社会全体が萎縮し,経済活動もダウン寸前です。多くの人が不安や悩みを抱えながら生活していますので,気持ちが沈んでしまったり,うつ状態になってしまったりしやすいです。幸いにも,若い人は新型コロナウイルスにかかっても,それほど深刻な結末にはなりにくいようです。あまり心配せずに,仕事を頑張って,時々息抜きもして,心の安定を計りましょう。ただ,周囲には高齢者や基礎疾患をもつ人も多いと思われますので,感染予防の対策だけは怠らないようにしましょう。マスクや手指の消毒などの基本を守り,多人数の会食を避けることです。加えて,不幸にして感染してしまった人に対する偏見や差別をしないようにしましょう。この病気にかかりたくないと思うのは,全ての人の共通の願いです。お互いに助け合うという気持ちを忘れずにいてください。もし,心が窮屈になってきたら,休みの日に霧島へ行って,野山を歩き回るだけでもリフレッシュできます。どうすれば,密にならずに,リフレッシュできるのか,いろいろ考えてみましょう。

戦後75年

 久しぶりにお盆を自宅で過ごすことになりました。終戦の日に,戦没者追悼式の様子を見ながら考えたことは,戦争で多くの命が失われたことと,戦後75年という長い時間が経って,戦争を体験した人が少なくなってきましたが,戦争の傷跡がまだ癒えていないという現実があります。戦争を起こした日本の責任や賠償を求め,韓国は慰安婦問題や元徴用工問題を取り上げてきました。日本側は,戦争の賠償問題は解決済みとして,新たな賠償を拒否しました。この溝が両国の関係をどんどん冷えさせています。お隣と喧嘩した時,どうすれば仲直りができますか?相手の意見をよく聞いて,自分の誠意をみせて,お互いに納得できるまで話し合うことです。喧嘩別れしたまま放っておいても,隣同士という環境はずっと続きます。気まずいままで生活するのは,精神的にもよくありません。かといって「75年も経ったのだから,もういいでしょう」とは日本側から言えません。植民地支配や差別待遇を受けてきた韓国側から,日本との良い隣人関係を作って行きましょうという方向性が示されるまでは,相手の意見や気持ちをよく聞きながら,じっと待つしかないと思います。戦争を知らない人がほとんどを占める現代でも,国の犯した罪はなかなか消えないのだと思います。

 中国に対しても,難しい関係が続いています。尖閣諸島や台湾の問題など,一筋縄ではいきません。日本は戦後アメリカの占領下に置かれて,民主主義を植え付けられてきましたが,中国は共産主義の革命を経て,共産党1党独裁の政治で国をまとめてきました。個人の権利は国が統制し,香港の問題でも民主主義を求める人たちを力で押さえつけようとしています。権力と武力を国が支配し,国民をコントロールしながら,アメリカと並ぶ強国になってきました。今の日本では,そんな国のあり方は賛同されませんが,中国の人は共産党が国を指導してきたおかげで今の繁栄があると考えています。この体制もまだしばらくは続きます。そんな両国間でできることは何でしょう?国同士の対立を避けながら,経済発展のために協力することが一番なのだと思います。日本での生活に中国の人が憧れるくらいに日本自体が経済や文化の面で発展し,ゆとりある生活ができるような国になることです。そんな日本の姿,方向性を示してくれるのが政府だと思うのですが,もっと芯の通った国政をしてもらいたいです。