サンタ通信No249(04)表 R2.04.18発行

新型コロナ対策はどうなるのか?

 全国を対象に,新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が出されました。鹿児島県は県内での発生はなく,他県から入って来た感染者が4名いるだけですが,ゴールデンウィークを前に,人々の移動で流行が拡大する可能性があり,全国に宣言を出すことで,感染を抑え込みたいのだと思います。これまで,東京や大阪といった大都市は流行が収まらず,収容する病院のベッドが足りなくなり,軽症者や無症状感染者は自宅やホテルで経過を看ることになりました。特別な治療法がない現時点では,感染者は隔離するだけです。経過をみながら,症状が進んでくれば入院が必要になります。ただ,入院治療する病院は,マスクやフェイスガード,防護服などが足りず,院内感染予防にほころびが出ています。国が先頭になって取り組むのは,医療体制を維持することだと思います。大阪では防護服が圧倒的に足りなくなり,ポリ袋で代用品を作ったり,府民から雨合羽の提供を求めたりしました。小児科については,こどもの重症者が少ないために,それほど大変な状況ではありませんが,呼吸器疾患が重症化しやすい未熟児などは注意が必要だと思います。また,保育園での集団感染など,子ども達は3密になりやすいため,発熱や咳などの症状をしっかり把握しなければなりません。私も外来では,コロナの患者さんかもしれないと常に考えながら,慎重に診察しています。特にのどを見る時や検査の時(溶連菌・アデノウイルス・RSウイルスなどの迅速検査)は危険が伴います。もし,コロナの患者だったら,完全防護(手袋・ゴーグル・マスク・ガウンを装着)した状態でないと検査ができません。もし,完全防御せずに検査したら,運良く感染しなかったとしても,濃厚接触者と判定され,2週間は病院を閉めなければなりません。このため,のどや鼻の検査をすべて中止した病院もあります。さらには診察なしで,症状だけ電話で聞いて,診断が可能ならば,薬を処方しても良いと国が許可しました。ただ,小児科の患者さんは急変することもあり,実際に状態を診なければ安心できない場合も多いです。電話だけで薬を出すのはとても難しい印象です。

 さて,最近1週間(4月6日〜4月12日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,感染性胃腸炎で週5人でした。次いで,突発性発疹2人,溶連菌感染症1人,水痘1人,伝染性紅斑1人でした。感染症全般が少ない状況ですが,その中でもウイルス性胃腸炎が時々みられます。ノロウイルスやロタウイルスなどは感染力が強いので,家族に嘔吐や下痢の人がいれば,手洗いをかなり厳密にしましょう。吐き気は半日くらいで治まりますので,それまではごく少量ずつ水分補給をしながら,吐き気がなくなったらスープの上澄みなどを何回かにわけて飲ませてください。下痢は数日で治る人もいれば,数週間かかる人もいます。下痢が続いている間は,消化の良い食事を心がけてください。下痢止めの薬はあまり使いません。腸の動きを整えるだけの整腸剤くらいで様子をみます。

 

4月28日〜5月1日は休診となります。

5月5日〜6日は祝日ですが診療します。

5月10日(日)は当番医を担当します。救急患者が優先となります。

サンタ通信No249(04)裏 R2.04.18発行

おたふくかぜワクチンの助成が始まります

 おたふくかぜワクチンについて,鹿児島市は今年7月1日から1回あたり 4,000円の助成をすることが決まりました。当院での接種料金は 6,000円ですので,助成額 4,000円ということは,自己負担 2,000円で接種できることになります。助成を受けられる条件は,鹿児島市に住民登録があり,1歳以上2歳未満の人,5歳以上7歳未満で小学校就学前の1年間の人です。ただし,今年度は令和2年4月2日以降に2歳になった人(平成30年4月2日から平成31年4月1日生まれ)も対象になります。市の方から案内ハガキを6月末に送付する予定とのことです。問診票は医療機関に届くようですので,かかりつけの小児科に申し込む形になります。麻疹・風疹のワクチンと同じ接種年齢になりますので,同時に受けられてもよいと思います。

 おたふくかぜにかかると治療方法はなく,発熱と耳下腺の腫れと痛みが主な症状で,1週間くらいで軽快します。軽くかかることができれば,生涯免疫ができますので,一番望ましいことなのですが,時々合併症を起こすため,予防接種での予防をしながら,もしかかっても重症にならないようにします。合併症で多いのは無菌性髄膜炎です。おたふくかぜにかかった人の1〜10%に発症します。高熱と頭痛,嘔吐がみられます。精巣炎や卵巣炎,膵炎が数%の確率で起こり,思春期以降の患者だと30%くらいに精巣炎が起こります。また,感音性難聴も1000人に1人くらいの割りでみられ,ほとんどの例は片側ですが,難聴はずっと残ってしまいます。

 これらの合併症を防ぐために,おたふくかぜの予防接種が早く定期接種化されると良いのですが,鹿児島市はそれに先駆けて接種料金の助成を決めました。皆様,積極的に受けましょう。

新型コロナウイルスに打ち勝つには

 子どもは新型コロナウイルス感染症にはかかりにくいし,かかっても重症化しにくいと言われています。6歳頃までにほとんどの子どもが新型ではない通常のコロナウイルスに感染します。冬になると,咳や鼻水が出る一般的なカゼ症状がよくみられますが,その約1割くらいがコロナウイルスによるものです。ありふれたカゼのウイルスであるコロナウイルスが,突然変異で病原性を高めたものが,新型コロナウイルスです。ウイルスの形が変わると,人間の免疫機能はうまく対応できません。そのため,体が反撃するまでに時間がかかり,ウイルスが全身に拡がってしまうのです。子どもは,通常のコロナウイルスにかかったばかりですし,いろいろな感染症に次から次へとかかる時期ですので,免疫能力が高まっていて,新型コロナウイルスにもしっかり対応できているのかなと私は思います。

 新型コロナウイルスに対しては,まだ特効薬がなく,ワクチンも使えるようになるまでもう少し時間がかかりそうです。それまでは,各自が感染を拡げない行動をすべきですし,免疫能力を高めるためには,体調を普段から整えておく必要があります。家から出なければ,感染のリスクは減りますが,外を散歩したり,運動をしたりすることも体調を整えるためには大事なことです。感染するリスクを減らす努力をしながら,なるべく普通の生活をしていくことが,今は求められています。このコロナウイルスとの戦いは長くなりそうです。全世界に拡がってしまったため,すべての国が抑え込まない限りは,流行がだらだらと続きます。現代は多くの人が国境を越えて動き回ります。この病気の症状が,高熱が続き,呼吸困難などが必ず出るのであれば,患者かどうかはすぐ判りますし,流行を抑え込みやすいのですが,ちょっとしたカゼ程度の症状ですむ人も多く,その人たちが自分は感染していると気づかないままに,他の人へ感染を広げてしまうために,抑え込むのが難しいのです。そのため,うまく終息できたとしても,感染予防の咳エチケットやしっかりとした手洗いなどは,これからも続けた方が良いでしょう。せっかく身についた習慣ですので。