サンタ通信No244(11)表 R1.11.18発行

インフルエンザ流行中

 11月に3連休があったので,フィリピンのマニラに行ってきました。セブ島は何回も行ったことがありますが,首都のマニラは初めてです。繁華街は発展が著しく,あちこちで工事をしています。ホテルから4時間くらい歩き回りましたが,繁華街から少し離れるとスラム街のような場所もたくさんありました。路上生活の人や歩道に寝転がっている人もいて,昼間でも歩いて回るのはちょっと怖い感じで,治安がよくないのを実感できました。

 さて,最近1週間(11月6日〜11月12日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,インフルエンザで週9人でした。次いで感染性胃腸炎3人,溶連菌感染症2人,RSウイルス感染症1人,水痘1人でした。インフルエンザの流行が,規模は小さいですが,散発的に週10人前後で持続しています。全員A型でした。治療については,乳幼児ではタミフルドライシロップの内服を1日2回5日間服用,小学生以上だとイナビルを1回吸入するか,ゾフルーザ錠剤を1回内服する場合が多いです。ゾフルーザは1回服用するだけで治療が終わるため,利便性が高く,患者さんからの希望が多い薬です。これまでのインフルエンザ治療薬は,細胞内で増殖したウイルスが細胞外に出て行くのを防ぎます。一方,ゾフルーザは細胞内でウイルス自体の増殖を抑えますので,より高い効果が期待できます。臨床試験では,体内からインフルエンザウイルスが排出されるまでの時間が,タミフルで72時間かかり,ゾフルーザは24時間と非常に早くウイルスがいなくなります。ただ,薬に対する抵抗性をもつウイルスを作りやすいと言われており,特に12歳未満の子どもが服用すると,抵抗性ウイルスの発生が高まると報告されています。このため,感染症学会は小児に対して慎重な投与を提言しています。これは,ゾフルーザが効きにくい耐性ウイルスが増えることを考慮して,投与を判断しましょうという指針です。耐性ウイルスがどれくらい悪い作用をするのかや,人から人への感染が起こりやすいのかなどのデータは少なく,今は明らかな判断はできないものの,日本でインフルエンザの時に使う薬の半分近くをゾフルーザが占める状況なので,何も考えずにゾフルーザを使い続けると,将来ゾフルーザが効かなくなってしまう可能性があります。小児科学会の見解としては,小児においても有用であると考えられますが,幅広く推奨を行うだけのデータ集積がない状況としています。また,治療中にインフルエンザウイルスの耐性ウイルスが出現することを挙げ,「12歳未満の小児に対するゾフルーザの積極的な投与を推奨しない」とし,「現時点では同薬に対する使用制限は設けないが,使用に当たっては耐性ウイルスの出現や伝播を注意深く観察する必要があると考える」としています。また,このゾフルーザは顆粒の製剤が完成しており,小児に対してすぐに使えそうな状況なのですが,この耐性ウイルスの問題点で,国の認可が遅れているようです。

 

 12月30日(月)午後から1月7日(水)まで年末年始のお休みになります。

 1月12日(日)は学会のため,休診となります。代わりに1月14日(火)は診療致します。

サンタ通信No244(11)裏 R1.11.18発行

ロタウイルスワクチンが来年10月から定期接種に

 ロタウイルスのワクチン接種は現在有料で行われています。鹿児島市では助成制度があり,当院の場合は,自己負担額は1価のロタリックスが7,000円×2回=14,000円,5価のロタテックが5,000円×3回=15,000円で受けられます。このワクチンが来年10月から定期接種になることが決まり,全員無料で受けられるようになりました。対象となる子どもは,令和2年8月生まれ以降の乳児です。2種類のワクチンは,効果も安全性も大きな差はないということで,両方のワクチンが定期接種として認められます。ただ,同じワクチンを使うことを原則としていますが,里帰り出産などで接種する地域が異なる場合,同じものを受けられないことも考えられます。その場合は,両方のワクチンの互換性は保たれていて,異なる製剤を組み合わせて接種した場合の安全性や有効性は確認されています。詳細については,来年に国の方から発表される予定です。

 定期接種の対象者は,ロタリックスについては生後6週から生後24週までで,ロタテックについては生後6週から生後32週までです。標準的な接種期間としては,初回接種は生後2月から生後14週6日までに受けます。ワクチンの接種方法は,ロタリックスについては4週間以上の間隔をおいて2回経口接種し,ロタテックについては4週間以上の間隔をおいて3回経口接種が必要です。経口接種ですので,赤ちゃんが吐き出してしまうことがあります。現在,ロタリックスについては,吐き出してしまった時には再投与できますが,ロタテックは臨床試験で検討がなく,再投与なしで,それ以外の2回が服用できていれば効果は保たれるとされています。定期接種になった時の再投与をどうするかは,国の方で今後検討して決めるようです。

 このワクチンの副作用として,接種後に腸重積の発生確率が高くなるという報告があります。接種しても接種しなくても,発生確率に差がなかったという報告もありますが,接種後には注意が必要です。接種後に嘔吐や不機嫌,血便の症状があれば,すぐに医療機関を受診するようにしましょう。

子どもに対する虐待

 11月は児童虐待防止推進月間です。自分の周囲に虐待がないか,考えてみましょう。虐待の定義は,殴る・蹴る・投げ落とす・激しく揺さぶる・やけどを負わせる・溺れさせる・首を絞めるなどの身体的虐待は,誰でもよく分かります。しかし,心理的な虐待として,言葉による脅し・無視・兄弟間での差別的な扱い・子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティックバイオレンス)などの行為は,日常生活の中でたまにみられることがあります。兄弟を比較して劣等感を感じさせたりすれば虐待になります。子どもに対して,それぞれの特性や良いところをしっかり褒めて,できなかったことについては,温かい心で励ましてあげることです。虐待している親は,しつけのためにしていた行為だと言い張りますが,子どもが恐怖を感じるような叱り方はしつけではありません。ましては,食事を与えなかったり,衰弱しているのに病院に連れて行かなかったりするのは,ネグレクトという虐待になります。子どもの泣き声がよくあって気になるとか,あの子のアザが気になるなど,自分の近くに虐待を思わせる事例があれば,電話での相談窓口があります。全国共通3桁ダイヤル189(いちはやく)で居住地の児童相談所につながり,24時間,365日,専門家が相談にのってくれます。