サンタ通信No237(04)表 H31.04.18発行

サンタは20周年を迎えました

 桜が満開になったと思ったら,もうツツジが咲き誇っています。慈眼寺公園のネモフィラも綺麗です。花の移り変わりに象徴されるように,この時期は時の流れが速く感じられます。さらに,卒業や入学,就職など,環境が大きく変わる人が多く,出会いと別れが集中する時期です。私も医者になってすぐは,大学と関連病院を1年毎に行き来していましたので,その度に3月に送別会,4月に歓迎会を開いてもらい,職場で新たな人間関係ができました。大学病院を8年で退局し,次の市立病院では11年働きましたので,自分の移動はなかったものの,研修医や同僚の歓送迎会を甲突川の桜並木で毎年開いたものでした。その後,このサンタこどもクリニックを開業したのが平成11年4月1日でしたので,ちょうど満20年になりました。当院は開業当初から日曜診療を続けてきましたが,当時,どこの小児科も日曜日に診療しているところはなく,当番医1軒だけが急患を診ていました。病気はいつ発病するか分からないのに,日曜日はほとんどの病院が休診していました。日曜日に診療してくれる病院があれば,お子さんのいるご家庭では安心なのにと思っていましたので,自分が開業した時に,まず最初に日曜診療を取り入れました。夜も8時まで病院が開いていると,共働きの家庭では助かるだろうと,診療時間を朝8時半から夜8時までにしていました。さすがに60歳代半ばになってきましたので,診療時間を短くして,週休2日を取らせてもらっていますが,日曜診療だけは続けてきました。これからも皆様に喜ばれるような診療をしていきたいと考えています。5月から元号が平成から令和に変わりますが,新しい時代でもサンタは頑張りたいと思っています。これからもよろしくお願い致します。

 さて,最近1週間(4月8日〜4月14日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは感染性胃腸炎で週8人でした。次いで,突発性発疹2人,溶連菌感染症1人,インフルエンザ1人でした。新学期が始まり,今流行している感染症も少ないので,子ども達は元気に登校・登園できているのではと思います。感染性胃腸炎(嘔吐下痢症)が少しみられますが,点滴をしなくても吐き気止めの座薬で治療ができる患者さんがほとんどです。下痢も1週間くらいで良くなる人が多いので,あまり重症の患者さんはいらっしゃいません。ロタウイルスのワクチンを多くの子ども達が受けるようになって,感染性胃腸炎の患者数が少なくなり,軽症の患者さんが多いので,その効果を実感しています。現在流行しているのは,ロタウイルスやノロウイルスのウイルス性胃腸炎ですが,1人だけが鶏刺しによる細菌性胃腸炎でした。小学生になって初めて食べ,ほんの一口しか食べていないのに発症したようです。鹿児島県以外の所で,鶏肉を刺身で食べることはほとんどありません。鹿児島県は鶏肉を生で食べるための独自の厳しい基準を設けています。手や器具の洗浄・消毒,10℃以下の冷却,生食は食中毒のリスクがあることの説明などを求めています。

 溶連菌感染症については,春から初夏がピークですが,今年の春はそれほど大きな流行になっていません。週に数人程度の流行ですが,溶連菌は感染力が強い細菌ですので,周囲に患者さんがいる時は注意が必要です。また,RSウイルスやヒトメタニューモウイルスなど,咳込みが強い気管支炎や肺炎の患者さんを時々診ます。ウイルスですから抗生剤は効かず,咳止めを使いながら治まるのを待つのですが,赤ちゃんに感染すると呼吸状態が悪くなりますので,新生児や乳児は要警戒です。

 

4月19日(金)〜4月20日(土)は学会のため休診です。

4月25日(木)午後〜5月4日(土)まで休診となります。

4月23日(火)は診療します。5月3日(金)は当番医です。5月5〜7日は診療します。

5月11日(土)は学会のため,17:00で診療を終了します。

サンタ通信No237(04)裏 H31.04.18発行

子ども虐待と脳科学

 先日,福井大学の友田明美教授の講演を聞きました。友田先生は,熊本大学から鹿児島市立病院に研修にきたことがあり,私も一緒に仕事をしたことがあります。友田先生は,その後,ハーバード大学精神科で虐待の行為により脳が傷つけられるということを研究して,ほめる子育て,悩む養育者への寄り添いが大事だと気付き,全国で子育てについて講演活動を行っています。NHKのテレビで,プロフェッショナル仕事の流儀に昨年秋に登場しているのを見て,仕事をそこまでがんばっているのかと驚きました。虐待というと,子どもを叩く身体的な虐待を考えますが,それよりも言葉による虐待(子どもの前で怒鳴ったり,暴言を浴びせるなど)の方が,子どもの脳に深刻な影響を与えます。子どもの目の前でなくても,家の中で大声で夫婦喧嘩をすれば,子どもは情緒不安を起こし,人と関わること自体を恐れるようになってしまいます。体罰もしつけの意味で行うのは仕方がないと考える日本人がまだ多いですが,今は体罰は百害あって一利なしとされています。子どもの発達には愛着が非常に大事なのです。笑顔で子どもと接することです。愛着の方法は,目と目で見つめ合う・手と手で触れ合う・微笑むことです。安定した愛着を得られると,子どもはどんどん発達していきます。反対に子どもにしてはいけないワースト5は次の通りです。

1位:言葉の暴力(叱りつける,非難する,はやしたてる,侮辱するなど)

2位:ながら育児(スマホやタブレットで画像やゲームをさせると,おとなしくしてくれますが,それは大人の都合です。コミュニケーション能力が低下したり,感情のコントロール能力が低下します)

3位:他の子と比べる(兄弟や他の子と比べると,自尊心が低下し,喜びを感じる能力が低下します)

4位:子どもを支配する(親の言うことは絶対で,常に従わなくてはいけないという主従関係は,子どもにとって大きなストレスです。子どもは常に親の顔色をうかがい,嘘をつくようになります)

5位:子どもの前で夫婦げんか(視覚的,聴覚的に子どもの記憶に残り,相手の表情が分からなくなったり,対人関係に支障をきたします。)

子育ての基本を再確認できた意義深い講演でした。

乳幼児・園児とゲーム・スマホ

 友田先生の講演会の後に,鹿児島市内で開業されている増田クリニックの増田先生から,子どものゲーム・スマホの実態について講演がありました。ネットゲームやスマホに依存傾向のある子どもの割合が6歳までの幼児で10%くらいいるとのことでした。依存傾向というのは,①ゲーム・スマホに夢中になる。②止めさせようとするとイライラする。③この1年でゲーム・スマホをする時間が増えている。④止めさせようとしても止められない。⑤ゲーム・スマホ以外のことに興味がない。この5項目中4項目に当てはまれば依存傾向と判断しています。小学生,中学生,高校生でも10〜20%に依存傾向がみられます。

 海外でもスマホ中毒に対する対応が始まっています。フランスでは昨年から小学校,中学校でのスマホ持ち込みが禁止されました。3〜15歳が対象です。イギリスではスマホを使えないことに恐怖を感じる子どもが66%もいて,常時つながり続けるため2台以上のスマホを携帯している人が41%いるとのことでした。

 私もよく経験しますが,電車の中で半数以上の人がスマホに向き合っています。音楽を聴いている人もいれば,ゲームをしている人,漫画を見ている人など様々ですが,友達間の話もLINEを通して行い,別れる時だけ挨拶しているようです。増田先生は,2歳から依存傾向が強くなっていることから,子どもに対してスマホやゲームよりも愛着形成を大事にすることを挙げています。また,脳の発達の視点から5歳まではゲーム・スマホをさせない。さらに,学童期以降は30〜60分に制限し,平日はさせないのがベストと話していました。家庭では,家族団欒の時間を作り,子どもとしっかり向き合い,話を聞いてあげることが大事で,親が子どもの前でゲームやスマホに熱中しないことを心がけてくださいという内容でした。

 世の中が便利になればなるほど,その影響がどんなところに出てくるのかをよく考えておかなくてはなりません。私の時代は携帯電話がない時代でしたので,子どもがゲーム・スマホの依存症になることなど想像もできなかったのですが,それでもテレビやビデオを子どもに見せ過ぎるとよくないと言われていました。一方的に映像を見ているだけでは,コミュニケーション能力は低下します。それがスマホに代わり,身近なところにあるため,泣き出した赤ちゃんにスマホのゲームを見せるとそれに注目して赤ちゃんは大人しくしてくれます。中には2歳くらいから指で遊ぶようになる子どももいます。しかし,それは大人にとって都合が良いことで,本当に子どもにとって良いことなのか,いつも考えながら子どもと接する必要があります。