サンタ通信No243(10)表 R1.10.18発行

インフルエンザに注意

 ラグビーのW杯で日本が予選リーグを突破して8強に入り,日本中が盛り上がっています。ラグビーは高校生が花園をめざしたり,社会人のリーグ戦があったりはしていますが,体格で劣る日本のチームは,W杯ではなかなか勝つことができませんでした。前回大会で強豪国の南アフリカに勝てた時に,世紀の番狂わせと評されました。日本チームに外国人が多く含まれています。ラグビーでは国籍は日本でなくても,3年以上日本に居住していれば,日本のメンバーになれるのです。それでは待遇を良くして,他の国の有力選手を獲得すれば強いチームができそうですが,それを防ぐルールがあります。どこかの国のメンバーに1回でもなっていれば,他の国のメンバーにはなれないという規則があります。そのため,日本の代表メンバーになった外国人は,日本のために必死で戦います。チームワークのとれた日本は感動を呼ぶ試合をしてくれました。決勝トーナメントは,さすがに強豪ぞろいなので勝つのは難しそうですが,素晴らしい試合を期待したいですね。

 さて,最近1週間(10月7日〜10月13日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのはインフルエンザで,週11人でした。次いで,RSウイルス感染症5人,溶連菌感染症5人,手足口病4人,ヘルパンギーナ4人,伝染性紅斑4人,感染性胃腸炎1人,咽頭結膜熱1人,流行性耳下腺炎1人でした。インフルエンザの流行が本格的に始まりました。今年は8〜9月にインフルエンザの散発的な患者発生がみられていましたが,10月に入ると週10人程度の患者数になってきましたので,この流行は一時的なものではなく,大きな流行になっています。例年なら12月くらいから流行が始まりますが,今年はちょっと早い感じがします。インフルエンザは日本のような温帯地域では冬に大きな流行になり,冬のない熱帯地域では一年中流行がみられ,雨季に多い傾向になります。沖縄は亜熱帯にあるため,冬ばかりでなく夏にもインフルエンザが発生します。今年の9月中旬に沖縄では小児科1軒当たり週80人にもなり,現在でも週30人の警報レベルが続いています。鹿児島ではそこまでの流行はないものの,予防接種が始まったばかりのこの時期に,このような流行が発生するとは驚きです。温暖化の影響で,鹿児島も沖縄のように亜熱帯になりつつあるのかもしれませんが,上海や香港などの航空路が多い鹿児島には,インフルエンザが持ち込まれる可能性が高いのかもしれません。

 インフルエンザ以外でも,RSウイルス感染症や溶連菌感染症など流行していて,当院の外来が混んできました。インフルエンザの予防接種も一番多くなる時期のため,お待たせする時間が長くなることもあります。予約なしで受診される方もいらっしゃいますので,待ち時間を少なくするために,なるべく予約して受診されるようにお願いします。

 

 10月27日(日)は当番医を担当します。救急患者優先になります。

 12月30日(月)午後から1月7日(水)まで年末年始のお休みになります。

サンタ通信No243(10)裏 R1.10.18発行

インフルエンザの薬は必要?

 今流行しているのは,Aソ連型から波及した新型インフルエンザがほとんどです。予防接種を予約していたけれど,かかってしまったので,ワクチンはしなくてもいいですか?という質問をよく受けます。確かにインフルエンザにかかるとその型には免疫ができ,しばらくはかからなくなります。しかし,インフルエンザはAソ連型,A香港型,B型の3種類があり,かかった型以外のインフルエンザに罹患してしまう危険性があります。そのため,インフルエンザにかかった後でも,予防接種を受けることは有効なのです。さらに,抗ウイルス薬で早期に治療すると,発熱期間が1日で済んだりします。このように軽く済んだインフルエンザの場合は,免疫も十分できず,同じ型のインフルエンザにかかってしまうこともあります。人の体はインフルエンザに感染すると,その病原体に対して免疫ができ,次から同じ病原体が入ってきた時に,すぐに攻撃してくれて,病気にかからないか,かかっても軽く済むようにする働きがあります。しかし,今のインフルエンザ治療薬を使って,発熱期間が1~2日で済めば免疫も少ししかできません。そのような免疫の状態であれば,毎年のようにインフルエンザにかかる可能性もあるのです。もし,治療せずに4~5日間高熱が続けば,免疫は十分にできて,数年はインフルエンザにかからずに済むかもしれません。

 日本人は,病気を治すために薬が絶対に必要だと考えている人が多いです。沖縄のニュースで9月8日の日曜日に那覇市立病院にインフルエンザの患者120人が殺到し,5~6時間待ちだったと出ていました。20年前は迅速検査も治療薬もなかったので,インフルエンザにかかると自然治癒を待つだけでした。肺炎などの合併症を起こせば入院治療になりましたが,ほとんどの患者さんは問題なく自然に治癒していました。インフルエンザの薬は,小さなお子さんや心臓病などの基礎疾患のある方,高齢者などには抗ウイルス薬が必要ですが,元々元気な小学生や中学生くらいは自然治癒に任せるのも一つの治療方法です。熱が出ている子どもにとって,病院の待合室で長い時間待たせることは,かなりの負担になります。例えば,受診が早すぎて検査で陽性にならなかったからと,夕方に病院を再び受診されて,その時点でもまだ陰性だったので,ついには夜中に夜間急病センターに行き,ようやく陽性が出て,薬を処方してもらった方もいます。1日3回も高熱の子どもを外出させるのは,かなりの負担になります。自宅で水分補給をしっかりさせながら,翌日にかかりつけ医を受診させてもよいのです。早く薬をもらって病気を軽く済ませたいと願うのは,親として当然の思いです。しかし,その後の免疫を考えると,薬を使わずに経過をみて,少し発熱期間が長くなったとしても,インフルエンザに対する免疫が強くなれば,決して損にはならないと私は考えます。

 小児科学会もインフルエンザの治療については,幼児や基礎疾患があり,インフルエンザの重症化リスクが高い患者や呼吸器症状が強い患者には,タミフルなどインフルエンザの薬の投与が推奨されるとしており,一方で,多くは自然軽快する疾患であるため,抗インフルエンザ薬の投与は必須ではないという見解を出しています。