サンタ通信No242(09)表 R1.09.18発行

RSウイルス感染症流行中

 北海道の東の果てにある根室市を旅しました。東京から1日1便だけ飛行機が中標津空港に飛んでいるので,鹿児島から東京,東京から中標津と飛行機を乗り継ぎます。中標津空港からバスで2時間で根室市に着きます。根室の東端にある納沙布岬は日本の最東端の場所で,ここから北方領土の歯舞群島が肉眼ですぐ近くに見えます。根室のホテルの窓からは国後島も見えます。本当に近い場所にありました。戦争によりロシアの実効支配下におかれた北方領土は,簡単には日本へ返還とはならないようです。日本が自国の領土だと主張するだけではなく,ロシアと友好関係を作り,お互いに助け合うことを続けていけば,きっとロシアの人々も領土問題を解決するためにはどうすればよいのか,話し合いに応じてくれるのではないでしょうか。助け合いができる関係は,信頼を生みます。どこの国とも困った時はお互い様という気持ちで,接することが大事です。

 さて,最近1週間(9月2日〜9月8日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは手足口病で,週11人でした。次いで,RSウイルス感染症5人,ヘルパンギーナ5人,伝染性紅斑3人,感染性胃腸炎2人,溶連菌感染症1人でした。夏休みに人の移動が多かったせいか,夏カゼの流行が再燃してきたようです。手足口病やヘルパンギーナが目立っています。時期的にはそろそろ終息する時期ですので,それほど心配しなくてよさそうですが,あと1か月くらいは流行に注意しておきましょう。手足口病の症状は,よくみられるタイプで,のどの奥に口内炎が数カ所みられ,手足には水泡が数個みられます。38℃くらいの発熱が1〜2日間出現することが多いです。ヘルパンギーナは38〜39℃の発熱とのどの痛みを訴え,受診されます。のどの奥に赤い水疱や口内炎を確認し,ヘルパンギーナの診断をしています。手足口病もヘルパンギーナも特効薬はなく,自然経過で良くなるのを待ちます。

 RSウイルス感染症は流行が続いていて,毎日のように診断しています。とくに新生児や生後2,3か月の幼若乳児の患者さんも結構いて,ゼイゼイが強くなったり,哺乳量が低下するような時は,入院を勧めています。特に新生児や未熟児では無呼吸発作を起こし,急に呼吸を止めるために,顔色が悪くなることがあり,早めに入院治療を勧めています。入院設備をもつ小児科の病院は,この時期はRSウイルス感染症の患者さんが常時数人くらいは入院しているのではないかと思われます。入院しても,特効薬があるわけではありませんが,ゼイゼイに対して,吸入や酸素投与しながら,哺乳量をみていきます。体の中の酸素飽和度を計り,呼吸状態が悪い時は人工呼吸器を使うこともあります。死亡率は1〜3%と言われていますので,3か月以内の赤ちゃんで,咳や鼻水などのカゼの症状がみられる時は,RSウイルスの検査をするように心がけています。

 

9月23日(月)〜26日(木)は休診となります。代わりに9月20日(金)と27日(金)は診療致します。

10月27日(日)は当番医を担当します。救急患者優先になります。

サンタ通信No242(09)裏 R1.09.18発行

インフルエンザワクチン予約開始

 今年もインフルエンザワクチン接種を10月から開始します。予約はすでに始まっています。お早めにお申し込みください。接種料金は去年と同じ1回3,000円(1回目,2回目ともに同じ料金)です。接種回数は生後6か月から13歳未満は2回接種が必要で,接種間隔は2〜4週間です。できるだけ4週間あける方が効果は高いとされています。13歳以上は原則1回接種です。ワクチンの供給量が今年もぎりぎりとのことで,厚生労働省から13歳以上の人への1回接種を守るように通達がありました。接種量は,3歳以上が0.5ml,生後6か月から3歳未満ではその半分量の0.25mlを接種します。ワクチンの副反応としては,注射部位の赤みや腫れが時々みられますが,無処置で数日以内に軽快します。

 ワクチンの効果については,ワクチン接種したにもかかわらず,インフルエンザにかかったから,ワクチンが効かなかったと考える人がいます。予防効果は100%ではありません。インフルエンザワクチンは予防に60%効果があると言われています。これは60%の人がかからないという意味ではなく,予防接種を受けずに発病した人と予防接種を受けて発病した人の差を比べて,患者数を60%減らしてくれたという意味です。子どもでは大人よりも若干効果が低くなります。また,子どもの中でも,年長者と比べると年少者の方が効果は弱くなります。抗体の上がり方が弱いからですが,それでもワクチンを受けた人と受けなかった人とのインフルエンザ罹患率には差が出ます。インフルエンザワクチンは発症の予防にも,軽症化にも役立ちます。「ワクチンをしたのにかかったから,今年はもう受けない」と考えるのではなく,「ワクチンをしていたおかげで,これくらいですんだ」と考えてください。

日本の財政問題を考える

 日本の財政の問題は,収入と支出のアンバランスです。自分の家の家計に例えると,月収手取り30万円なのに,支出は給料を上回る38万円の生活費がかかっています。過去の借金の利息も含めると,毎月17万円の新しい借金をしている状況です。この借金は未来世代の大きな負の遺産です。ローン残高は5,379万円にも上っていて,毎月のローンを返すために,さらに借金を重ねています。国の財政は国民に直接影響を及ぼすことが少なく,財政が苦しいと知ってはいても,政治家に任せきりの人が多いのではないでしょうか。政治家も国民に負担を強いる政策にしてしまうと,選挙で落選してしまうので,なるべく国民受けする政策だけを訴え続けています。

 国は,経済が立ち直り,景気が良くなれば,借金を減らしていけるはずと考えていますが,高齢化で社会保障費はこれからどんどん膨らんでいく一方で,それを支えていく若い世代は,少子化に歯止めがかからず,国の財政上の将来の見通しは暗いと思われます。現在,破綻に近い家計の私たちはどうすれば良いのでしょうか。日本は世界の中でも治安が良く,自然が身近にあり,外国の人たちが訪日してみたいと思わせる観光資源は豊かです。観光立国を目指すのも一つの方策です。また,海外の若い人が日本で働いて稼ぎたいと思うような社会制度を作れば,働く世代が増えて,税収も増えることになります。この国の多角的な収入増を目指すことは,これから重要になります。一方で,支出を抑えることもとても大事です。増え続ける医療費のうち,薬局で同じ成分の薬が買える,湿布薬や花粉症の薬などを,病院で処方してもらわず,薬局で買うようにしたら,医療費が少しでも低く抑えられると,健康保険の組合は国に提案しています。医師会は,病気の治療に悪影響が出るとして,反対の立場をとっていますが,健康保険制度を維持していくためには,国民が痛みを伴う改革も必要なのではと考えます。近い将来,インフルエンザの治療でも,抗ウイルス薬が本当に必要な人だけに保険を認め,元気な人は自然に治るのを待ちましょうと国が言い始めるかもしれないですね。