サンタ通信No234(01)表 H31.01.18発行

インフルエンザが急増中

 明けまして,おめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。昨年末に当番医を担当し,その時にインフルエンザを20数名診断しました。いつもは1月になってから流行が拡大するのですが,今シーズンは流行の始まりも早く,患者数も多い印象がありました。さらに1月中旬の当番医の先生からインフルエンザが130人だったとの報告がありました。急激に増えていて,このペースだと1月末にはピークを迎えそうな勢いです。鹿児島県も17日にインフルエンザ流行発生警報を発令しました。これから1か月は無理をせずに,体力温存しながら乗り切るしかなさそうです。

 さて,最近1週間(1月6日〜1月12日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのはインフルエンザで週53人でした。次いで,溶連菌感染症6人,水痘3人,突発性発疹3人,RSウイルス感染症2人,伝染性紅斑1人,感染性胃腸炎1人,ヘルパンギーナ1人でした。インフルエンザの患者さんは,すべてA型でした。例年,流行がピークになれば,患者数は週100人以上になりますので,今はピークの少し前だと感じます。そのピークを超えた頃から,B型のインフルエンザが出てきます。A型にかかったからと安心せずに,感染予防のために,手洗いやうがいなどを心がけましょう。今シーズンの治療方法はゾフルーザの錠剤を使う,タミフルの粉薬を使う,イナビルを吸入するなど,選択肢が多くなった分,説明にも時間がかかります。子どもの場合は,錠剤が内服できなかったり,粉薬を嫌がったり,吸入をうまく吸えなかったりとしますので,その子に一番良い治療方法は何なのか,考えておくことも大事ですね。インフルエンザの検査でなかなか陽性に出なかった人は,診断が遅くなって,薬を使うタイミングを逃すこともあります。タミフルなどの抗ウイルス剤を使わずに,経過をみるというのも選択肢の一つです。私はなるべく患者さんの希望に沿って治療を考えますので,どうぞ遠慮せずに希望する治療法をお話しください。医者が治療法を押し付ける時代は終わり,最近は患者さんと相談して,治療方法を決めるようになってきました。それでも判断できない時は,私の方から客観的にみて,良さそうな治療法をアドバイスさせてもらうこともあります。

 インフルエンザの時に注意しなければならないことは,小学生から大学生までの年齢の人がインフルエンザにかかると,高熱時の異常行動が起こりやすいということです。これは,タミフル服用の有無に関わらず起こりますので,高熱が出ている間は,患者を一人にしないこと,ドアや窓などは施錠しておいてください。熱にうなされて窓から飛び降りてしまう事故を防げます。これらの異常行動は,最初タミフルによる異常行動としてニュースになりましたが,10年経過して情報を集めると,タミフル内服していた人もリレンザを吸入した人も,どちらも使わなかった人も,同じ割合で異常行動がみられたため,タミフルは10歳代にも使えるようになりました。ただ,今年からゾフルーザという1回服用だけですむ錠剤が使えるようになったため,10歳代の方にはゾフルーザを処方することが多いです。

 溶連菌感染症が少し目立ってきました。この季節になると,インフルエンザと溶連菌感染症両方にかかる人が時々います。どちらか一方だけ診断して,その治療をしても,なかなか熱が下がらなかったという経験をします。それを防ぐためには,周囲で溶連菌の流行があれば,インフルエンザも溶連菌も検査をしてみることです。もちろん,のどの所見や発疹などから溶連菌を疑う時は,積極的に検査をしています。お子さんの周囲にどんな感染症が流行しているのかを,いつも気をつけておくと,診療に必要な重要情報が得られるので,助かります。

3月19日(火)〜3月22日(金)は休診となります。代わりに26日(火)を診療致します。

サンタ通信No234(01)裏 H31.01.18発行

インドで思ったこと

 今年のお正月は,当番医もなく,しっかりとお休みが取れたので,私は西インドを旅行しました。この地域は,今の季節は,昼間は半袖で汗が出るくらいなのに,朝晩はダウンジャケットが必要なくらい冷え込みます。5〜6月にインドを旅行すると,暑季という季節で,1年中で一番暑い季節になります。日中の気温が40℃を超えてしまいます。6〜10月は雨季のため,毎日雨が降ります。ですから,インドに行くなら,お正月休みがちょうど良い季節なのです。インド最大の都市ムンバイに着いて,南ムンバイまで車を走らせました。1911年に英国王ジョージ5世の来印を記念して建てられたインド門,その横に立つタージマハルホテル,このホテルは2008年にイスラム過激派によるムンバイ同時テロで襲撃されたホテルで,日本人の死者も出て,当時大きなニュースになりました。今はきれいに修復されていますが,それ以来,ムンバイのホテルに入る時は,セキュリティが厳しくなっています。世界遺産のチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅も見に行きましたが,構内には実際に列車に乗る人しか入れなくなっています。ムンバイから飛行機で1時間のアウランガーバードへ移動し,大晦日と元旦を過ごしました。アジアのリゾートホテルでは,大晦日の夕食は,特別にガラディナーと呼ばれ,華やかな食事の後,カウントダウンのパーティになり,参加者全員で大騒ぎをするのが普通です。料金もいつもの倍くらいになります。ところが,私たちの泊まったホテルでは,ホテルの庭園に食卓が準備されていて,周囲にごちそうが配置され,ワインなど飲み放題になっていましたが,踊りや音楽などのイベントがなく,テーブルに三角帽子が置いてあるだけの,静かな食事会でした。夜は冷え込み,焚き火で暖をとりながら年越ししました。インドは仏教の始まった国であるため仏教遺跡が多く,また,国民の多くが信仰するヒンズー教の遺跡も数多く存在します。アジャンタ遺跡やエローラ遺跡など,すばらしい石窟群遺跡を見て,感動しました。さすがにどの遺跡も世界遺産に指定されています。ただ,遺跡内の移動は歩くしかなく,どこも最低2時間くらいは歩き回ります。階段も多く,バリアフリーの対応はできていませんので,インドの観光は足腰の丈夫なうちが良さそうです。

 インドでの食事は,1日3食ともカレーが主体になります。カレーの種類は,野菜・豆・チキン・マトンなど,素材によりバリエーションはあるものの,基本は香辛料をしっかり効かせた煮込みをご飯と一緒に食べるスタイルです。どんな高級レストランに行っても,同じようなメニューになっています。日本と違うのは,ベジタリアンとベジタリアンでない人に分けられていて,この2種類のメニューがどこでも必ずあることです。ベジタリアンは,動物を食べないという主義ですが,牛乳は一度動物から離れてできた産物だから,動物の命を奪うことはないという理由で,乳製品は食べるという人が多かったです。また,鶏卵も親鳥の命を奪うことはないので,食べることができるという人も一部いました。反対に,もっと厳格なベジタリアンは,鶏卵も乳製品も食べず,根菜類も食べません。根菜類は収穫する時に,地中の虫を傷つけてしまう可能性があるからという理由です。このようにヒンズー教は,命あるものを奪ってしまう食材を食べない生活をしているのです。インド人の約半数がベジタリアンです。私たちを案内してくれたガイドのSinghさんはベジタリアンで,食事も私たちとは別のメニューで食べていました。Singhさんは,日本を訪れたことがあるそうです。日本での1か月の生活で,体重が5kgも減ったと話していました。食事で食べられるものがなくて困ったためです。確かに日本では,肉や魚など,はっきり分かる食材は避けられますが,鰹節や鶏エキスなどの動物性のだしも食べられませんので,食事の内容をひとつずつ成分を確認しながら食べる必要があるのです。インドでは,ベジタリアン用の食事をお願いすれば,その中には全く動物性のものは含まれていません。どこのレストランに行っても,ベジタリアン用メニューとノンベジ用のメニューが必ずあります。宗教で禁じている食材として有名なものは,イスラム教の豚肉禁止でしょう。例えば,豚肉を調理した鍋を使って食事を作ることも禁止されています。アルコールも禁止されているため,味付けのみりんなども食べられなくなります。日本でも外国人の食事を考えて,イスラムのハラル食やベジタリアン用食事を出せるレストランも少しずつ増えてきていますが,ほとんどの店は対応できていません。2020年東京オリンピックで,いろんな国から日本を訪れると思いますが,多くの人が食事の制限が少なからずあります。ボランティアによる道案内やサポートも大事なのですが,食事をどのように提供できるのか,外国人の立場で考える必要がありそうです。

 今回のインドの旅は,食事では毎食カレーでしたが,訪れた場所や,出会った人々については,とても満足できるものだったので,また,インドへ行こうかと思っています。インドはヒンズー語での会話ですが,ほとんどの人は英語ができますので,旅先で困ることはあまりなく,旅行しやすいです。また,衛生的な観点から旅行には敷居が高かったのですが,生水や生の食材を食べないようにすれば大丈夫でした。