サンタ通信No232(11)表 H30.11.18発行

インフルエンザが出始めました

 今月初めに北海道に行く機会がありました。2月には流氷が押し寄せて,観光客が大勢訪れる紋別市を訪問しました。紅葉も終わり,そろそろ初雪を迎える季節でしたが,飛行機から見た大雪山は,山全体が雪で覆われ,輝いていました。町のあちこちにホタテの殻が落ちているくらい,ホタテや毛ガニの漁業が盛んな土地で,人口2万人くらいの町です。朝は紋別漁港から漁船の出航風景が見られ,枕崎に似た印象を持ちました。飛行機は羽田空港へ1往復があるだけです。枕崎から東京便が1日1往復飛んでいるイメージです。乗客は外国人の団体客も多く,観光でどうにか維持できている路線かなと思います。でも,びっくりしたのは紋別広域病院でした。5階建の立派な病院で,小児科も3人の医師体制ができていて,充実しています。一方,鹿児島をみると,南薩地域を守備範囲としている県立薩南病院は,ちょっと前まで小児科は休診状態で,現在でも予防接種と健康診断だけが行われている状況です。南薩地域から当院を受診される方も結構いらっしゃいます。日曜診療しているので助かるというお言葉もよくいただきます。11月4日の当番医では,150人近くの患者さんが来院されました。当院は日曜診療を20年近く続けていますので,当番医を毎週担当しているのと同じくらいの負担になります。先月は首を痛め,痛みが強かったので整形外科を受診し,痛み止めと湿布薬をもらい,2週間でようやく治りました。身体のあちこちにガタがくる年齢ですが,幸いにも大きな病気はなさそうです。今後もできるだけ皆さんに喜んでもらえる小児科でありたいと思います。

 さて,最近1週間(11月5日~11月11日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは溶連菌感染症で週5人でした。次いで,感染性胃腸炎4人,咽頭結膜炎2人,ヘルパンギーナ1人でした。全体的に感染症は少なく,落ち着いた外来が続いています。インフルエンザ患者発生の情報が,鹿児島市内でも散発的に報告がありましたが,修学館中学校で学級閉鎖のニュースが13日の新聞に載っていて驚きました。谷山地区はまだ大きな流行はありませんが,当院でもA型の患者さんがいらっしゃいました。予防接種は早めに受けた方が良さそうですね。今後も,周囲に流行がないか,注意が必要です。

 溶連菌感染症は流行が小さいながらも続いています。感染力が強い菌ですので,周囲に少しずつ感染を拡げていくため,完全に抑え込むことは難しいです。自分が感染したら,周りにうつさない配慮をしながら,抗菌薬でしっかり除菌をすることが大切です。もうしばらくは,今くらいの流行が持続するのではと予想されます。

 感染性胃腸炎も時々みられます。嘔吐で始まり,少し遅れて下痢が出てきます。ウイルス性がほとんどなので,吐き気止めの坐薬・内服薬で吐き気を抑えながら,水分を少しずつ摂取します。下痢が出てきたら整腸剤を内服させます。この治療で徐々に症状が改善しますが,子どもの嘔吐というのは,重症の病気が紛れ込んでいることがあります。腸重積や虫垂炎など,救急処置を必要とする消化器系疾患を鑑別しなくてはなりません。また,消化器系以外の病気でも,嘔吐がみられます。溶連菌感染症では嘔吐がみられることが多く,頭蓋内出血などの中枢神経の病気でも嘔吐が主要な症状になります。そのため,嘔吐下痢症と診断されても,症状が続く時や症状が変化してくる時には,早めに再受診をしましょう。看病している時に,症状の変化をしっかり把握することが大事です。

 

12月24日(月)は当番医を担当します。急患の方だけをお受け致します。

12月28日(金)~1月4日(金)は休診となります。

1月13日(日)は休診で,代わりに15日(火)を診療します。

サンタ通信No232(11)裏 H30.11.18発行

ネット依存症

 10年以上前のことですが,折りたたみ携帯を持っていました。カメラ機能があり,海外での電話もでき,メールやテレビ電話もできる優れ物でした。しかし,10年使ったら,さすがにメーカーはサポートも修理もしてくれなくなり,壊れた時のことを考え,スマホに変えました。スマホはインターネットの情報をパソコンと同じように得ることができて,とても便利です。今や学会のシンポジウムに参加しても,その場で参加者の意見を各自のスマホを使って集計し,その結果を討論することもあります。スマホなしの生活が考えられない状態です。大人が便利だからと使うスマホを,子ども達に使うなと言っても,説得力がありません。周りの子どもが持ち始めると,自分の子どもにも持たせるようになってしまいます。子どもは吸収が早いので,スマホをどんどん使いこなすようになり,オンラインゲームに熱中したり,ラインを使って友達とやりとりを夜遅くまでします。スマホを使いすぎないようにする歯止めは,自分ではなかなかかけられません。明け方近くまでゲームに熱中したり,四六時中ラインを気にしていると,徐々に生活が乱れてきます。

 厚生労働省が今年8月31日に発表したネット依存症の報告として,中高生は5年で倍増していて,全国で93万人に上るとのことです。中高生全体約650万人の7人に1人が当たる計算となります。特に女子の割合が高い傾向がありました。スマートフォンを使ったゲームや会員制交流サイト(SNS)の普及が背景にあり,対策強化が必要とされます。インターネットやオンラインゲーム、SNSなどを使い過ぎ,日常生活に支障が出てきて,暴力や引きこもり,うつ病などの合併症や脳の障害を引き起こす恐れもあります。中学男子の10.6%,女子の14.3%,高校男子の13.2%,女子の18.9%が病的使用の状態で,ネット依存症になっています。

 30日以内にネットを使った人のうち,中学生の70%以上,高校生の90%以上がスマホを利用していました。LINE(ライン)など無料通信アプリの利用率は高校男子で85~90%,高校女子は92~96%に達し,ツイッターなどの利用率は特に高校女子で70%以上と高く,高校男子は60%前後でした。一方,オンラインゲームは中高生とも男子で高く50%以上なのに対し,女子は40%以下でした。この研究を実施した鳥取大の教授は「学校で実施した調査なので,通学できないほど症状が重い人は対象に含まれておらず,インターネット依存症疑いの中高生は実際にはもっと多いとみられる。ネット環境はめまぐるしく変わっていて,引き続き詳しい調査が必要だ。男子はゲーム、女子は会員制交流サイト(SNS)をする割合が高い傾向がある。学校でのトラブルで多いのは成績低下や居眠り、遅刻。例えば、ネットゲームの接続時間を自動で制限する仕組みがあれば、依存症の予防につながるかもしれない。」と話しています。

 ゲームは若者を夢中にさせ,ステージをクリアできると,達成感が増し,また次のステージに没頭するようになります。私が大学生の頃,喫茶店やゲームセンターにインベーダーゲーム機が置かれるようになり,夜更けに友達と夢中になって遊んだ記憶があります。それまで大学生の娯楽といえば,先輩の3畳間で徹夜麻雀をするくらいでしたので,コンピュータゲームは新鮮でした。今振り返ると,敵の攻撃をかいくぐりながら,敵の陣地を崩していくたわいもないゲームで,1年も経たないうちに,時間を無駄に使っていると意識するようになり,自然とゲームから離れることができました。しかし,今のゲームは,オンラインでチームを組み,相手と戦います。仲間を犠牲にできないため,なかなか抜けられなかったり,チームワークを駆使して勝利すると,喜びも倍増するため,のめり込みやすいのだと思います。

 女子の場合は,グループを作りたがり,そのグループの中での評価を大変気にします。除け者にされないように,ラインでメッセージが来たら,すぐに返事をすることがとても大事だと思い,スマホをいつもそばに置くようになり,お風呂の中やトイレ,布団の中にも持ち込むようになります。そんな生活では,勉強も十分できず,睡眠も障害されてしまいます。その結果,朝起きられなくなり,学校に登校できず,部活もやめ,ネット依存という病的状態になってしまいます。

 この治療はとても難しく,スマホを止めなさいと言っても簡単には止められません。アルコール依存や薬物依存と同じで,自分でそんなことをしていると,楽しい生活ができなくなる。失うものが多いということに気づいて,自分で努力して止めなければなりません。自分がどれくらいの時間をネットに費やしているか,何を失ったかを客観的に見るようにし,少しずつスマホから離れる努力をしていきます。具体的には,食事中だけはスマホを触らないようにするとか,登下校中だけは触らないとか,目標を決めて,それを進めていくことが大事です。それができない時には,病院でカウンセリングの治療が必要になります。重症例では,専門施設でのキャンプや入院が必要になることがあります。そうならないためには,早めにお子さんの依存の兆候に気づいて,親子でスマホの使い方の取り決めをすることが大切です。