サンタ通信No225(04)表 H30.04.18発行

溶連菌感染症に注意

 初夏の陽気に誘われて、街まで出かけ、ホキ美術館名品展を鑑賞しました。写実絵画と言われ、まるで写真のようですが、写真では出せない絵画ならではの、作者から見る人の心へ語りかけてくるものがありました。千葉にあるホキ美術館を是非訪れてみたいと思わせる名品でした。

 さて,最近1週間(4月9日~4月15日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは、溶連菌感染症で週6人でした。次いで、手足口病3人、感染性胃腸炎3人、インフルエンザ1人でした。溶連菌感染症が多いですが、それ以外の感染症は全般的に少ない印象です。溶連菌感染症と診断した時に「それは何ですか?」と質問される方が結構いらっしゃいます。溶連菌はインフルエンザなどと比べると、知名度が低いのですが、小児科ではよく経験する病気です。溶連菌の正式な名称は、A群溶血性連鎖球菌です。鼻水や唾液中の菌がくしゃみなどで飛散して、人から人へ感染していきます。潜伏期間は1~4日で、発症すると、突然の発熱と咽頭痛が出現します。抗生剤を内服すると翌日には解熱し、感染力も無くなりますが、完全に除菌できないと、すぐに再発するため、ペニシリン系抗生剤は少なくとも10日間、セフェム系抗生剤は7日間確実に服用することが必要です。この溶連菌は感染力が非常に強く、周囲に患者さんがいると、かなりの確率で感染してしまいます。非流行期でも兄弟に感染する率は25%、流行期には兄弟では50%の感染率があり、そのうちの半数以上が発症します。そのため、家庭内や学級内での集団感染が起こりやすいです。罹りやすい年齢は2~10歳で、そのピークは4~6歳となります。診断はのどの奥が真っ赤になっていることで溶連菌感染を疑い、迅速検査で判定します。のどを綿棒で拭い、10分以内に診断できます。

 感染性胃腸炎はウイルスによる嘔吐下痢が主です。ノロウイルスやロタウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルスなどが原因ウイルスになります。しかし、ウイルスだけではなくて、鶏刺しを食べて感染するカンピロバクターや生卵によるサルモネラ菌など細菌性の胃腸炎も含まれます。鹿児島では鶏刺しを食べる習慣があるため、カンピロバクター腸炎をよく経験します。大人は焼酎の肴として鶏刺しを好んで食べます。そのため、家族で囲む食卓に鶏刺しが出ることは珍しくありません。鹿児島の人がこれだけ鶏刺しを食べても発症しないのは、これまでに何回か感染したことがあって、免疫ができているからです。鹿児島の人も、初めて感染した時には、嘔吐や下痢といった胃腸炎の症状を呈しているはずですが、潜伏期間が2~5日あるため、鶏刺しに当たったとは考えないのかもしれません。診察の時に「何か当たるような食べ物は?」という問いに対して、「何もありません」と答える患者さんに、「3日前に鶏刺しを食べましたか?」と聞くと、「食べました」と言われます。鶏刺しを当たりそうな食べ物だという認識がないことと、数日前までさかのぼることを考えていないのでしょう。子どもの時に何回も感染していると、抗体ができますので、大人になってから鶏刺しを食べても平気なのです。もともとカンピロバクターは自然治癒する傾向が強い感染症です。子どもが鶏刺しを食べて症状が出ても、しばらく食事療法をするくらいで治ってきたのだと思います。自然と免疫ができた鹿児島の大人たちは、鹿児島の食文化だと鶏刺しを県外の人に勧めます。しかし、免疫を持たない県外の人は、3日後に胃腸炎を発症し、腹痛や下痢に苦しむ可能性がありますので、人に勧める時には少し注意が必要です。

 

 4月30日(月)振替休日は当番医を担当します。

 5月1日(火)〜5日(土)は休診となります。

 5月12日(土)は会議のため、17:00までの診療です。

 5月31日(木)は学会のため、休診となります。

サンタ通信No225(04)裏 H30.04.18発行

こどもの救急について

 子どもはよく熱を出します。熱でぐったりなってくると、すぐに病院を受診した方が良いのか、水分を与えながら少し様子をみた方が良いのか、迷うことが多いと思います。そんな時に役立つのが、「ONLINEこどもの救急」です。日本小児科学会が監修したサイトで「こどもの救急」と検索すれば、スマホでも調べることができます。例えば、発熱(38℃以上)については、8つの項目があり、それに該当するかどうかを入力するだけで、すぐに救急病院へ行った方が良いのか、様子をみて良いのか、判定してくれます。

(1)おしっこが出ている。オムツがいつものとおり濡れている。(2)ぐったりしている。(3)1日中ウトウトしている。(4)あやすと笑う。(5)生後3カ月未満である。(6)水分はとれる。(7)無表情で活気がない。(8)元気がある。

これらの項目の中で当てはまるものをクリックすると、「待つ」おうちで様子をみましょうとか、「行く」自家用車・タクシーで病院に行くなどの判定をしてくれます。発熱以外にも、けいれん、吐き気、せき・ゼェゼェ、腹痛・便秘、皮膚のブツブツ、下痢、泣き止まない、おしっこが出ない、意識がおかしい、耳を痛がる、頭痛、誤飲、ウンチが変、鼻血、動物に咬まれた、虫に刺された、やけど、頭を強くぶつけたという項目があり、ほとんどの救急に対応できます。迷った時は活用されてください。特に夜間で相談できない時など、有用なサイトです。時間がある時にどのように操作するのか、確認しておくと良いでしょう。もちろん無料のサイトですので、安心して役立てることができます。

「こどもの救急」:kodomo-qq.jp

手足口病について

 最近、手足口病が増えてきました。手足口病は一年中発生していますが、夏場に多くみられます。原因ウイルスは,エンテロウイルス属のウイルスで,その中のコクサッキーA16型とエンテロウイルス71型がほとんどを占めていました。コクサッキーA16型は典型的な手足口病で,あまり熱も出ず,発疹も掌や足底に小さな水泡が出て,口腔内にも赤い水泡が見られます。予後は良好で,数日すれば,そのまま治まります。エンテロウイルス71型も,普通は発熱と手足の発疹,口の中の水泡で終わるのですが,稀に髄膜炎や脳炎など重症化する例がみられることが特徴です。また,最近ではコクサッキーA6型の手足口病もみられるようになってきました。このタイプは,発疹が手足だけでなく,全身に及ぶことがあります。また,発疹の前に高熱が出ることがあります。普通は5歳未満に多い手足口病ですが,A6型では,年長者も発症することがあり,発疹が典型的な水泡にならず,大きな丸い紅斑になることがあります。非定形的な手足口病のイメージです。

 手足口病は,残念ながら治療法はありません。重症化しないかぎり、水分や食事が摂れていれば、数日で症状は改善してきます。ただ、感染力は治った後も持続します。ウイルスは人の腸管内で増えて便に排出されます。病初期の口の中に発疹が出たり,発熱が出たりする時期(発症後1週間)は,唾液中にウイルスが存在します。飛沫感染で周囲に感染させたり,唾液のついた手で物を触ったりすれば,ウイルスは通常の環境では容易に失活しませんので,接触感染も起こります。そして、病気が治った後も腸管内にウイルスは長く残り,便中に2〜4週間排出されます。この時期は,糞口感染と言って,便が付いたオムツを触ることでウイルスが手に付き,口に入ることで感染します。手足口病になった後,1ヶ月くらいは,便やオムツの取り扱いに注意し,手洗いを確実に行うことが周囲に手足口病を拡げない重要な対策です。登園の目安は,発熱がなく,食事が摂れて,全身状態が良ければ許可していますが、感染する危険性は残っている状態ですので、手洗いをしっかりすることが大事です。