サンタ通信No231(10)表 H30.10.18発行

溶連菌感染症が流行

 朝晩がめっきり涼しくなってきました。明け方に寒くて目が覚めることもあります。長袖を着る機会も増えてきました。鹿児島に住んでいると,晩秋まで半袖を着ていてもおかしくありません。私も若い頃は1年を通して半袖の白衣で仕事をしていましたが,さすがに年を重ねると,寒い時には無理をせず,長袖の白衣を着るようにしています。秋のような,気候が変動しやすい季節は,ちょっと油断するとカゼをひいてしまうことが多いです。私の場合,自分の健康が病院の業務に直結しますので,衣服や室内温度の調整に慎重にならざるを得ません。ところで,10月からインフルエンザの予防接種が始まりました。昨年はワクチンの製造が遅れたため品不足になり,接種したくても受けられなかった人が多かったせいか,今年は現時点での予約が昨年の使用本数をすでに超えてしまい,新たな予約がお受けしにくくなりました。予約の相談はスタッフまでお問い合わせください。

 さて,最近1週間(10月1日~10月7日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは溶連菌感染症で週7人でした。次いで,感染性胃腸炎5人,ヘルパンギーナ5人,咽頭結膜炎3人,伝染性紅斑2人,突発性発疹症1人,手足口病1人,RSウイルス感染症1人でした。溶連菌感染症が多いです。通常は春から初夏にかけて流行のピークがありますが,今年は秋に入ってもまだ流行が続いています。溶連菌は感染力が強いので,気付かないでいると,多くの人に感染させてしまいます。すぐに診断できれば,抗生剤の内服治療を開始して24時間で感染能力はなくなりますので,周囲への感染を最小限で抑えられます。発熱やのどの痛みがあり,周囲に溶連菌の人がいれば,検査を受けるようにしましょう。

 夏カゼのひとつ,ヘルパンギーナがまだ流行しています。高熱とのどの痛みで発症し,診察すると,のどの奥に,水泡や浅い潰瘍がみられます。夏カゼですので,そろそろ終息するのではと思っているのですが,夏に全く流行しなかったせいで,季節外れの流行が続いています。冬にヘルパンギーナを診たことはないので,来月には患者数が減少するだろうと予想しています。夏カゼのもうひとつ,手足口病は冬にも発生を見ることがあります。大きな流行にはなりませんが,これからも注意が必要です。

 感染性胃腸炎はウイルス性の嘔吐下痢症です。ロタウイルスやノロウイルスによるものが多いですが,ロタウイルスのワクチンができてからは,入院が必要になるような重症の胃腸炎が少なくなった印象があります。OS-1という経口補水液を脱水の治療に使うようになり,外来で点滴をする機会も少なくなりました。冬場の寒さで赤ちゃんの血管が細くなり,脱水の影響でさらに細くなり,ぽっちゃりとした手で血管が触れにくく,血管も見えにくい赤ちゃんでは,血管確保に30分以上もかかったりして,苦労の連続でしたから,ロタウイルスの予防接種とOS-1のありがたさを実感できています。

 咽頭結膜熱(プール熱)も少しずつ流行が見られます。高熱が4~5日続くのに,機嫌がそれほど悪くなく,重症感がない時は,アデノウイルス感染症の可能性が高くなります。迅速検査を使うと10分くらいで,陽性,陰性が判定できます。目の充血があれば,咽頭結膜熱(プール熱)という診断になりますが,結膜炎を伴わない場合は,肺炎や胃腸炎,出血性膀胱炎などがアデノウイルス感染症としてよく知られています。アデノウイルスは感染力が強く,石鹸やアルコール消毒が効きにくいので,感染を拡げないためには,手を流水でよく洗う必要があります。タオル共用も避けてください。咽頭結膜熱(プール熱)と診断されたら,解熱後2日経過するまで,登校・登園はできません。

サンタ通信No231(10)裏 H30.10.18発行

喘息の季節

 喘息が悪化しやすい季節は,春と秋です。気候の変わり目という他に,花粉の多い時期や,ウイルス性のカゼが多い時期などが喘息発作を悪化させます。また,台風の時のように,気圧が低くなると発作が起こりやすくなります。喘息と関連が強いダニも,夏に繁殖して秋に大量に死骸となって室内に存在しますので,それを吸い込んで,発作が起こります。室内の清掃をしっかり行い,カゼをひかないように,衣服の調整を行えば,喘息がひどくならずに済むでしょう。もちろん,タバコは喘息を悪化させますので,喘息のお子さんがいらっしゃる場合は,必ず禁煙しましょう。

 喘息の治療については,発作の重症度を見極めるところから始まります。時々ゼイゼイが出るくらいなら,定期的な薬は不要で,発作の時に吸入や内服薬,テープなどの貼付薬などを使います。月1回以上発作が頻回に出るようなら,予防的に抗アレルギー剤の定期内服やステロイド吸入薬を使用します。発作時の吸入薬や貼付薬は,気管を拡げて呼吸を楽にする作用があり,喘息発作は改善するのですが,同時に薬には心臓刺激作用もあり,人によっては動悸がしたり,気分不良も起こることがあります。昔の吸入薬には,喘息を改善させる力と心臓刺激作用が同じくらいあり,使い過ぎて心臓麻痺を起こし,突然死することがまれにありました。このため,家庭で行う吸入は回数が制限されていました。それを防ぐために,気管の方によく効き,心臓刺激の作用が少ない薬が開発されるようになり,薬での突然死は激減しました。私が喘息の患者さんを診る時に,吸入が終わってもう一度聴診するのは,ゼイゼイが良くなったかどうかと,心臓刺激作用で,脈拍が速くなっていないか,不整脈が出ていないかを診る目的があるのです。1回の吸入で呼吸状態が改善していなければ,2回目の吸入をすることもあります。

 喘息発作で特に注意が必要なのは,強い喘息発作です。①唇や爪が紫色になる,②息を吸う時に小鼻が開く,③胸がペコペコ凹む,④脈拍がとても速い,⑤会話が苦しい,⑥歩けない,⑦横になれない,⑧意識がボーとしている,⑨苦しくて暴れる,⑩失禁がある,などの症状が危険なサインです。このような症状があれば,直ちに病院受診が必要になります。状態が悪い時は,救急車を呼びましょう。このような場合は,入院での治療が必要になります。

読書の秋

 私は,時間があると本を読みます。2週間ごとに図書館へ行き,面白そうな本を借りては,休日や寝る前に読むのですが,面白すぎると,ついつい夜更けまで読んでしまうことがあります。本を読む習慣は,自分の心を豊かにするだけでなく,生きる糧も増やしてくれる感じがします。小説だけでなく,自然科学や地理の本もよく読みます。医学や健康に関する本も,図書館にはたくさんあって,この本はどんなことが書いてあるのだろうかと,わくわくしながら家に持って帰ります。たまには時間がなくて1冊も読めないこともありますが,なるべく2週間毎に図書館を訪れるようにしています。それが日常生活のリズムを作ってくれています。それほど頻回に図書館に行くと,たまには一度読んだ本を,もう一度借りてきてしまうことがあります。以前読んだ本でも,面白いと思えば,2回目に挑戦して,感動を再び得ることもあります。

 私は旅行が好きですので,世界中を旅する人の旅行記を読んで,まだ見ぬ国を想像したり,旅で出会うドキドキに一緒に感動したりします。世界各地の様子を描いたルポルタージュも面白いです。旅先での失敗談や楽しい思い出などが,作者と共有できるのですから,一緒に世界一周をしている気になります。先日,3日間の連休を利用して,ベトナムのホーチミン・シティーを訪れました。飛行機のチケットとホテルだけ確保して,一人で行ったので,少し不安もありましたが,空港やホテル,タクシーでは片言の英語で会話ができましたし,観光客が利用するレストランでは英語が通じました。でも,ほとんどのベトナム人には英語は通じません。ベトナム語を覚えたくても発音が難しく,個人での旅行では,行動範囲が制限されてしまいますが,それでもあちこち見て回ります。

 ホーチミン・シティーで,第2こども病院の外来を見学しました。ベトナムは人口増加が著しくて,2人っ子政策を行い人口増加を抑えたため,子どもの数が少なくなってきているとのことです。それでも若い人が多い国で,総人口の57%は34歳未満という状況です。病院の外来を朝9時に訪問して来ましたが,病院からあふれるくらい,子どもを連れたお母さん方がいました。昼になっても,まだたくさんの患者さんが残っていました。ベトナムの医療事情は大変なんだろうなと思いながら,帰って来ました。