サンタ通信No228(07)表 H30.07.18発行

梅雨明け後は猛暑!

 毎年、梅雨の末期は激しい雨が降り、各地で大きな災害が起こります。今年は鹿児島よりも少し北の方に梅雨前線が停滞したため、福岡、山口、広島、岡山、愛媛県で河川の氾濫や土砂災害が起こり、200人以上の死者を出してしまいました。鹿児島でも桜島で土砂崩れにより2人の命が失われました。梅雨の時期の災害規模が少しずつ大きくなってきている感じがします。雨の降り方についても、気象庁が数十年に1回程度の激しい雨が降ると、特別警報を出します。数十年に1度しかないような雨なのに、この特別警報を頻回に耳にするということは、雨の降り方がどんどん激しさを増してきているのだと思います。地球の温暖化が進み、異常気象が起こりやすくなり、日本の雨も、熱帯のスコールのように、バケツをひっくり返したような雨になってきています。スコールは一時的な雨ですみますが、日本の場合は梅雨前線が停滞し、数日間降り続けますので、災害に直結してしまいます。ようやく梅雨明けして、水害の心配はなくなりましたが、一転して猛暑になっています。外出するのがためらわれます。桜島の降灰もひどく、16日の海の日に図書館に本を返そうと車で向かっていたら、桜島に4600mの噴煙が上がり、市街地に向かって真っ黒な灰が襲いかかっていました。図書館に行くのを取りやめ、谷山支所で本を返しました。鹿児島は火山灰が積もったシラス台地のため、雨で崩れやすいし、今も降り続く火山灰にも悩まされていますので、災害とはいつも隣り合わせです。そこに住む人は、災害に対して敏感になっておく必要があります。危ないなと思ったら先を読んで避難をしたり、住民どうしで助け合ったりしなければなりません。近所付き合いも大事ですね。

 さて,最近1週間(7月9日〜7月15日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは手足口病で、週7人でした。次いで、溶連菌感染症5人、感染性胃腸炎4人、ヘルパンギーナ2人、咽頭結膜熱1人、突発性発疹症1人でした。手足口病の流行が続いています。幸いにも重症化した患者さんはいませんでした。発熱がみられる患者さんも、高熱の方は少なく、38℃程度までの微熱の人がほとんどです。発熱期間も1〜2日で解熱しています。発疹の特徴は、時々全身に広がるような発疹の人をみかけますが、ほとんどは手足に10個くらいの発疹ですんでいます。

 溶連菌感染症が少し多くなりました。夏休みに入ると流行は減少しますが、感染力が強いので、もうしばらくは注意が必要です。家族や保育園・幼稚園に患者さんがいれば、感染している可能性が高くなりますので、疑わしい時には検査をするようにしています。感染性胃腸炎は、ウイルス性の嘔吐下痢がほとんどですが、吐き気止めの座薬を使い、OS-1などの経口補水液を少量ずつ頻回投与することを勧めています。嘔吐がひどく、どうしても水分が摂れない場合は、点滴をしています。家族に感染が広がっていることも多く、両親が吐き気で苦しいのに、お子さんの看病をしなければならず、病院を受診するのも大変そうです。家庭に吐き気止めの座薬を2、3個準備しておけば、解熱剤と同じように、冷蔵庫で1年くらいは保管ができます。夏カゼの一つ、ヘルパンギーナもわずかですが流行してきました。手足口病と同じエンテロウイルスが原因で、2〜3日間の高熱とのどの痛みが主な症状です。のどの奥に口内炎を思わせる水泡が数個出現してきますので、のどの所見から診断できます。治療は特になく、高熱の時に解熱剤を使うくらいです。例年は7月を中心に、秋には流行が終わりますので、今年は流行規模は小さいのではと思います。

 

 7月30日(月)は17:00までの診療になります。

 8月5日(日)は当番医を担当します。

 8月9日〜15日は休診となります。8月7日(火)と8月17日(金)は診療致します。

サンタ通信No228(07)裏 H30.07.18発行

熱中症について

 熱中症は、高温多湿な環境に、私たちの身体が適応できないことで生じるさまざまな症状の総称です。以下のような症状が出たら、熱中症にかかっている危険性があります。①めまい・立ちくらみ,②筋肉痛・こむらがえり,③大量の発汗,④頭痛・気分不快・吐き気・倦怠感・虚脱感,⑤意識障害・けいれん・手足の運動障害,⑥高体温です。①②③は重症度としては初期のI度の熱中症の症状です。④の頭痛や吐き気、倦怠感はⅡ度の中等症、⑤と⑥は重症のⅢ度になり、救急車を呼ぶ必要があります。熱中症は気温などの環境条件だけでなく,私たちの体調によっても影響されます。体の方が暑さに慣れていない場合も起こりやすくなります。気温がそれほど高くない日でも,湿度が高い・風が弱い日は注意が必要です。この梅雨明けの時期は、暑さにまだ慣れていないので、熱中症になりやすいのです。特に小児と高齢者は,熱中症の危険性が増します。子どもは体温調節機能が十分発達していないため,熱が体にこもりやすいです。また,晴れた日には,地面に近いほど気温が高くなるため,身長の低い幼児は大人以上に暑い環境にいることになります。ちょっとの間だからと子どもを車に残すことは絶対に止めましょう。当院を受診される場合も、車のサンシェードを使い、車の中がサウナ状態にならないようにしましょう。帰りにまず、車のエアコンをかけ、ドアをパタパタさせて熱を逃がして、室内が快適になってから、お子さんを車に乗せるようにしてくださいね。病気で受診されているのですから、車の室内環境には配慮が必要です。

 熱中症を予防するには,暑さを避けることが大事です。屋外では日陰を選んで歩き,活動時はテントなどで日陰を作りましょう。帽子や日傘も効果があります。服装も,放熱しやすい服装を選択し,ゆったりとした服で,なるべく白系統の素材を選びます。暑い日には,汗を多くかいています。十分な水分と塩分の補給が重要です。のどが乾く前から補給することが大切です。

 実際に熱中症になった時に対処する方法です。熱中症を疑う症状があれば,まず意識の確認をしましょう。意識がない時や呼びかけに対し返事がおかしい時にはすぐに救急車を要請し,涼しい場所への避難をさせ,脱衣と冷却をしながら,病院へ搬送します。意識がしっかりしている時は,涼しい場所へ避難させて,脱衣と冷却をしながら,水分を自力で摂取できるかどうかをみます。できない時は,病院を受診させた方がよいでしょう。自力で水分が摂れるようなら,水分と塩分の補給をさせて,症状の改善がない時にも,病院受診が必要になります。

 水分・塩分の補給は,経口補水液のOS-1とポカリスエットなどのスポーツ飲料とどちらがいいでしょうか?という質問もよく受けます。経口補水液のOS-1は元々,下痢嘔吐の時に,点滴が受けられない開発途上国で,点滴と同じくらいのナトリウム・カリウムイオンを含んだ飲み物として開発されました。スポーツ飲料は,スポーツ選手の脱水症状や熱中症を予防する目的で作られたものです。成分は大きく違っており,OS-1は糖分が少なく,塩分が多いのが特徴です。ポカリスエットは運動時のエネルギー補給のために,糖分が高めで,塩分は少ないのが特徴です。運動時に補給するにはスポーツ飲料が適しており,熱中症になってしまった時は,OS-1が良いのです。実際に飲んでみると分かりますが,かなりしょっぱくて美味しくありません。でも,脱水になっている時は美味しく飲んでくれます。OS-1を飲む量は,乳児で体重1kg当たりで30〜50ml/日です。幼児では300〜600ml/日です。学童では500〜1,000ml/日です。少量ずつを繰り返し飲むようにしましょう。嘔吐下痢の時などの脱水対策にも、OS-1の方が適切です。失われた水分やイオン、糖の補給をすることができます。点滴をして脱水を改善しているのと同じような効果があるからです。もちろん飲ませても吐いてしまう場合は、点滴が必要になります。OS-1は開発途上国のコレラ対策として、点滴の代わりになるものを口から摂取させようと開発されました。昔の日本でも、嘔吐下痢の時に、重湯に梅干しを加えて食べさせていました。OS-1を使った経口補水療法は、同じ原理で、体に必要な成分を少しずつ口から飲ませる治療方法で、このOS-1のおかげで、点滴の出番が少なくなりました。小児科医にとっては、OS-1がなかった頃は、冬場になると毎日10人くらいの点滴をしなければならず大変でしたが、今は点滴が必要な患者さんは1割くらいに減りました。