サンタ通信No230(09)表 H30.09.18発行

RSウイルス感染症が流行

 厳しい暑さが少し和らいで,過ごしやすくなってきました。秋は気候もよく,紅葉など風景も楽しめるため,外出する機会が増えます。この通信も,職員旅行で訪れた広島で書いています。広島といえば,原爆ドームで象徴されるように,悲惨な戦争遺跡の街というイメージがあります。このドームを見ながら,今が平和であることに感謝せざるを得ませんでした。近くには,安芸の宮島など,自然豊かな世界遺産も多く,海外の旅行者がとても多いことにびっくりしました。今回は広島のお好み焼きを食べて,いろいろな所を見学できて,職員もリフレッシュできたようです。新幹線を使うと2時間余りで着きます。皆さん,秋の行楽に広島を選んでみてはいかがでしょうか。

 さて,最近1週間(9月3日~9月9日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのはRSウイルス感染症で,週8人でした。次いで,ヘルパンギーナ5人,溶連菌感染症3人,感染性胃腸炎2人,突発性発疹症2人,手足口病1人,伝染性紅斑1人,流行性耳下腺炎1人でした。RSウイルス感染症がとても多いです。このため,赤ちゃんに咳や鼻水などのかぜ症状がある場合は,RSウイルスを検査するようにしています。特に,お母さんがコンコン咳をしている時は,RSウイルス感染症である可能性が高まります。この病気は乳幼児期にかかるカゼで,ほとんどの人が3歳までに1回は感染します。感染している人からくしゃみや咳でウイルスがまき散らされる飛沫感染で拡がります。潜伏期は4~6日で,症状は38~39℃の発熱と咳・鼻水がみられ,これらの症状は一般的なカゼと同様の症状です。何回もかかる病気ですが,徐々に免疫ができるため,2回目,3回目と症状は軽くなります。有効な治療法はありませんが,診断できれば,病気の進行状況が予測できますので,ゼイゼイが強くなって哺乳が障害されるようなら,入院を勧めます。新生児では,呼吸を止めて,顔色が悪くなり,ひどい時は突然死を起こす可能性もあります。そのため,ほとんどの新生児は入院になるのですが,時には,咳が出るものの,哺乳も良好で,入院せずに1週間くらいで軽快する赤ちゃんもいますので,状態をみながら,入院の判断するようにしています。ただ,年齢が低ければ低いほど,重症になりますし,出生時の体重が小さいほど重症になります。昨年と同様の流行であれば,9月いっぱいは続くかもしれません。

 先月号で少し話しましたが,夏カゼのヘルパンギーナが流行してきました。関東あたりで流行がみられていましたが,お盆休みに地方へ帰省するため,鹿児島にも流行が波及する可能性があると考えていましたが,実際に増えてきました。まだ週5人程度の流行ですが,注意は必要です。症状は突然,39℃以上の発熱とのどの痛みで発症します。のどの所見は,水泡や浅い潰瘍がのどの奥に数個みられます。手足口病と同じコクサッキーウイルスA群による急性咽頭炎ですので,特に治療法はありません。高熱できつい時に,解熱剤を使うくらいです。感染経路は,くしゃみなどからの飛沫感染と,便に排出されたウイルスが手を介して口に入る糞口感染で,感染すると2~4日の潜伏期を経過して,発熱で発症します。発熱は2~4日で解熱し,口の症状も解熱から少し遅れて,改善していきます。口の痛みが強くて,食事や水分摂取ができなくなることがあります。水分が摂れない場合は,脱水症になることがあり,点滴が必要になります。この病気では,登校や登園に関しては規定がなく,2~4週間は便に原因ウイルスが排出されますので,流行阻止のためには,長期に休ませる必要がありますが,実際には,便からのウイルスが口に入ることがないように,手洗いをしっかりすることで感染予防してもらいながら,患者が解熱して,食事がしっかり摂れるようになれば,登園を許可しています。夏カゼですから,秋には流行は収束するのではと予想されます。

サンタ通信No230(09)裏 H30.09.18発行

インフルエンザの薬

 インフルエンザが流行するのは,日本では冬ですが,南半球は夏に流行します。また,熱帯・亜熱帯の地域では1年を通して流行がみられます。そのため,海外からの訪日客が増加すると,インフルエンザを持ち込むことも多くなります。また,沖縄では夏に流行することも多く,沖縄を旅行した人がインフルエンザウイルスを地元に持ち帰ってしまい,周囲に感染を広げてしまうこともあります。鹿児島市の感染症報告でも,8月にインフルエンザ発生の報告を時々目にしました。周囲に患者さんがいる時は,発熱時に検査した方がよいでしょう。

 ところで,インフルエンザの治療薬について,新しい情報です。これまでインフルエンザの特効薬として,よく使ってきた「タミフル」が異常行動を起こしやすいということで,10歳代の使用を控えるように指導されていましたが,異常行動の起こりやすさは,「タミフル」以外の薬と比べても違いはなく,薬を服用しなかった人にも同じくらいの頻度で異常行動が起こるということがわかり,今年から10歳代にも使用できるようになりました。ただ,熱が高い期間は,異常行動への対策(玄関や窓に鍵をかける・だれか近くにいるようにする)はこれまで通り必要です。また,今年3月から発売になったインフルエンザの新薬があります。「ゾフルーザ」という名前の薬です。錠剤で,たった1回服用するだけで治療が終わります。効き目は「タミフル」と同等ですので,錠剤を服用できる人は,5日間服用が必要な「タミフル」より,この「ゾフルーザ」を選ぶことが多くなりそうです。まだ,錠剤しかありませんので,錠剤が飲めない人は,タミフルの粉薬になります。かなり小さな錠剤で,体重10kg以上あり,錠剤が服用できる人は適応があります。年齢は何歳でも構いません。そのうちに,顆粒剤も開発されるのではと思っています。

 吸入薬は,最初に使っていた「リレンザ」という1日2回5日間吸入する薬から,1回のみの吸入で済む「イナビル」が発売され,ほとんどの人が「イナビル」を選ぶようになりましたので,内服薬も「タミフル」からこの「ゾフルーザ」へ移っていきそうです。薬の選択肢が増えることは大変良いことですが,新しい薬は使ってみないと正しい評価ができません。多くの人が使えば,効果や副作用が明らかになります。この「ゾフルーザ」についても,新しい情報が出てきたら,随時紹介したいと思います。

風疹が関東で流行中

 関東地方で風疹が流行しています。8月26日までの1週間に84人発症し,今年の患者数が273人になりました。2017年は1年で93人でしたので,例年にない流行です。この風疹が拡がらないことを祈るばかりです。千葉県が最も多く,東京都が2番目で,首都圏で全体の7割を占めています。風疹の症状は,感染後2週間の潜伏期を経て,発熱と全身の細かい発疹,首のリンパ節が腫れます。風疹は「3日はしか」とも言われ,小さな子どもがかかると,発熱も発疹も3日間くらいで治るくらい,軽くて済みますが,大人がかかると治るまでに1週間くらいはかかってしまいます。また,脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症も時々みられます。治療方法はなく,ワクチンを受けて予防するだけです。集団生活ができるようになる時期は,発疹が消失してからになります。

 今の子ども達は,麻疹・風疹の混合ワクチンを1歳時と小学校入学前にそれぞれ接種していますので,風疹にかかることはまずないでしょう。28〜30歳の人は小さい時に1回は予防接種を受けています。30〜39歳は中学生の時に1回接種しています。39歳〜56歳は中学生の時に女性だけ1回接種しています。1回だけの接種では,まだ風疹にかかる可能性が数%残っています。28歳以下の人は,2回接種していますので,まずかかることはないと考えてよいでしょう。56歳以上の人は1回も風疹の予防接種を受けていないのですが,子供の時に,周囲で風疹がいつも流行していましたから,その時にすでにかかってしまっている人がほとんどです。風疹にかかってしまうと,終生免疫ができて,その後はかかることはありません。28歳から56歳の人で,まだ風疹にかかっていない人は,1回のみのワクチン接種ですので,抗体が低く,風疹にかかる危険性があります。妊娠可能年齢の方であれば,妊娠中に風疹を発症してしまうこともあります。母体の方は,1週間くらいで風疹の症状は自然軽快することがほとんどですが,胎児に対しては重度の障害を起こしてしまいます。先天性風疹症候群と言われ,難聴・白内障・心疾患・発達障害などを起こしてしまいます。重症の場合は流産になります。流行期には10万出生あたり,数人くらいの赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症していました。鹿児島市では,妊娠を希望される女性とその同居者に対して,無料で風疹抗体を検査して,抗体が低い人には,予防接種ができるように補助制度を設けています。詳しくは,スタッフへお尋ねください。