サンタ通信No229(08)表 H30.08.18発行

夏休みはいかがでしたか?

 暑い日が続きますが,皆さん夏バテしていませんか?今年は,夏に入った頃から猛暑が続き,まだ体が暑さに慣れていないこともあって,熱中症にかかる人が多かったようです。8月になってもまだ40℃近い気温の日が多く,高温注意報が常に出されているような状況です。さすがに,お盆を過ぎたら,少し暑さも峠を越えてほしいと期待しています。こんな猛暑でしたが,お子さんたちは何か楽しい出来事を体験できましたか?キャンプに行けたよとか,旅行をしたよとか,楽しい夏休みになった人もいれば,勉強が忙しくて,遊べなかった人もいたでしょう。それでも,家でした花火が楽しくて,一番の思い出だったと,いつまでも覚えているものです。子どもが何を楽しいと思うのか,お子さんの感性を大事にしてあげましょう。残り少ない夏休みが充実したものになればいいですね。

 さて,最近1週間(8月1日~8月7日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは感染性胃腸炎で、週7人でした。次いで、RSウイルス感染症5人,手足口病3人、溶連菌感染症2人、水痘2人、突発性発疹症2人でした。感染性胃腸炎(ウイルス性の嘔吐下痢症)が多いですね。嘔吐で発症し,遅れて下痢がみられるようになります。発熱を伴うこともあります。ロタウイルスやノロウイルスによるものが多いのですが,家族でかかることも多く,嘔吐・下痢の時の感染防御をしっかりすることが大事です。残念ながら,特別な治療はなく,水分や食事を少しずつ頻回に与え,回復してくるのを待ちます。多くの症例で,嘔吐は半日くらいすると落ち着くことが多く,その間を吐き気止めの座薬や内服薬で吐き気を抑えながら,水分を少しずつ与えて,乗り切ります。下痢は,数日で良くなることもあれば,2週間くらいかかることもあります。この感染性胃腸炎には,鶏刺しによるカンピロバクター菌や生卵によるサルモネラ菌などの細菌性胃腸炎も含まれます。夏休みに鹿児島に帰省して,郷土料理ということで鶏刺しを子どもが食べて発症することがよくあります。食べてから3日後くらいに腹痛と下痢があれば,カンピロバクター腸炎と考えてよいでしょう。下痢がひどければ,血便になることもあります。子どもには鶏刺しを食べさせないようにしましょう。

 RSウイルス感染症も流行が始まりました。以前は冬に多い感染症と言われていたのですが,迅速検査ができるようになってから,正確な患者数が分かるようになり,最近は夏に流行のピークが来ています。昨年も夏に流行がみられました。RSウイルス感染症はカゼに近いウイルスで,咳がひどいカゼという印象ですが,新生児や未熟児に感染してしまうと,無呼吸発作を起こし,突然息を止めてしまいます。そのため,突然死と間違えられることもあります。大人がかかってもコホン・コホンと咳が出るくらいですみますが,1歳未満の赤ちゃんは,ゼーゼーする呼吸と強い咳込みが出てきて,入院が必要になることもよくあります。咳が出ている人は,小さな赤ちゃんには接触しないようにしましょう。ウイルスの病気ですので,治療法はないのですが,吸入処置を行いながら,呼吸が落ち着いてくるのを待ちます。哺乳がうまくできない時は,点滴をします。発症後1週間くらいを乗り切れば,それ以上悪くなることはなく,徐々に咳が軽くなってきます。保育園で「RSの流行があるから検査をしてもらってください」と言われて,検査を希望される方がいます。でも,1歳未満の赤ちゃんは検査が認められていますが,1歳を過ぎたお子さんは,入院する場合と未熟児の場合だけが保険適応になります。

 手足口病は少なくなりました。今年の夏のピークは越えた感じです。同じ夏カゼのヘルパンギーナが本州では警戒注意報が出ている県もあり,流行していますので,夏休みで人の移動が多くなった後に,鹿児島でも流行が波及してくるかもしれません。9月頃まで注意しておきましょう。

サンタ通信No229(08)裏 H30.08.18発行

インフルエンザワクチン予約開始

 今年もインフルエンザワクチン接種を10月から開始します。予約はすでに始まっています。お早めにお申し込みください。接種料金は去年と同じ1回3,000円(1回目,2回目ともに同料金)です。接種回数は生後6か月から13歳未満は2回接種が必要で,接種間隔は2~4週間です。できるだけ4週間あける方が効果は高いとされています。13歳以上は去年から原則1回接種となりました。医学的な理由があり,免疫力が低下している人は2回接種できます。接種量は,3歳以上が0.5ml,生後6か月から3歳未満ではその半分量の0.25mlを接種します。ワクチンの副反応は,注射部位の発赤や腫脹が時々みられますが,無処置で数日以内に軽快します。昨シーズンは効果の高いワクチンを作るために,対象になるウイルス株を変えてみたら,製造工程でワクチンがうまくできず,結局は,その前の年と同じ対象株に戻して,作り直すことになりました。そのため,ワクチンの出来上がりが遅くなり,10月中旬からの接種になりました。その時に,ワクチンの絶対量が足りないことが判り,13歳以上は原則1回接種にしましょうと決められました。今年は順調にワクチンを製造できているようで,10月上旬からの接種ができると思われます。

 ワクチンの効果については,ワクチン接種したにもかかわらず,インフルエンザにかかったから,ワクチンが効かなかったと考える人がいます。予防効果は100%ではありません。インフルエンザワクチンは予防に60%効果があると言われています。これは60%の人がかからないという意味ではなく,予防接種を受けずに発病した人と予防接種を受けて発病した人の差を比べて,患者数を60%減らしてくれたという意味です。子どもでは大人よりも若干効果が低くなります。また,子どもの中でも,年長者と比べると年少者の方が効果は弱くなります。抗体の上がり方が弱いからですが,それでもワクチンを受けた人と受けなかった人とのインフルエンザ罹患率には差が出ます。インフルエンザワクチンは発症の予防にも,軽症化にも役立ちます。「ワクチンをしたのにかかったから,今年はもう受けない」と考えるのではなく,「ワクチンをしていたから,これくらいですんだ」と考えてください。昨年はワクチン製造が間に合わないうえに,流行が早く始まってしまったため,皆さん慌てましたが,やはり,インフルエンザの予防接種はなるべく早い時期に済まされることを勧めます。

メキシコは遺跡だらけ

 夏休みを1週間もらって,メキシコを旅してきました。出発の時に東京が台風の影響を受けて,旅行に行けるか心配でしたが,予定を前日に繰り上げて,東京で1泊しました。当初予定していた東京への便は飛んだようでしたが,前後の便には欠航が多く,予定変更して正解でした。でも,急に病院の休みを半日増やしたので,気づかずに来院された患者様も多かったのではと,申し訳なく思っています。

 メキシコには成田から全日空が直行便を飛ばしていて,13時間弱のフライトです。全日空の全フライト中,一番長いフライトになります。メキシコの首都はメキシコシティで,2,000万人が住んでいます。街の中央広場には,アステカ文明の遺跡が残っています。日本の室町時代の頃に栄えた文明ですが,そのアステカ帝国をスペインが征服して,アステカ人が建てたピラミッドなどの建造物を壊し,その石材を使って教会や宮殿を建てました。今もメキシコシティの町の下には,多くのアステカ文明の遺跡が埋まっていますが,現在は多くの建物がぎっしり立ち並んでしまい,発掘できないため,今も多くの遺跡の上で,普通に生活しています。郊外にはテオティワカン文明の遺跡があり,紀元前2世紀頃に建造された宗教都市で,太陽のピラミッドや月のピラミッドなどの遺跡に登ることができます。日本では弥生時代に相当します。石を使った遺跡なので,今もその威容に感激します。ユカタン半島のメリダという都市には,野口英世が3か月滞在して,現地の人に医療の指導をしてくれたため,彼の銅像があり,彼の名前を冠した研究所もユカタン医科大学にありました。日本人がいろいろな所で活躍してくれたため,メキシコ人には親日家が多いということでした。

 メキシコには,石灰質の土壌が侵食されて,大きな深い洞窟になったセノーテと呼ばれる泉があちこちにあり,地元の人の生活用水になっています。石灰の影響で,かなりカルシウム成分の多い水です。古代では,このセノーテは豊穣を祈って,雨の神様にいけにえを捧げる場所でした。そんな神秘的なセノーテですが,現在は,観光客が泉で泳いだり,ダイビングしたりしています。私も泳いでみましたが,暑い夏にひんやりとした泉の中に漂っているだけで気持ちが浄化され,現実を忘れさせるようなひと時になりました。ただ,旅行中のホテルで地元の人の結婚式があり,夜遅くまでパーティをしていて,うるさくて眠れませんでした。なんと終わったのは明け方5時でした。メキシコ人は,友達を家族のように扱い,大きな音にも寛容な民族だということを,身をもって実感しました。