サンタ通信No226(05)表 H30.05.18発行

手足口病に注意を

 ゴールデンウィークにお休みをいただき、シンガポールを一人旅してきました。この時期は、飛行機のチケットがなかなか取れないため、昨年末にどうにか手に入れたチケットでしたが、直行便はとれず、往路は中国の広州経由、復路は香港経由でシンガポールへ往復しました。全日空のチケットで、鹿児島、東京、広州、シンガポールの乗り継ぎになっており、人に関しては、そのまま乗り継ぎができましたが、荷物は最終目的地のシンガポールまで運ぶことができず、広州空港で荷物を取り上げて、再度航空会社のカウンターに預け直す必要があると言われました。同じスターアライアンス系統の航空会社、全日空からシンガポール航空への荷物受け渡しができないなんて、最初は信じられません。でも、中国では乗り継ぎでも荷物の確認作業をしなければならないようで、広州空港に夜10時頃に到着し、中国に入国する長い列に並び、荷物を預け直したら、今度は中国を出国する長い列に並び、ようやく夜中1時発の飛行機に乗れました。こんなに面倒な手続きは、中国以外の空港では、まずあり得ません。帰りの香港経由の時には、荷物はシンガポールから東京までそのまま運ばれましたので、香港は中国の中でも、規制は緩和されているようでした。そんな面倒があるから、中国経由のチケットが残るのですね。やはり中国という国は、旅行するにはまだまだ不便が残っています。現地でのネットの利用も制限が厳しく、中国が一党独裁制の社会主義国家だということを再認識しました。8年前に上海を一人で旅行した時には、それほど不自由を感じず、中国もだいぶ開かれた国になったと思っていましたが、今回の旅でやはり日本と比較すると、制限だらけだと痛感しました。

 さて,最近1週間(5月7日〜5月13日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは、溶連菌感染症と手足口病でともに週7人でした。次いで、感染性胃腸炎4人、咽頭結膜熱3人でした。夏カゼの代表である手足口病が目立つようになってきました。今流行している手足口病のタイプは、典型的な症状のものが多く、口の中の赤い発疹と掌や足底に水泡が数個ずつみられます。発熱はほとんどみられません。口の痛みが少しあるものの、水分摂取や食事摂取はできていて、点滴が必要になる方はいらっしゃいませんでした。診断後数日経過をみて、悪化がなければ集団生活も許可しています。手足口病は治療薬がなく、自然経過で治るのを待ちます。時に髄膜炎を起こしやすいウイルスのタイプがありますので、集団生活が許可されていても、サッカーをして走り回るなどの運動は避けなければなりません。室内で安静にすることが必要です。毛虫などの接触性皮膚炎も多い季節になりましたが、発疹をみて、手足口病かもと受診される方もいらっしゃいます。手足口病の発疹は痒みはほとんどありません。反対に虫刺されでは痒みを伴います。

 溶連菌感染症の流行は続いています。春から初夏にかけて流行のピークがみられますので、あと1か月くらいは今の規模の流行が続くのではと考えています。咽頭結膜熱(プール熱)も多くなってきました。この病気は夏に多くなります。発熱・のどの痛み・結膜炎がよくみる症状で、それ以外にも、嘔吐下痢の形をとるタイプ、出血性膀胱炎のタイプなど、様々な症状がみられます。ウイルスですので治療方法はなく、5〜7日後に解熱するのをじっと待つしかありません。幸い、入院になるような重症の方は少ないです。感染力は強く、くしゃみや咳による飛沫感染と手指を介した接触感染、結膜からの感染があります。解熱後2日経過すれば登校・登園できます。

 5月31日(木)は学会のため、休診となります。

 7月30日(月)は学会のため、17:00までの診療となります。

サンタ通信No226(05)裏 H30.05.18発行

麻疹について

 今年3月に台湾から観光にきた30代男性が沖縄で麻疹(はしか)を発症して、接触した人たちに感染を拡げ、これまでに150人を超す患者数になってしまいました。幸いなことに現在まで鹿児島県では発生していません。でも、たった一人の患者さんから150人に感染してしまうなんて、やはり麻疹は怖い病気ですね。この機会に、麻疹について勉強をしてみましょう。

 麻疹は、麻疹ウイルスの感染によって引き起こされる急性感染症で、発熱と発疹が中心の病気です。感染してから発病するまで約10〜12日の潜伏期間があります。症状は、咳、鼻水、めやになどの症状とともに、38℃以上の発熱が出てきます。この状態が数日続いた後、一旦解熱しかけて再び高熱になり、この時に全身性の発疹が出現し、高熱も4〜5日続きます。治療は特別なものはなく、症状に合わせて、抗生物質を使ったり、咳止めを使ったりします。感染から回復期までの約1か月間は免疫機能が低下し、肺炎や脳炎などの合併症で命にかかわる事態になることもあります。

 日本は平成27年にWHOから麻疹の排除状態にあることが認定されました。日本から麻疹が排除できたと認定されたのです。それでは、麻疹の流行がなくなったから、予防接種も必要ないかというと、今回みたいに海外から入ってくることもありますので、国内で流行することがないように、すべての国民に麻疹の免疫をつけておく必要があります。平成26年にオーストラリア、モンゴル、韓国が麻疹排除認定されましたが、平成28年にモンゴルで人口100万人当たり1,000人を超える大規模な麻疹の流行が発生し、モンゴルは麻疹の流行地域に戻されてしまいました。日本も流行を抑えるだけの予防接種率を達成しておかなければ、モンゴルの二の舞になります。今、麻疹の予防接種は1歳と就学前の時期に接種するようになっています。95%以上の接種率があれば、大きな流行はないとされています。鹿児島県は1歳での接種率は96%と高いものの、就学前の時期は90%と10人に1人が受けていません。予防接種が始まったのが昭和53年です。それ以前に生まれた方は、ほとんど麻疹にかかっているはずです。一度かかると、終生免疫ができて、もう麻疹にかかることはありません。終生免疫ができるのなら、実際に麻疹にかかった方が良いように思われますが、死亡する危険性も高い病気で、先進国でも患者1,000人に1人の割合で死亡する危険性があります。それほど怖い病気ですので、予防接種が大切になるわけです。予防接種により95%の人には抗体ができて、それが終生免疫になると思われていましたが、予防接種でつくられた免疫は、麻疹が時々流行するような環境では、常に刺激を受けるため、抗体が下がることはないのですが、大多数の人が予防接種を受けて、流行がなくなると、刺激を受けられなくなり、抗体は低下し、麻疹にかかってしまうことが分かってきました。そのため、1回接種で良いとされていたのを、平成18年から2回接種に変えました。それまでの1回接種しかしていない人や、接種をしていない人がたくさんいますので、外から持ち込まれる麻疹が国内で流行してしまう危険性が残っています。2年前には関西空港職員の集団感染があり、33人が麻疹と診断され、発生から24日後に終息しました。この時は関空以外のところに波及しなかったことが幸いしました。でも、今回の沖縄の流行は、各地に拡がってしまいましたので、終息にはもっと時間がかかると思われます。1人の患者から周囲に感染がなかったかを確認するためには、潜伏期の2週間くらいを待つ必要があります。その確認中に新たな患者が出ると、その人の周囲に新たな感染者がいないかを2週間かかって調べる必要が出てきます。しかも、麻疹の発熱や発疹が確認された時には、すでに他の人へ感染させてしまっている可能性が高いので、流行を抑え込むのは非常に難しいのです。

 今回の麻疹騒動で、ゴールデンウィークに沖縄旅行する予定だが、乳児に麻疹ワクチンを受けさせたいという方がいらっしゃいました。残念ながら、接種してから2週間以上経過しなければ効果がないこと、今接種しても間に合わないことを説明して、その方には接種しませんでした。普段から予防接種をしっかり受けておくことが大事です。ワクチンや麻疹の抗体検査など心配な時は、どうぞ電話で相談されてください。