サンタ通信No227(06)表 H30.06.18発行

手足口病が流行中

 梅雨の時期は、雨と晴れが交互にきて、その度に蒸し暑さが強くなり、夏がそこまできていることを感じさせます。私は夏が大好きですので、夏休みに何をしようかと、ワクワクするのですが、あまりにも暑いと、さすがに無理をしたくないなあと、エアコンの効いた室内で過ごすことも多くなりました。熱中症で医師が倒れてしまうのは、恥ずかしいですものね。皆さんもお子さんを連れて外出される時は、水分補給を忘れずに、なるべく日陰で過ごさせるなどの配慮をしてあげてください。

 さて,最近1週間(6月4日~6月10日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは手足口病で、週18人でした。次いで、溶連菌感染症9人、感染性胃腸炎2人、突発性発疹症2人、RSウイルス感染症1人、流行性耳下腺炎1人でした。手足口病の数が急速に増えてきました。5月末に鹿児島県で手足口病の発生件数が警報値5.0を超えたため、県は流行発生警報を発令しました。最新の情報では、鹿児島市内で10.31人になっています。1医療機関あたり週に10人発生している割合です。軽症の手足口病は、よく見ると手足に小さな発疹があるくらいで終わります。手足口病だと気づかないまま、普通の生活をしているお子さんもいるのではと思います。少し重くなると発熱を伴いますが、38℃以下のことが多く、1~2日間で解熱します。発疹は数日経過すると、枯れた感じになり、回復期に入ります。この手足口病の原因ウイルスは、コクサッキーウイルスA16型やエンテロウイルス71型、コクサッキーウイルスA6型などいろいろなウイルスが引き起こしますので、出てくる症状もいろいろなタイプがあります。発疹の程度や出現場所も様々です。中でも、エンテロウイルス71型は神経系の症状を呈することがあり、ウイルス性の髄膜炎や脳炎を起こしやすいと言われています。今流行中の手足口病には神経症状が出ていませんので、エンテロウイルス71型は少ないのかもしれません。口の中の症状も、口内炎や赤い発疹がみられることが多いのですが、たまに大きな口内炎が口腔粘膜や舌にできてしまい、水分も摂れない状態になることがあります。小さなお子さんでは脱水症状を起こす場合があり、このような時は点滴処置が必要になります。水分や食事がしっかり摂れるなら、まず心配はいりません。手足口病と同じ仲間のヘルパンギーナは、まだ流行がみられません。ヘルパンギーナも口の中に口内炎ができ、高熱が数日続きますが、自然に軽快します。経過中に発疹は出ません。例年だと7月を中心に流行があり、夏場の感染症ですから、そろそろ多くなるのかと思っていますが、これまで数人診ただけです。手足口病もヘルパンギーナも夏カゼの代表ですので、8月くらいまでは注意が必要です。

 溶連菌感染症もまだ多いです。夏になると流行は小さくなってくる傾向がありますが、夏休みまでは続きそうな感じです。溶連菌感染症の主な症状は、発熱と咽頭痛です。のどを診ると、のどの奥に赤い発疹があり、検査をしなくても溶連菌だろうと診断できます。また、からだに赤い小さな発疹が広がったり、苺のようなブツブツが目立つ舌も苺舌と表現されますが、溶連菌を思わせる所見になります。熱が高いにもかかわらず、咳や鼻水などのカゼの症状は伴いません。溶連菌は抗生剤を1日服用すれば必ず解熱します。反対に、抗生剤を飲み始めたのに、なかなか解熱しない場合は、溶連菌以外の病気を考えます。集団生活は抗生剤を服用後24時間経過すれば、他の人への感染力はなくなりますので、その時期に登園・登校を許可しています。抗生剤は1~2週間の服用が必要です。

 

 7月15日(日)と7月30日(月)は17:00までの診療です。

 8月5日(日)は当番医となります。

 8月9日~15日は休診となります。8月7日(火)と8月17日(金)は診療致します。

サンタ通信No227(06)裏 H30.06.18発行

「産後うつ」について

 今年5月に小児科医会の講演会があり、産後うつについてためになる話が聴けました。厚生労働省の平成25年度の調査によると、約10人に1人が産後うつを経験するとのことです。産後うつは、ホルモンバランスの乱れや子育てへの不安、生活のストレスなど、出産後の母親が直面する様々な問題によって引き起こされます。それが深刻化すれば、虐待や育児放棄、自殺を招いたりする恐れがあり、それらを防止するために産後2週間と1か月の2回、健診を受ける際の費用を国が助成することになり、産婦人科は妊産婦の心のサポートに乗り出しました。そして、子育ての悩みなどの相談もできるようにし、比較的早い段階から母親の支援が行える体制をつくっていく計画のようです。当然、小児科も産後のうつに対し、赤ちゃんの健診を通して、育児環境が良好かという視点で、診ていく必要が出てきました。

 この講演を聞くまでは、妊娠・出産が母親にとっては、赤ちゃんを授かり、幸せ一杯の出来事だとばかり思っていました。しかし、東京都23区の10年間の妊産婦死亡が89件あり、出血などの病死が19件、自殺が63件、その他が7件でした。出産時の出血で亡くなる危険性はもちろん認識していましたが、その3倍以上が自殺だとは知りませんでした。自殺の時期は、妊娠中は妊娠2か月という時期に突出して12件と多く、産後は3か月が5件、4か月が9件、5か月が3件、6か月が5件と3〜6か月に多くなっています。自殺した人に精神疾患があったのかをみると、妊娠中の自殺ではうつ病が35%、産後では、元々のうつ病が10%、産後うつ病が33%でした。これらのうつ病を早期に発見して、治療に結びつければ、自殺を防げるわけです。

 産後うつ病の危険因子としては「精神科通院歴がある」「望ましくない出来事(家族の病気や死など)」「夫からの支援不足」「親との不良な関係」があります。それは、夫や実母が精神的なサポートをしてあげれば、うつを発症しない、あるいは乗り越えられるということです。妊産婦が夫や実母に、自分の本音を言えれば、妊娠の悩みや、産後の心の疲弊に周りが気付いてあげられ、心療内科や精神科での治療にたどりつきます。本音で言える人がいないと、一人で悩んでしまい、自殺に結びついてしまいます。妊娠・出産が幸せいっぱいの時期ではなくて、周囲の人のサポートを必要とする時期だと認識しなくてはなりません。産後は3時間ごとに授乳し、おむつを替えて、新米おかあさんは大変です。赤ちゃんが強く泣けば、何か病気だろうかと心配し、自分の睡眠もままならない生活で疲れ、こんなはずじゃなかったと、赤ちゃんを憎らしく思うことも出てきます。夫は仕事があるからと、育児に消極的になるのではなく、おかあさんの負担をいかに減らせるのか考えて、積極的に赤ちゃんのために行動しなければなりません。社会も育児休暇を勧めていますが、日本では、育児のために男が休みを取るのには抵抗があるようです。幸せな家庭をつくるために、育児を堂々と男女半分ずつにできる社会が待たれます。

最近の新聞記事を読んで感じること

 最近の新聞の社会欄を読むと、殺人や子どもの虐待など、胸の痛む記事が目につくことが多いです。昔も殺人事件はありましたが、最近は人の心を捨ててしまったような犯行が多くなりました。私が子どもの頃は3世代が一つ屋根の下に暮らしており、生きていくための教訓を祖父母が口やかましく、子供や孫に諭したものです。それが今は、親子だけの核家族化が進み、自己中心的な考えで生活しても、それを正してくれる人がいないと、どんどん人の道を外れる生き方になってしまいます。たとえば、再婚した相手に子どもがいて、愛着がわかないまま、その子に食事を与えなかったり、暴力を振ったり、最終的には折檻して殺したというケースがよくあります。その子が言うことを聞かないから「しつけ」だったと、言い訳することが多いようです。子どもは、良いところを見つけて、ほめてあげると、どんどん伸びていくものです。本当に大事な場面では、しっかり叱ることも必要ですが、いつも叱ってばかりではしつけになりません。子どもに対しては、愛情をもって見守ってあげること、その子の成長を楽しみにすることが大事です。

 また、むしゃくしゃして、人に刃物を向ける人がいるかと思えば、女性を誘拐して遺体を山に埋めてしまう人もいます。自分の感情にまかせ、相手の気持ちやその人の家族へ思いが及ばないのだと思います。他人に対して、その人がどんな気持ちで生きているのか、その人の周りにどれだけの大切な人がいるのか、そこに思いを馳せることができれば、人に危害を加えるなんてことはできないはずです。今の社会を生きてゆくのに大切なことは、そんな人にかかわらないように、無関心でいるのではなく、心を豊かにするような教育や生活環境をつくることだと思います。隣にどんな人が住んでいるのか分からないなんて、おかしな社会だと私は思います。昔は町内会で霧島へ一泊旅行に行ったり、地元の祭でハッピを着て踊ったりと、いつも近所の人と顔を合わせるものでした。そんな生活が、豊かな心を育んでいたような気がします。