サンタ通信No222(01)表 H30.01.18発行

早くもインフルエンザ大流行

 年明けに図書館に行ったら、福袋が準備してありました。面白い趣向をするなぁと感心しましたが、福袋にあまり手を伸ばす人がいません。準備してくれた人の苦労を考え、私は大きな袋を借りました。「美しい景色、ブルーの世界」と書かれた袋を家に帰って開けてみると、幻想的な写真を主題にした本が3冊入っていました。図書館の休館日がちょうど1週間あるため、これらの本は1か月近く借りられることになりました。ゆっくり読む楽しみが増えました。

 さて,最近1週間(1月8日~1月14日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは、インフルエンザで週127人でした。次いで、溶連菌感染症5人、感染性胃腸炎4人、手足口病2人、水痘2人、RSウイルス感染症2人、咽頭結膜熱1人、流行性耳下腺炎1人でした。この週に当番医が含まれていますので、インフルエンザが大幅に増えていますが、当番医の日以外も患者数が大きく増えています。今年はインフルエンザのピークが早い印象があります。例年は、流行終盤に多くなるB型が、今6割を占めています。このまま終盤になるには早すぎますので、今シーズンはB型が大流行するパターンかもしれません。数年間B型の大きな流行がないと、抗体が低い人が多くなり、数年に1度の割で大流行を起こすのです。ところで、インフルエンザの早期診断は治療の上で大事なことですが、あまり神経質になって何度も病院受診をするのは考えものです。ある方は、1日の間に3回受診して、その度にインフルエンザの検査を受けていました。他の病院で発熱後3時間くらいで検査し、陰性。8時間後に再度検査し、陰性。土曜日の遅い時間まで診療している当院を受診され、ようやく陽性が出て、治療開始になりました。発熱後12時間待って、病院を受診されたら、1回の受診で済んで、お子さんの負担も少なくて済みます。インフルエンザの薬は病気を治す薬ではなくて、病気の進行を食い止めるだけです。実際は自分の体が熱を上げて、免疫機構を働かせて、ウイルスを退治して病気を治すのです。そのため、薬がなくてもインフルエンザは治りますし、発熱期間が少しだけ長くなりますが、その分、抗体上昇が期待できますので、インフルエンザにかからずに済む期間が長くなります。20年前までは、インフルエンザは十分な栄養と睡眠をとらせて、安静にしていれば治る病気だったのです。今でも海外ではインフルエンザの時には病院を受診しません。医療費が高く、かかりつけ医を受診するのに敷居が高いからという理由と、自然に治した方が免疫力がつくからという理由です。免疫力の弱い高齢者や赤ちゃんは海外でも病院を受診して、検査や治療を受けます。命に関わる可能性があるからです。脳炎や脳症などを心配されて早く治療をしたいと考える人もいますが、治療を始める頃にはけいれんが頻発していたり、意識障害が始まっていることがほとんどで、早期治療では防ぐことができません。現在、脳炎・脳症を防ぐ方法は、予防接種を受けることだけです。予防接種していても罹患はしますが、重症化は防げます。

 インフルエンザ以外の感染症は、溶連菌感染症と感染性胃腸炎が少し流行しています。ただ、インフルエンザの大流行の影に隠れ、あまり目立ちません。感染性胃腸炎は嘔吐と下痢が主な症状ですので、インフルエンザとは明らかに区別できます。溶連菌感染症は発熱が主な症状になるため、インフルエンザとの鑑別が難しいです。インフルエンザが陽性で、治療したのになかなか熱が下がらない場合、溶連菌感染症が合併していたということもよくあります。発熱患者を診察する時に、のどの赤みが強い時には、溶連菌も疑って、インフルエンザと溶連菌を両方検査する必要があります。

 

2月11日(日)建国記念の日は当番医になっています。混雑が予想されますので、救急患者優先となります。

サンタ通信No222(01)裏 H30.01.18発行

高熱と意識障害

 インフルエンザが流行すると、お子さんが「あそこに猫がいる」「人がこっちにやって来た」「お金がチャリンチャリン鳴っている音がする」など、おかしなことを言い始めたと病院に問い合わせがよく来ます。ほとんどは熱による意識混濁で、せん妄と言われるものです。インフルエンザ以外の病気でも高熱が出る場合はよく見られます。このせん妄は一時的なもので、解熱剤を使ったり、首や脇の下を冷ピタで冷やしながら体温を下げてあげると、意識は正常に戻り、周囲のことが正しく理解できます。心配しなくてはならないのがインフルエンザ脳症で、この時もせん妄が初期に見られることがあります。この場合は、意識障害が続きます。けいれんも起こりやすくなります。高熱でおかしなことを言い始めた時には、熱を下げる努力をしながら、意識が正常に戻るのかを確かめることが大事です。

 2005年にインフルエンザの患者がタミフルを服用して、アパートの窓から飛び降りるという異常行動で2名死亡し、新聞が大きく取り上げたことから、厚生労働省はタミフルの服用を10歳代で禁止しました。今も特別な理由がなければ、処方できません。小児科学会は異常行動はタミフル・リレンザ・イナビルという薬の種類に関係なく、また薬服用の有無も関係なかったとコメントを出していますが、国の方針としては、10歳代のタミフル服用はまだ使用差し控えが継続されています。2015〜2016年シーズンの異常行動報告書では薬を服用していない方がタミフル・リレンザ・イナビル服用例よりも重度の異常行動の発症率が高いと報告されました。薬を服用しなくても、高熱があれば異常行動を起こし、飛び降りなどで死亡する例が未だにあるため、国から注意勧告がありました。これまでインフルエンザにかかったら治療後2日間は子どもを一人にしないことを指示していましたが、今回はより具体的に対策を示しています。

(1)高層階の住居の場合

 *玄関や全ての部屋の窓の施錠を確実に行う(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む)

 *ベランダに面していない部屋で寝かせる

 *窓に格子のある部屋で寝かせる(窓に格子がある部屋がある場合)

(2)一戸建ての場合

 *(1)に加え、できる限り1階で寝かせる

 国の注意勧告は役人が机の上で考えた指示ですので、現実離れしていますが、突然走り出したり、飛び降りたりする可能性を考えて、対策をしておきなさいということです。

駐車場の交通整理員について

 冬の小児科外来は、患者が急に多くなり、駐車場が混雑します。特にインフルエンザが流行している時の日曜日はすぐに駐車場から車があふれてしまいます。駐車待ちの列を横目に、逆方向から駐車場に車を入れてしまう方がいて、時々トラブルになることがあります。病気のお子さんを抱えながら、車の中で長く待っているとイライラします。完全予約制にすれば、そのイライラは無くなるのですが、小児科はお子さんの急変にも対応しなければならず、予約を優先しながら、予約なしで来院された方にも対応しています。

 ところで、患者さんからも、職員からも、駐車場の交通整理をお願いされるのですが、どこの警備会社も日曜日の対応が難しいと言われます。寒い中、外に一日中立ちっぱなしの仕事は、なり手がいないのだそうです。当番医の時は相当前からお願いしてようやく来てもらっています。今、働き手が少なくなり、重労働や休みの少ない職場は、人手を確保するのに苦労します。駐車場整理の仕事などは、片言の日本語ができれば勤務できますので、東南アジアの若い人で仕事がなくて困っている人をもっと受け入れても良いのではないでしょうか。1月末から2月にかけての日曜日は、知り合いに無理やり頼み込んで、どうにか交通整理をお願いできるようになりましたが、これからの日本はもっと人手不足になっていきます。それに対して早めに手を打つ必要がありそうです。