サンタ通信No219(10)表 H29.10.18発行

行楽の秋に霧島へ

 お休みが取れたので,久しぶりに霧島に1泊してきました。新川渓谷の温泉は炭酸塩素塩泉で,体から炭酸の泡がいっぱい出てきます。湯上がりはさっぱりと気持ちがいいです。美味しい食事で心も幸せになりました。翌日は,秋の風景を見ようと,えびの市のグリーンパークえびのを目指しました。コカコーラえびの工場の敷地ですが,コスモスが7分咲きでした。ちょうど工場はお休みの日で,訪れる人も少なく,10人くらいがコスモスの美しい景色に見とれていました。そこに観光案内板があって,毘沙門滝がパワースポットと書かれていましたので,そこを目指しますが,簡略された地図をちらっと見ただけでしたので,道が分からず,諦めて帰り始めた時に,車のナビに毘沙門滝の文字を見つけました。やっとのことで毘沙門滝に辿り着きました。滝の近くまで階段が設置されています。柱状節理の岩盤から流れ落ちる滝は,そこだけが涼しく感じられました。辿り着くまでにパワーを吸い取られて,滝からパワーをもらって,私のパワーはプラスマイナスゼロでした。霧島が新燃岳や硫黄山の噴火で観光業の人たちは大変かなと思いながら,クルソン峡,毘沙門滝,メガネ橋などの景観を結ぶトレイルを整備すれば,トレッキングが好きな人には,素晴らしい観光資源になりそうだと思いました。紅葉の季節は,きっと綺麗なことでしょう。

 さて,最近1週間(10月10日~10月16日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは手足口病で10人でした。それ以外は,ヘルパンギーナ4人,感染性胃腸炎4人,溶連菌感染症3人,RSウイルス感染症2人,おたふくかぜ2人でした。夏カゼの手足口病とヘルパンギーナがまだ目立ちます。まだ気温が高いからでしょうか。東京や東北は秋を通り越して冬に近い寒さになっていて,都心の最高気温が14℃というニュースを聞いて,びっくりしました。何れにしても,手足口病とヘルパンギーナはこれから増えることはなく,次第に減少していきます。手足口病の流行終了が,11月~12月にずれ込むことはありますが,今年中には流行は終了するでしょう。感染性胃腸炎はノロウイルス,ロタウイルスによる胃腸炎が小さな流行で続いています。吐き気止めの座薬を使うと吐き気がおさまって,子どもは水分が摂れるようになります。座薬使用後1~2時間が,効き目は最も強いので,その時に水分やスープなど摂らせるようにしてください。胃腸炎の時に「お腹を痛がるので,痛み止めをください」という依頼をよく受けます。胃腸炎の時は,胃腸がグルグルと普段よりも強く動きますので,それを抑えるには,胃腸の動きを止める薬しかありません。いわゆる下痢止めです。ウイルスによる胃腸炎の時には,下痢止めは使用しません。体に入った悪いウイルスを下痢で早く外に出すという,自然の体の働きを止めてしまうからです。痛がる時は,お腹をしばらくマッサージしてあげると,痛みは少し和らぎます。時々強い痛みを訴えることもありますが,長くは続きません。激しい痛みが長く続く時は,腸重積や腸捻転などの危険な病気のことがありますので,必ず病院でお腹を診てもらうことが必要です。

 溶連菌感染症では,のどを診てすぐに溶連菌だとわかる典型的なのどの赤さがある人もいれば,あまり赤くないけど,周囲に溶連菌の人がいるから,念のため検査したら陽性だったという場合もあります。周囲に溶連菌の人がいたかどうかが,診断のポイントになります。家庭やクラスで溶連菌の人がいれば,積極的に情報を提供してください。インフルエンザが鹿児島市内でも週に1けただった患者数が20人くらいになってきました。急に高熱になった人には,インフルエンザの検査が必要な季節になってきました。インフルエンザの予防接種も始まりました。今年はワクチン不足が予想されています。接種はお早めに。

 

 11月26日(日)は当番医です。救急患者優先です。

 年末年始は,12月28日午後から1月3日まで休診とさせていただきます。

 1月5日(金)は通常診療致します。

サンタ通信No219(10)裏 H29.10.18発行

手足口病について

 手足口病の原因ウイルスは,エンテロウイルス属のウイルスで,エンテロというのはギリシア語で腸という単語ですが,その名の通り,このウイルスは腸管で増殖します。このウイルスには,小児麻痺の原因ウイルスであるポリオウイルス,最初に分離された地名から名付けられたコクサッキーウイルス,病気との関連が不明であったエコーウイルスなどがあります。コクサッキーウイルスはA群とB群に分類され,A群はマウスで弛緩性麻痺を起こし,B群は強直性麻痺を起こします。手足口病は,コクサッキーA16型とエンテロウイルス71型がほとんどを占めていました。コクサッキーA16型は典型的な手足口病で,あまり熱も出ず,発疹も掌や足底に小さな水泡が出て,口腔内にも赤い水泡が見られます。予後は良好で,数日すれば,そのまま治まります。エンテロウイルス71型も,普通は発熱と手足の発疹,口の中の水泡で終わるのですが,稀に髄膜炎や脳炎など重症化する例がみられることが特徴です。命に関わる合併症で,1997年にはマレーシアで,1998年には台湾で大規模な手足口病の流行が発生し,多くの子どもが重症化あるいは死亡したとニュースになりました。その後,ベトナムや中国でも同じような大規模な流行と,それに伴う死亡者が手足口病で起こりました。特に中国では,2008年以降,ほとんど毎年,大きな流行が起こり,2010年は900人以上の手足口病での死亡が報告されています。このため,中国では手足口病のワクチンが開発されて,実用化されています。

 ところで,ここ数年,日本の手足口病ではコクサッキーA6型が目立つようになってきました。このタイプは,発疹が手足だけでなく,全身に及ぶことがあります。また,発疹の前に高熱が出ることがあります。普通は5歳未満に多い手足口病ですが,A6型では,年長者も発症することがあり,発疹が典型的な水泡にならず,大きな丸い紅斑になることがあります。そのため,蕁麻疹やアレルギー性疾患を疑われることもあります。また,治った1ヶ月後くらいに,爪に横に走る溝に気づかれることがありますが,この爪の症状は,変形を残さず治癒します。ちょっと違った症状になりますので,手足口病の診断がされず,他の病名がついてしまうこともあります。病気は,教科書の通りに症状が出るわけではありません。実際の診療では,手足口病とはちょっと違うけど,でも仲間の病気かなと思いながら,また同じ症状の人がいると,これが手足口病の一つのタイプだと気がつくわけです。

 手足口病は,残念ながら治療法はありません。ですから,予防しかないのですが,人から人へ感染するウイルスで,人の腸管で増えて便に排出されます。病初期の口の中に発疹が出たり,発熱が出たりする時期(発症後1週間)は,唾液中にウイルスが存在します。飛沫感染で周囲に感染させたり,唾液のついた手で物を触ったりすれば,ウイルスは通常の環境では容易に失活しませんので,接触感染も起こります。病気が治った後も腸管内にウイルスは長く残り,便中に2〜4週間排出されます。この時期は,糞口感染と言って,便が付いたオムツを触ることでウイルスが手に付き,口に入ることで感染します。感染してから発症するまでの潜伏期は3〜6日です。口に入ったウイルスは,腸管の中で増殖し,一部が血液中に入り,ウイルス血症を起こし,各臓器に運ばれます。その過程で,ポリオのような麻痺を起こすこともあれば,無菌性髄膜炎,脳炎などの神経症状を引き起こすこともあるわけです。手足口病になった後,1ヶ月くらいは,便やオムツの取り扱いに注意し,手洗いを確実に行うことが周囲に手足口病を拡げない重要な対策です。保育園などの登園許可証には「他児への感染のおそれがないため,○月○日より登園してよいことを証明します」などの文言がありますが,登園の目安は,発熱がなく,食事が摂れて,全身状態が良ければ許可しています。感染する危険性は残っているものの,登園許可を出しているわけで,手足口病やヘルパンギーナでは長期にわたり感染する危険性は続いていることを,保育者は理解して欲しいですね。

インフルエンザワクチンのご協力を

 今年のインフルエンザワクチンが足りないというニュースを聞いた方も多いと思います。毎年同じようにワクチンを作っていますが,当たり外れがないように,一番流行しそうなウイルス株をもとにワクチンを作ります。今年は,これまでと違う株を選んで,新しいワクチンを作り始めたのですが,うまくウイルスが増殖せず,ワクチンを作るのに失敗。作成途中で,昨年の株に戻して,去年と同じワクチン製造にし直したという事情で,各メーカーとも最初のつまずきのために,必要な数が揃わなかったのです。そのため,国は「13歳以上の人は,1回接種が原則」と宣伝し始めました。これまでは,入試を受ける人など,2回接種を希望される方も多かったので,今年は1回接種に協力していただきながら,1月頃になれば,遅れた分のワクチンが供給されてくるのではと考えています。13歳以上で2回目を是非と希望される方は,その頃に問い合わせてみてください。もちろん13歳未満は2回接種が必要です。