サンタ通信No217(08)表 H29.08.18発行

夏休みはどうでした?

 夏休みも残り少なくなってきました。お子さん達はいろいろな思い出ができたでしょうか。台風で計画が狂ってしまったり,お子さんの急な発熱でキャンセルになったりと子ども連れの行事は大変です。それでも,子どもの頃のサマーキャンプや旅行などは,深く記憶に刻まれます。まだ,どこにも連れて行っていないという方は,日帰りでもいいですから,是非考えてみましょう。霧島のウォーキングと温泉はいかがでしょうか。新川渓谷周辺では遊歩道や日帰り温泉が楽しめますよ。車がない方は,慈眼寺公園の川遊びとそうめん流しもお勧めです。

 さて,最近1週間(7月30日~8月6日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは手足口病とヘルパンギーナでそれぞれ7人ずつでした。それ以外は,溶連菌感染症6人,RSウイルス感染症4人,感染性胃腸炎2人,おたふくかぜ2人でした。夏カゼの手足口病とヘルパンギーナが流行していますが,先月と比べ,少し減少傾向になってきています。峠は越えたようです。これらの夏カゼは,ウイルスによる感染症ですので,特効薬はなく,熱が高ければ解熱剤を使って全身状態を良好に保ち,他の人への感染防御に注意するくらいです。病気の急性期は飛沫感染で伝染し,回復期には糞口感染が2週間くらい起こる可能性があります。おむつを触った時はしっかりと手洗いをしましょう。

 溶連菌感染症も流行が持続しています。大きな流行ではありませんが,年間を通してコンスタントに発生しています。感染力が強いので,学校や家庭内での流行が続きます。溶連菌感染症の症状は,発熱と咽頭痛です。のどの奥をみると,粘膜が赤くなっています。治療は抗生剤を内服しますが,大多数の人が服用1日で解熱するため,その後の抗生剤内服ができていなかったり,飲み忘れがあったりしやすいです。最低7日間の服用を徹底しないと,再燃しやすいのです。溶連菌感染症の時に尿検査をすることがあります。これは,溶連菌感染後急性糸球体腎炎を起こしていないかを調べるものです。昔は溶連菌感染後2週間くらいで尿検査を行い,異常がなければ腎炎をおこしていないと判断していました。最近は,あまり尿検査をしなくなりました。急性糸球体腎炎を合併する人が少なくなっており,しかも1回の尿検査では,腎炎を見逃すことが多いからです。日本小児科学会雑誌に最近,「溶連菌感染後の尿検査の必要性」という論文が掲載されていました。それによると,35人の溶連菌感染後急性糸球体腎炎のうち,検尿で発見できたのは3人だけで,それ以外の人は,まぶたのむくみやコーラのような色の尿で発見されています。また,検尿で発見された3人も,発見時にまぶたのむくみがみられていました。そのために,検尿で見つけるよりも,まぶたのむくみがあるかどうかと,目で見えるような血尿に注意しておけば,検尿は必ずしも必要ないという意見でした。また,腎炎を起こす時期も2~4週間後と幅があるため,溶連菌感染症の後1か月くらいは,お子さんのむくみや尿の色をしっかりみてあげてくださいね。

 RSウイルス感染症が多いです。この病気は,咳や喘鳴が強くなるウイルス性のカゼですが,1歳未満の乳児がかかると,呼吸困難が強くなり,哺乳や食事ができなくなり,入院になる場合が多いです。特に新生児は,ほとんど入院になります。無呼吸発作を起こし,突然死することもあるからです。このため,3か月未満の赤ちゃんが咳をする時には,RSウイルスを検査することが多いです。この検査は,1歳以上の場合は,保険適応がなく,自費での検査になってしまいます。これは,1歳以上の人がRSウイルスに感染しても,重症になることが少なく,治療法もないからです。ただし,入院になるような症例では1歳を超えていても保険が適応になります

 

 8月27日(日)は当番医です。救急患者優先です。

 9月18日(月)~20日(水)が休診となります。代わりに9月22日(金)が診療日となります。

サンタ通信No217(08)裏 H29.08.18発行

インフルエンザワクチン予約開始

 今年もインフルエンザワクチン接種を10月から開始します。予約はすでに始まっていますので,お早めにお申し込みください。接種料金は去年と同じ1回3,000円(1回目,2回目ともに同料金)です。接種回数は生後6か月から13歳未満は2回接種が必要で,接種間隔は2~4週間です。できるだけ4週間あける方が効果は高いとされています。13歳以上は1回または2回接種とされており,2回接種する場合は,接種間隔は1~4週間とされています。接種量は,3歳以上が0.5ml,生後6か月から3歳未満ではその半分量の0.25mlを接種します。ワクチンの副反応は,注射部位の発赤や腫脹が時々みられますが,無処置で数日以内に軽快します。

 ワクチンの効果については,ワクチン接種したにもかかわらず,インフルエンザにかかったから,ワクチンが効かなかったと考える人がいます。予防効果は100%ではありません。ワクチン接種が予防に60%効果があると言われています。これは60%の人がかからないという意味ではなく,予防接種を受けずに発病した人と予防接種を受けて発病した人の差を比べて,患者数を60%減らしてくれたという意味です。子どもでは大人よりも若干効果が低くなります。また,子どもの中でも,年長者と比べると年少者の方が効果は弱くなります。抗体の上がり方が弱いからですが,それでもワクチンを受けた人と受けなかった人とのインフルエンザ罹患率には差が出ます。今年も是非,予防接種を受けましょう。

シベリア抑留日本人墓地を訪ねて

 私はお盆休みを利用してシベリアのバイカル湖に行ってきました。どうしてそんな所を選んだのかというと,一番は,涼しそうだったから。二番は,世界一の透明度を持ち,世界の淡水の2割を占めるという広大な湖を見たかったから。シベリアの夏は,さすがに涼しく,現地ではダウンジャケットを着ていました。ロシアは自然が豊かで,広大な国でした。途中でシベリア鉄道にも乗りました。シベリア鉄道は私の学生時代の夢でした。モスクワからウラジオストクまで1週間かけて走り続けます。今は,さすがにそんな休みがとれないので,ウランウデからイルクーツクまで8時間だけ乗ってみて,シベリア鉄道の雰囲気をちょっぴり楽しめました。その旅の中で,イルクーツクの日本人墓地を訪れることができました。第二次世界大戦の戦後にシベリア抑留されて,そこで亡くなった日本人の墓地です。慰霊塔とともに名前を記した墓標が建てられていました。私の生まれる前に,日本は終戦を迎えていますが,終戦後に満州や樺太で敗戦を迎えた日本の軍人や労働者が日本に帰れずに,労働力としてシベリアに連れて行かれました。冬場は-50℃にもなる極寒のシベリアに,戦後10年以上も抑留されていました。その数は57万人にものぼり,うち5万人以上が現地で亡くなっています。その数は政府が公式に認めた死亡者数で,25万人以上が死亡しているというアメリカの研究者の調査もあります。収容所の環境は劣悪で,そこでの生活を描いた91歳の方が,鹿児島市内で絵画展を開いたというニュースを見ました。そこには,まるでまだ戦争中のような厳しい生活の様子が描かれていました。

 なぜソ連は日本人をシベリアへ抑留したのでしょう。敗戦と同時に,日本はポツダム宣言を受け入れました。この宣言は,武装解除した日本兵の家庭への復帰を保証していました。シベリア抑留というのは,その宣言に反する行為だったため,ロシアのエリツィン大統領が過去に訪日した時は,シベリア抑留が非人道的な行為だったとして,日本に謝罪しました。終戦の頃は,ソ連は共産主義の国で,元々,政治犯などの囚人を強制収容所で働かせていました。そのような背景があるため,戦争での捕虜という名目で,多くの日本人を終戦後もソ連内の捕虜収容所へ移送し,強制労働をさせたのです。終戦から10年余りも日本に帰れずに,現地で亡くなった日本人の無念さを想い,現地で手を合わせてきました。ちょうど終戦記念日でしたので,この慰霊碑に線香が供えられていました。この慰霊碑を見て,これからの日本が向かうべき道筋を見たような気がしました。日本を取り巻く国際情勢がどうあろうと,戦争は絶対にしてはなりません。ロシアのプーチン大統領が,クリミア併合など強権的政治を行っていますが,日本は北方領土を返せというだけでなく,争いごとのない世界にするために,日本は何をすべきか,考える必要があると思います。韓国や中国とも,未だ良好な関係が築けずにいます。力を競い合うのではなく,お互いに助け合う姿勢で接していけば,相手の国も分かってくれるのではと思います。また,アメリカや中国,ロシアのような大国が,自国の利益ばかりを考えていたら,平和な世界にはなりません。世界をリードできる国は,世界平和に対してもっと積極的に動いてほしいものです。戦争に走ってしまい,戦後の苦難の道を歩んできた日本は,戦争の悲惨さをどの国よりも知っているわけです。周囲の国に対しては,もっと謙虚な姿勢で接し,平和の大切さを第一に考える国にしたいものです。