サンタ通信No216(07)表 H29.07.18発行

暑い夏と共に夏カゼが!

 1週間前の休診日にソファに座っていた時,ゴゥーという音を立てて,建物が震える感じがあり,何が起こったのか分からないまま,ぐらっぐらっと横揺れがあって,やっと地震だと気がつきました。直後に緊急地震速報が流れましたが,本当に何が起こったの?という感じで,身の安全をはかることはとっさにはできませんでした。横揺れだと地震と気付きやすいのですが,直下の地震では主に縦揺れで,しかもガード下で経験するゴゥーという音が地震の時にするなんて,初めて知りました。鹿児島市で震度5強を観測したとのことで,実家の母へ電話するも不通で,携帯にかけても呼び出し音が鳴るばかりです。古い木造建築のため,全壊してしまったのではと心配になり,駆けつけてみましたが,母も家も無事でほっとしました。また,梅雨末期の大雨で,毎年犠牲者が出ますが,今年は福岡と大分で大勢の方が犠牲になりました。自然災害は不意に襲ってきますが,100年に一度くらいの記録的な雨が降ることも珍しくありません。地球をいたわりながら,おだやかに住みたいものです。

 さて,最近1週間(7月10日~7月16日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのはヘルパンギーナで14人でした。それ以外は,手足口病9人,おたふくかぜ6人,溶連菌感染症5人,RSウイルス感染症3人,感染性胃腸炎3人,咽頭結膜熱1人でした。インフルエンザはすっかり終息しました。夏カゼの手足口病とヘルパンギーナが流行しています。今がピークだろうと考えていますが,去年より流行の規模は大きいようです。ヘルパンギーナが多いですね。乳幼児を中心に,夏に流行するコクサッキーウイルスA群による急性咽頭炎です。当院で経験した週14人もすべて3歳以下の子ども達でした。感染経路は,くしゃみなどからの飛沫感染と,便に排出されたウイルスが手を介して口に入る糞口感染があり,感染すると,2~4日の潜伏期を経過して,発熱で発症します。発熱と同時に,口の奥に小さな水疱ができ,破れて浅い潰瘍になります。口の痛みが強くて,食事や水分摂取ができなくなることがあります。発熱は2~4日で解熱し,口の症状も解熱から少し遅れて,改善していきます。今流行しているタイプは,髄膜炎や心筋炎など,重篤な合併症はみられていませんが,水分が摂れない場合は,脱水症になることもあり,注意が必要です。残念ながら治療法はありません。高熱や頭痛に対して,解熱鎮痛剤を使うくらいで,脱水が強ければ点滴が必要になります。登校や登園は,規定がなく,2~4週間は便に原因ウイルスが排出されますので,流行阻止のためには,長期に休ませる必要がありますが,実際には,便からのウイルスが口に入ることがないように,手洗いをしっかりすることで感染予防してもらいながら,患者が解熱して,食事がしっかり摂れるようになれば,登園を許可しています。

 手足口病は,コクサッキーウイルスやエンテロウイルスが原因で,3~5日の潜伏期を経て,口や掌,足底に水疱性の発疹が出現します。発熱は3割くらいの人に認めますが,高熱にはなりません。38℃以下の発熱が多いです。発疹は肘や膝,肛門周囲にもよくみられます。好発年齢は5歳以下の子どもが90%を占めます。感染経路は,くしゃみなどの飛沫感染と,便に出たウイルスが手を介して口に入る糞口感染があります。ウイルスは数週間便中に排出されますので,感染防御の視点から考えると,数週間は集団生活を避ける必要があるのですが,ほとんどの子ども達は軽症ですみ,感染を繰り返して免疫を得ることも大事なため,登校・登園の時期は,発熱がなく,口の痛みがなく,食事が普通に摂れれば可能です。病初期は進行することもありますので,数日間様子をみることが必要です。

 

 8月6日(日)は学会のため,休診となります。

 8月11日(金)~16日(水)が休診となります。代わりに8月8日(火)と8月18日(金)が診療日となります。

 8月27日(日)は当番医です。救急患者優先です。

 9月18日(月)~20日(水)が休診となります。代わりに9月22日(金)が診療日となります。

サンタ通信No216(07)裏 H29.07.18発行

熱中症について

 熱中症の分類は,3段階に分けられています。

 熱中症は気温などの環境条件だけでなく,人間の体調や暑さに対する慣れなどが影響して起こります。気温がそれほど高くない日でも,湿度が高い・風が弱い日や,体が暑さに慣れていない時は注意が必要です。

 小児は,体温調節機能が十分発達していないため,熱中症に対して,特に注意が必要になります。また,晴れた日には,地面に近いほど気温が高くなるため,幼児は大人以上に暑い環境にいることになるので,警戒が必要です。ちょっとの間だからと子どもを車に残すことは絶対に止めましょう。つい先日,関東地方の障害福祉サービス事業所で,送迎車の中で6時間放置されて19歳の障害者が死亡した痛ましい事件がありました。当院の駐車場でも,影になる場所を求めて皆さん駐車されていますが,直射日光のもとに置かれた車は,座席がやけどしそうなほど熱くなっており,車はとても危険な場所です。

 熱中症を予防するには,暑さを避けることが大事です。屋外では日陰を選んで歩き,活動時はテントなどで日陰を作りましょう。帽子や日傘も効果があります。服装も,放熱しやすい服装を選択し,ゆったりとした服で,なるべく白系統の素材を選びます。暑い日には,汗を多くかいています。十分な水分と塩分の補給が重要です。のどが乾く前から補給することが大切です。児童・学生については,体育の授業や部活動などで熱中症にかかる場合があります。スポーツで無理をしないことが大事です。体調の悪い時は運動は控えましょう。バトミントンなど,風のない閉め切った体育館での競技や剣道などの防具をつける競技は,特に注意が必要です。当院で今月に経験した熱中症の患者さんは,午前中にテニスの試合をした後,気分が悪くなり,昼に休ませたら気分が良くなったので,午後に再び試合をしたら,頭痛と吐き気がすると受診されました。どうしてそんなに無理をさせるのでしょうか。気分が悪くなったら,その後は安静が必要です。

 それでは,実際に熱中症になった時の対処方法です。まず,熱中症を疑う症状があるかどうかをみます。①めまい・失神,②筋肉痛・筋肉の硬直,③大量の発汗,④頭痛・気分不快・吐き気・倦怠感・虚脱感,⑤意識障害・けいれん・手足の運動障害,⑥高体温,これらの症状があれば,まず意識の確認をしましょう。意識がない時や呼びかけに対し返事がおかしい時にはすぐに救急車を要請し,涼しい場所への避難をさせ,脱衣と冷却をしながら,病院へ搬送します。意識がしっかりしている時は,涼しい場所へ避難させて,脱衣と冷却をしながら,水分を自力で摂取できるかどうかをみます。できない時は,病院を受診させた方がよいでしょう。自力で水分が摂れるようなら,水分と塩分の補給をさせて,症状の改善がない時にも,病院受診が必要になります。

 水分・塩分の補給は,経口補水液のOS-1とポカリスエットなどのスポーツ飲料とどちらがいいでしょうか?という質問もよく受けます。経口補水液のOS-1は元々,下痢嘔吐の時に,点滴が受けられない開発途上国で,点滴と同じくらいのナトリウム・カリウムイオンを含んだ飲み物として開発されました。スポーツ飲料は,スポーツ選手の脱水症状や熱中症を予防する目的で作られたものです。成分は大きく違っており,OS-1は糖分が少なく,塩分が多いのが特徴です。ポカリスエットは運動時のエネルギー補給のために,糖分が高めで,塩分は少ないのが特徴です。運動時に補給するにはスポーツ飲料が適しており,熱中症になってしまった時は,OS-1が良いのです。実際に飲んでみると分かりますが,かなりしょっぱくて美味しくありません。でも,脱水になっている時は美味しく飲めます。OS-1を飲む量は,乳児で体重1kg当たりで30~50ml/日です。幼児では300~600ml/日です。少量ずつを繰り返し飲むようにしましょう。