サンタ通信No211(02)表 H29.02.18発行

インフルエンザがピーク!

 さすがに2月ですね。寒さが厳しく,桜島が麓まで真っ白に雪化粧していました。頂上付近の雪景色はよくみることがありますが,全山の雪化粧は初めて見ました。雪が降った時は,あまり出歩かないからでしょうね。インフルエンザで学級閉鎖が相次いでいますが,皆さんは大丈夫でしたか?ワクチンを2回受けたのに罹ってしまったと,納得いかない様子の患者さんも多いです。毎年この季節になると,インフルエンザの予防接種の効果について,詳しく説明をするのですが,インフルエンザワクチンはインフルエンザに罹る割合を減らすだけで,予防接種したから罹らないという考え方は間違っています。受けた人は受けなかった人と比較して,罹る確率が少なくなるので,予防に有効だとされています。でも,もっと大切な役目は,重症化を防ぐということです。肺炎で入院が必要になったり,乳幼児の脳炎・脳症を防いでくれます。だから,医療関係者は子どもへワクチンを勧めるのです。お金を出してワクチンを受けたのに罹ってしまったと嘆くのではなく,ワクチンを受けていたから軽く済んで良かったと考えましょう。

 さて,最近1週間(2月4日~2月10日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,インフルエンザで85人でした。次いで,感染性胃腸炎4人,水痘4人,手足口病2人,溶連菌感染症2人,おたふくかぜ2人でした。インフルエンザが急に増えてきました。1月の第1週から5人,22人,50人,91人と徐々に増えてきて,2月が85人ですので,例年より流行の拡大が速く,そろそろピークを迎えていると考えられます。発熱で来院される方の半分がインフルエンザという状況です。ほとんどの人がA香港型で,ごくまれにB型の人がいます。これから流行の終盤にかかると,B型が多くなってきますので,もうインフルエンザにかかったから安心と思わないでください。特に,「タミフル」「イナビル」「リレンザ」などの抗ウイルス薬を使い,軽い病状で済んだ人は抗体があまり上がりませんので,B型やAソ連型(2009年の新型)にかかる可能性は高くなります。おそらく3月までは流行が続くのではないでしょうか。インフルエンザ以外の病気は,ほとんど目立ちません。時々,嘔吐下痢の症状を訴える患者さんが来院されますが,インフルエンザでも腹部症状を伴うことがありますので,発熱や体の痛みを訴える場合は,インフルエンザの検査も必要です。ノロウイルスやロタウイルスによる感染性胃腸炎は,冬が好発時期になりますので,おむつの処理や食事の手洗いは,これからも念入りにされてください。水痘やおたふくかぜなどの感染症は小さな流行ですが,持続しています。インフルエンザの影響で,多くの方がマスクをしたり,頻回の手洗いなどしていますので,これらの感染症が大きな流行にならずにすんでいるのだと思います。私は最近,医師会病院を訪れる用事がありました。病院内に入るには,マスクを購入して必ずかけてくださいとメッセージが張り出されていました。さらに面会も家族のみに限られており,それもなるべく短くするようにとのことでした。インフルエンザの院内感染を防ぐためです。当院の外来でも,インフルエンザの診断がつくと,隔離室や離れた場所に移動していただくのですが,インフルエンザの患者さんが多くなった時は,熱がない人の方を隔離して,感染を防ぐように努力しています。インフルエンザは診断がつくまで10分間くらいかかりますし,病院内が一番混雑する時期ですので,なるだけ予約をされてから受診されるようにお願いします。検査するには早すぎると判断される場合は,こちらから最適な受診時間をお知らせすることもできます。よろしくご協力ください。

 

 3月5日(日)は当番医を担当します。混雑が予想されますので,時間に余裕をもっておいでください。急患の方が優先となります。

 4月14日(金)~15日(土)は学会出席のため休診となります。代わりに4月18日(火)を診療日とさせていただきます。

サンタ通信No211(02)裏 H29.02.18発行

インフルエンザウイルスについて

  今流行中のインフルエンザウイルスは,ほとんどA香港型(AH3亜型)です。去年はAソ連型(AH1亜型)の仲間であるAH1パンデミック2009(2009年に流行した新型)とB型が半々くらいの割合で,流行しました。元々,インフルエンザにはABCの3つの型があり,C型は季節性はなく,一年中流行があり,ほとんどの人が幼少期にかかってしまいます。症状はあまり強くなく,普通のカゼのような症状で済みますし,一度かかると免疫は一生保たれますので,二度とかかることはありません。A型は感染力が強く,変異を起こしやすい性質があるので,人だけでなく,鳥や豚にも感染します。今問題になっているトリインフルエンザはA型が変異してトリから人への感染を起こし始めています。多くの人はトリインフルエンザに対する免疫を持たないので,流行すれば,甚大な被害が出ると予想されるのです。2009年に流行した新型インフルエンザは,トリではなく,豚の間で流行していたウイルスが人へ感染するようになって,パンデミック(世界的流行)になりました。発生当時は非常に致死率の高い病気と思われ,患者は特別な病棟に隔離され,その人に接触した人が,家族だけではなく,同じ飛行機に乗っていただけの人まで隔離されるという状況でした。すぐに日本国中の人が感染しましたが,幸いなことにそれほど致死率が高くなく,季節性のインフルエンザと同じくらいで済みました。新型インフルエンザが流行した後は,Aソ連型はみられなくなり,変異ウイルスの新型インフルエンザだけが残っています。ただし,今年は新型の流行はなく,A香港型ばかりですので,A型にかかった人は,今年はもうA型にはかからない可能性が高いです。B型はあまり変異を起こさないウイルスです。このため,一度かかると,数年間は免疫ができて,かからずにすみます。ということはA型のように大流行することはほとんどありません。しばらくB型の流行がなければ,免疫を持つ人が少なくなって,ちょっとした流行がみられることがあります。B型はA型と比べ,やや軽い印象があります。発熱の程度や重症感が少ないです。また,下痢や嘔吐など消化器症状もやや多い印象があります。A型もB型も,治療は一緒です。発症後48時間以内に抗ウイルス薬を開始します。開始時期が早ければ早いほど,効果は高くなります。薬を早く服用したので,軽く済んだという人には,一つ注意点があります。それは,病気が軽ければあまり免疫ができなくて,またかかりやすいということです。タミフルやリレンザ,イナビルという抗ウイルス薬がなかった時代は,一度インフルエンザにかかれば,数年間はかからずにすみました。もちろん,熱が4~5日間は続きますので,病気の時はきついのですが,治った後は安心なのです。例えばA香港型にかかれば,交差免疫といって,Aソ連型やB型の抗体も増えて,抵抗力がついたのですが,軽症ですめば,他の型はもちろん,同じA香港型に同じシーズン中にかかることもあるわけです。薬が間に合わずに自然治癒を待つしかない状態になった時は,薬を使った時よりも高熱が1~2日長くなってしまいますが,きつい思いをした分だけ,体は強くなったと考えればよいでしょう。

アルペンスキー中継を見て

  スイスのサンモリッツで開かれたアルペンスキー世界選手権の映像をテレビで見る機会がありました。雪煙を上げながら,気持ち良さそうに滑っているように思えましたが,競技会ですので,負けられないとストレスがかかると,緊張のために動きが固くなり,コースアウトしていました。アルペンスキーはメンタルなスポーツだということがよく分かりました。私も若い頃は,カナダのウィスラーやスイスのツェルマットでスキーを楽しんだものですが,さすがに60歳代になると,体がついていかない感じがします。昔は,急斜面でスピードが出ると,ワクワクしたものですが,今は安全第一と考えてしまいます。ダイビングも私の趣味ですが,50歳代の時は1月でも2月でも海に潜っていました。最近は,厳冬期は避けるようにしています。冷たい海だと体のトラブルが出やすいし,仕事も一番きつい時期ですので,無理をしたくないというのが率直な気持ちです。海外旅行も,以前はレンタカーを借りて,ホテルも決めずにカナダやイギリスを自由に旅行して回っていました。それが最近は,あまりストレスのない旅行をするようになりました。いろいろな困難を乗り越えて楽しむ旅行からゆとりの旅行へ,年齢とともに行動や考え方が変わってきたのでしょう。