サンタ通信No213(04)表 H29.04.18発行

新学期はいかがですか?

 桜の開花が遅く,いつもなら卒業式の頃から咲き始めるのに,今年は入学式にも間に合わないくらい遅いでした。今,ようやく満開を迎え,華やかな春を感じます。自然のリズムにも,地球の環境変化の影響が及んできているのでしょうか?自然を大切に守っていきたいものです。ところで,4月は生活が大きく変わる季節です。私も生まれてから大学に入学するまでに5回転居した経験があります。転居すると,友人がいなくなる寂しさがあります。私に幼稚園や小学校の友達がほとんどいないのは,住居が次から次へと変わったためだと考えています。新たな環境に慣れるまでは,お子様は不安な気持ちが大きくなりますので,困っていることがないか,お友達やクラスの様子はどうかなど,家族全員で色々と話をしながら,気配りをしてあげましょう。

 さて,最近1週間(4月3日~4月9日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症で5人でした。次いで,インフルエンザ3人,感染性胃腸炎3人,おたふくかぜ2人,水痘1人,突発性発疹1人でした。インフルエンザもすっかり終盤を迎えて,このまま終息しそうです。A型が2人,B型1人でした。心配していた終盤に多いB型の流行もほとんどなくて幸いでした。これくらい流行が少なくなると,熱が出てもすぐにインフルエンザを疑うという必要はなくなります。突然の高熱に関節痛を伴う場合や周りにインフルエンザの人がいる時に,検査すれば良さそうです。これまでの経験からすれば,ゴールデンウィークの頃に完全終息になることが多いので,それまでは散発的に患者が発生することがあります。周囲にインフルエンザの発生がないか注意をしておきましょう。

 溶連菌感染症が少し目立ってきました。好発する季節は,冬と春~夏です。春は転勤,転校で人の往来が多く,知らないうちに溶連菌に感染し,周囲に拡げてしまうことになります。発熱や咽頭痛があれば,溶連菌が疑われます。からだに細かい赤い発疹が出ている場合も溶連菌の可能性があります。さらに,嘔吐や吐き気が伴うこともよくあります。溶連菌はのどの迅速検査をすれば,10分間くらいで判定できるため,診察の時にのどの所見を診て,疑わしい時には積極的に検査をするようにしています。溶連菌の感染力は強く,家庭内や学級内に流行を拡げてしまいます。早く診断することが大切です。診断が遅れてしまうと,急性腎炎などの合併症も起こしやすくなります。

 流行性胃腸炎はノロウイルスやロタウイルスによる嘔吐下痢ですが,かなり少なくなっています。これからの季節は,もっと少なくなりますので,一安心ですね。反対に細菌性の胃腸炎は,食中毒という形で初夏から夏場に多くなります。気温の上昇とともに,食べ物の管理には細心の注意をしましょう。おにぎりやサンドウィッチといった熱を加えない食べ物では,手を十分に洗うことが大切で,できればラップなどを使って直接触れない工夫も,食中毒を予防するのには役立ちます。もちろん牛肉・豚肉・鶏肉はしっかり火を通すことが大事です。残り物も室温に長く置かないようにしましょう。菌の種類により,発症するまでの潜伏時間に差があります。ブドウ球菌は2~4時間,腸炎ビブリオ6~12時間,サルモネラ12~36時間,カンピロバクター2~11日,腸管出血性大腸菌3~9日と幅があります。食中毒の症状が出た時に,すぐ前に食べたものを考えるだけでなく,3日くらい前までさかのぼって,当たりそうな食材がないか考える必要があります。

 

 4月22日(土)は学会出席のため,17時までの診療とさせていただきます。

 ゴールデンウィークは,5月3日(水)が当番医で,5月4日(木)~8日(月)が休診となります。代わりに5月2日(火)と5月9日(火)が診療日となります。

 6月15日(木)は学会のため,休診となります。代わりに6月20日(火)が診療日となります。

サンタ通信No213(04)裏 H29.04.18発行

おたふくかぜについて

 先日,東京で開催された日本小児科学会の教育セミナーを受講しました。おたふくかぜのワクチンについての講演があり,重要性を再確認してきました。そこで問題になったのは,ワクチンの副反応に対する日本人の問題意識でした。予防接種を受けて,500人のうち1人に髄膜炎を起こすワクチンを受けさせますかという問いです。そんな危険なワクチンは受けさせたくないとほとんどの人が思うでしょう。この500人に1人の割合で髄膜炎を起こしたのは,20年以上前に麻疹・風疹・おたふくかぜのMMR混合ワクチンの時です。予想以上の髄膜炎発生率が社会問題になり,発売から4年で接種中止となりました。しかし,おたふくかぜに自然感染した場合に,髄膜炎を合併して入院が必要になった人の割合は100人に1人くらいで,現在のおたふくかぜ単独ワクチン接種後に髄膜炎で入院になった人の割合は2,000人に1人というデータがあります。明らかにワクチンを受けた方が,髄膜炎の合併率は20分の1くらいに減少しているのですが,実際に髄膜炎になってしまった人にとっては,元気な子どもに予防接種をしたがために髄膜炎が起こったという被害者意識を持ちますので,そんな危ないワクチンはするべきでないと考えるのだと思います。おたふくかぜの自然感染では,髄膜炎以外に,難聴・睾丸炎・卵巣炎などの合併症が,いずれもワクチンより圧倒的に高い確率になります。しかし,そのことを考えずに,予防接種をしたために入院するような髄膜炎になってしまったと考えてしまうのです。これはマスコミの問題提起の仕方も影響していると思われます。副作用を強調すると,日本人はこぞって騒ぎ立てます。でもワクチンの有用性を記事に書いても,なかなか見向きをされません。予防接種というのは,効果と副作用のバランスで考えるべきなのですが,そういう立場のマスコミの記事は,あまり見ないですね。世界中で麻疹・風疹・おたふくかぜの3種混合ワクチンが使われているのに,日本だけが髄膜炎の発生頻度が高いということで,中止になっています。おたふくかぜワクチンが定期接種になっていないのは,アフリカと東南アジアくらいのものなのに,日本のワクチン行政の行く末は難しいものがあります。ちなみに欧米で行われているMMR混合ワクチンは,日本より力の弱いおたふくかぜのワクチンを使っていますので,効果は物足りないのですが,髄膜炎の副反応は少なくてすんでいます。ただし,力が弱いので,今後は3回目の追加接種が必要になってくるかもしれません。

救急車の利用について

 平成28年の救急車出動は621万件,搬送者は562万人になったと,消防庁から発表がありました。日本人のおよそ20人に1人の割合で,去年1年間に1回は救急車を利用したことになります。しかも,その中のおよそ半数が入院の必要のない軽症患者だとのことです。運ばれる方の年齢構成は,年々高齢者が多くなっています。これから高齢化が進みますので,ますます救急車を呼ぶことが多くなると思われます。私のクリニックからも,市立病院や生協病院へ患者さんを救急車でお願いすることがあります。全身状態が悪い患者さんや,途中で急変する可能性がある患者さんに限っています。それ以外の方は自家用車で運んでもらいます。無料で救急車が利用できて,救急処置も受けられて,患者搬送ができる日本は,世界の中でも少数派です。アメリカでは救急車を呼ぶと数万円の費用を請求されます。よほどの緊急事態でない限り,救急車よりはタクシーを選択するだろうと思います。最近,私の母が道端で転倒し顔をすりむいた時に,通りかかった人が救急車を呼びましょうかと言ってくれたみたいです。それほどでもないと思った母は,タクシーを呼んで,近くの病院を受診。受付で血だらけの顔にびっくりしたスタッフが,すぐに処置してくれたようでした。昔気質の人は,救急車に対して敷居が高いようです。そんな時代は,救急体制がうまく機能できていたのですが,皆が軽症でどんどん呼ぶようになると,救急隊員の仕事量が増え,本当の救急を行えない状況になっています。日本でも,救急車の有料化が論議されていますが,なかなか難しい問題です。いざという時のために,今の制度は必要と思いますが,利用者の適正利用を心がけてもらうように啓蒙していくことが大事です。