サンタ通信No215(06)表 H29.06.18発行

夏カゼの季節になりました

 蒸し暑い日が続きます。日本の梅雨は,湿度が高く,気温も高いため,過ごしにくい季節ですが,雨の季節は,私たちの暮らしに必要な水を供給してくれますし,農業にもこの梅雨は欠かせません。自然の中で暮らすためには,自分たちが季節に合わせていくしかないです。梅雨に入ったばかりの頃に,1日中強い雨が降った日,屋久島で60歳代の2人が遭難したというニュースを聞きました。屋久島の谷は急峻で,雨は降り始めてすぐに谷に流れ込むため,沢を渡らなければならない登山道は,雨の日には使えません。頂上から尾之間に下る尾之間歩道も結構大きな沢を渡るため,雨が降りそうなだけでも,大きく迂回して,屋久杉ランドの林道から下山します。遭難したグループが通った登山道は,益救参道(旧宮之浦歩道)で,今はこのルートを通る人はほとんどいません。ロープが張ってある沢を渡らなければならず,雨の日に腰までの流れの中を渡るなんて,無謀すぎます。登山客が多い屋久島ですので,メジャーな登山道を敬遠して,珍しい登山道を行けるのは,登山家にとってはとても魅力的で,私もチャンスがあれば,行きたいコースです。ちなみに,私は学生時代に山岳部でしたので,屋久島の登山道はいろいろ経験しました。新聞によると,この益救参道は一般人の立ち入り禁止になっているとのことでした。今回の遭難では,晴れた屋久島と雨の屋久島は,全く違う山になるということを忘れています。安全な登山の基本ができていなかったのだろうと私は思います。

 さて,最近1週間(6月5日~6月11日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,感染性胃腸炎8人でした。それ以外は,おたふくかぜ7人,溶連菌感染症6人,手足口病3人,突発性発疹2人,水痘1人,ヘルパンギーナ1人でした。この週はインフルエンザは0人でしたが,その翌週にB型の患者さんが谷山地区でいらっしゃいましたので,散発的には患者発生があるようです。6月中には完全終息するのではと予測しています。感染性胃腸炎の流行がまだ続いています。ウイルスによる胃腸炎で,家族内で感染しています。ウイルスが付着した手で触った食べ物が口に入ると感染します。食べ物を扱う前の手洗いを確実にしましょう。嘔吐下痢の症状が出たら,まず,経口補水液OS-1やイオン飲料を少量ずつ摂らせて,水分補給ができるか試してみます。水分を吐いてしまうようなら,吐き気止めの薬が必要になりますので,病院を受診されてください。水分が摂れたら,おかゆやスープなどを与えます。最近,夏カゼの手足口病やヘルパンギーナが,少しずつ増えてきました。これから夏にかけてピークを迎えます。7~8月は注意が必要と思われます。また,おたふくかぜの流行が持続しています。大きな流行ではなく,1週間に10人以下ですが,なかなか患者数が減りません。予防接種を多くの子ども達が受けてくれたら,あまり流行せずにすむのですが,自費で受けなければならないことや,任意接種になっていることもあり,接種率はまだまだ低いです。しかも,1回接種では十分な抗体が維持できません。1歳過ぎて早めの時期と,小学校入学前の1年間の時期の2回接種が推奨されています。おたふくかぜは治療法がありませんので,予防接種で罹患しないように準備するしかありません。当院では1回 6,000円です。未接種の方は,是非,受けられてください。溶連菌感染症もまだ流行は持続しています。夏休みに入ればきっと少なくなるのでしょうが,それまでは,周囲の流行状況に注意が必要です。空気感染ですので,日常生活に無理をしないことと,普段のうがい励行が感染を防ぎます。感染した時は,抗生物質を最後まで服用することと,周囲にのどの痛みを訴える人がいないか,発熱している人がいないか,注意が必要です。

 6月15日(木)は学会のため,休診となります。代わりに6月20日(火)が診療日となります。

 8月6日(日)は学会のため,休診となります。

 8月11日(金)~16日(水)が休診となります。代わりに8月8日(火)と8月18日(金)が診療日となります。

サンタ通信No215(06)裏 H29.06.18発行

夏カゼについて

 夏休みが近くなってきましたね。小学生の頃は,夏休みが待ち遠しいものでした。自由に過ごせる日が1か月半もあるのですから。「夏休みの友」という宿題はあったものの,なるべく早く終わらせるように,早朝と夜に2時間くらいずつの宿題をする時間を設け,それ以外は,午前中に海水浴,午後に昼寝の時間を入れた日課表を作り,毎日それに沿って生活しました。今思えば,楽しい小学生の生活ができていたなぁと。そんな子ども時代を過させてもらった両親に,今頃になってようやく感謝です。皆さんの夏休みの計画はお済みですか?勉強も大事ですが,子どもが自主的に計画し,成長できるような夏休みの計画があればいいですね。

 ところで,夏には夏カゼが流行します。代表的な病気がヘルパンギーナと手足口病です。この2つの病気は,同じエンテロウイルス属が病原体です。エンテロウイルス属の中には,コクサッキーA群,同B群,エコーウイルス,エンテロウイルスなど多くのウイルスが含まれるのですが,ヘルパンギーナという病気は,コクサッキーA群が主な病因です。症状は,突然の発熱とのどの痛みが主要症状で,のどの奥をみると,数ミリの大きさの小水疱がみられ,水疱がつぶれた後は,浅い潰瘍になります。発熱は2~4日間持続しますが,解熱とともに,のどの所見も改善してきます。ウイルスは病初期に強い感染力がありますが,解熱した後も長期に渡り,便に排出されることがありますので,普段から手洗いをしっかりする習慣をつけておきましょう。治療方法は特にありませんが,咽頭痛が強くて,水分摂取ができずに脱水になったり,高熱で熱性痙攣を起こしたりすることがありますので,そのような症状には対症療法を行います。5月頃より流行が始まり,7月頃をピークとし,9月頃には流行が終わります。感染経路は,くしゃみなどの飛沫感染と,便に出たウイルスが手を介して口に入る糞口感染があります。マスクをしたり,手洗いをして,感染の拡大を防ぐしかありません。感染して2~4日で発症します。好発年齢は5歳以下の子どもが90%を占め,1歳代が最も多くなります。

 

 ヘルパンギーナと並んで,もう一つの夏カゼの代表が手足口病です。コクサッキーA群やエンテロウイルスが原因となりますが,症状は口の中の水疱と,手足の水疱が主体です。掌や足底に多くみられ,3~7日くらいで消えていきます。発熱は3割くらいの人にみられますが,ヘルパンギーナと比べると,高熱にはならず,38℃以下のことが多いです。ヘルパンギーナと比べて,手足口病は軽い印象を持ちやすいですが,エンテロウイルス71型が原因の時は,髄膜炎や脳炎などの中枢神経系の合併症を起こすことがあり,注意が必要になります。当然,この手足口病も特効薬はなく,対症療法しかありません。ワクチンもないため,予防もできません。感染経路や潜伏期は同じ系統のウイルスのため,ヘルパンギーナと同じです。好発年齢は,この手足口病の方が小学生くらいまでかかることがありますが,2歳以下が半数を占めます。集団生活に戻れる時期はいつまでとは規定されていません。便から2週間はウイルスが排出されるものの,全身状態が良ければ,登校・登園は許可しています。ヘルパンギーナも同様です。どちらの夏カゼも流行の規模は,年によって大きく変わります。今年の流行が小さくなることを祈るだけです。そして,重症化しやすいエンテロウイルス71型の流行がないことも。