サンタ通信No210(01)表 H29.01.18発行

インフルエンザが本格的流行へ

 年始の1月2日に当院で当番医を担当しましたが,135人の受診ですみ,大きな混乱もなく,無事終えることができました。ほっとしています。年末はいつもより少し早くお休みをいただき,マレーシアのボルネオ島を訪れました。キナバル山という4,000mを超える高い山があり,ジャングルのような森林が広がっています。海岸にはリゾート施設も多く,今どんどん開発が進んでいます。ボルネオ島は面積が日本の約2倍くらいあり,マレーシア,インドネシア,ブルネイの3カ国に分かれています。今回はコタキナバルというボルネオの玄関口になっている街に滞在しました。この島にしか生息していないテングザルをリバークルーズで見に行き,夜はホタルを見物しました。ホタルはシーズンオフのため,数が少なかったものの,水面に光るワニの眼も見れました。しかし,一番驚いたのは,ホテルのプールで大トカゲと一緒に泳げたことです。1mくらいの大トカゲがプールサイドにつかまって,涼んでいるのを発見。近寄っても逃げません。プールで何をするのか不思議だったので見ていたら,私が見ていた場所の方へ行きたかったようで,私が泳ぎ始めたら,大トカゲも水面をスイスイ泳いでプールを横断して行きました。シャングリ ラサリアという五つ星ホテルでしたが,周囲はジャングルに囲まれていましたから,野生動物が多かったです。

 さて,最近1週間(1月10日~1月16日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,インフルエンザ25人でした。次いで,手足口病6人,溶連菌感染症3人,水痘2人,RSウイルス感染症2人,感染性胃腸炎2人,おたふくかぜ2人でした。インフルエンザが急に増えてきました。やはり年末年始で,大勢の人が移動したので,流行が拡散されて,増加してきたようです。ほとんどの人がA型インフルエンザですが,まれにB型の人もいます。現在は,周囲にインフルエンザの人がいて,発熱で受診された方は,ほとんどの場合でインフルエンザ陽性になっています。治療は単純明快です。インフルエンザウイルスを抑え込む薬が内服薬「タミフル」と吸入薬「イナビル」「リレンザ」の2種類あり,発症後48時間以内なら有効です。10歳代は異常行動が起こりやすいため「タミフル」を使わないように指示されていますので「イナビル」か「リレンザ」を使うことになります。「イナビル」は1回吸入して治療終了です。「リレンザ」は1日2回吸入を5日間続けます。1回吸入ですむため「イナビル」を使うことが多いです。7~8歳くらいから吸入ができるようになってきますので,その年齢以上の人には吸入薬を処方します。しっかり吸入できないと効きませんから,吸入がうまくできるか,判断するための吸入練習器具があります。強く吸入すると「ぴー」という音が鳴る仕組みになっていますので,しっかり音を出せるようなら,吸入薬の選択をします。練習で少し難しいかなと判断した時は,無理をせず内服薬にします。インフルエンザで注意することは,高熱が出ている時に異常行動を起こすことがあるということです。「タミフル」を服用する時だけ異常行動が起こると誤解されている人も多いです。薬を飲まない時でも異常な言動がみられます。訳のわからないことを言ったり,部屋の中をぐるぐる歩き回ったりします。主に高熱による熱せん妄という状態です。異常行動が落ち着いた後で普通に会話ができる時は心配いりません。ずっと意識が混濁しているようなら,インフルエンザ脳症という重篤な状態になっている可能性がありますので,すぐに医療機関の受診が必要です。登校・登園の目安は,発症後5日経過し,かつ解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまでとされています。発症した日は0日としますので,翌日から5

日経過するまではお休みになります。

 

 3月5日(日)は当番医を担当します。非常に混雑しますので,急患の方が優先となります。

サンタ通信No210(01)裏 H29.01.18発行

口内炎について

 口内炎は,いろいろな原因によりできます。大きく分けて,感染症によるものと感染症と関係ないものに分類されます。感染症としては,細菌・ウイルス・真菌などが炎症を起こし,口内炎をつくることがあります。子供で多いのは,ヘルペスウイルスによる口内炎と手足口病のウイルスによる口内炎がありますが,他にも水痘や麻疹の際にも口腔粘膜に口内炎様の発疹が出ることがあります。最近,手足口病の流行が少しみられるため,口内炎を主訴に受診される方がいらっしゃいます。お子さんが「口が痛い」と訴えた時には,口の中を見てあげることと,手足に発疹がないかも確認しましょう。ヘルペスウイルスによるものでは,子どもの時,初めてヘルペスウイルスに感染すると,歯肉口内炎という病態になります。高熱が出て,歯茎が赤く腫れて,口内炎が多発します。口の痛みのため,食事が摂れなくなることも多く,水分や食事の摂取量に注意が必要となります。母親からの移行抗体がなくなる6か月から3歳くらいの子どもに多くみられます。感染経路はヘルペスをもつ患者さんの唾液を介して感染します。治療はヘルペスウイルスを抑える薬を内服させます。ヘルペスウイルスの2回目以降の感染の場合,口唇ヘルペスといわれるような口内炎や口唇に水疱が出るくらいの軽い病態で済みます。

 

 感染症と関係のないものとしては,口腔内の傷から起こる場合があります。歯で咬んでしまった場合や魚の骨などで口の中を傷つけた場合に,口内炎ができます。また,ビタミンB群の不足やストレスなども影響するといわれますが,不明な点も多いです。一度ヘルペスウイルスが体の中に入り込むと,疲れた時や紫外線を浴びた時などに再活性化して,口内炎を引き起こしますので,普段から体調を整え,無理をしない生活をおくることが大事だと思います。

子どもの偏食について

 育児の中で,子どもが食事をよく食べてくれない,偏食が強いなど,食事の悩みをよく聞きます。離乳食から普通の食事に移行する中で,同じ物しか食べてくれない,食べる時にムラがある,遊び食べですぐに手を放してしまうなど,困っていることは多いと思います。子どもにうまく食事をさせるために,参考になる資料があります。小池通夫先生の論文を参照してみます。

 生後15か月なると,子どもは食卓上から食べ物を選び,取り上げて,食べようとします。決して上手ではない。しかし,この自ら食べようとする機会を生かし伸ばすことができれば,2歳になった時には他の家族と同じ物を食べられるようになるはずです。2歳以下の子が自らの行動をどう判断しているのかは,スプーンや食べ物を床にこぼした時の子どもの行動を見ていれば判断できます。

 初めて口にする食品に抵抗するのは2~5歳児に一過性に出現する特徴で,その結果,食べられるのが4,5品目だけになり,親を心配させるのはよくあることです。正常な小児の発達の一段階であり,一時的なものにすぎません。幼児は新しい食べ物は嫌がるのです。新しい食品を始める時には5回から10回,同じ物を繰り返して与え,慣れさせ,食べ方を学ぶ機会を忍耐強く待つことです。

 幼児の食事でもう一つ大切な点は安全性です。噛み砕くことと呑み込むことの協同運動は8歳までは完成の域に達したとはいえないので,幼児期には食べ物がのどにつまることに対する配慮が重要です。①食事させる時の位置:食事に専念させるために,食事は必ず食卓の前で,高い椅子に無理にでも座らせて与える。②座らせる時間はせいぜい15~20分:幼児の集中できる時間。その間は食べても食べなくても我慢するように励ます。③食事中は大人がそばにいること:独り食べの禁止。介助と安全確保。④調理方法と味:材料を吟味するほか,煮るなど調理方法を考える。子どもが容易に噛み砕き,呑み込めるような食事を考える。⑤のどにつまらせやすい食品:小さく切る(ウィンナー,チーズ,かまぼこ,もち,ぶどうなど),禁止(ナッツ類とくにピーナッツ,ポップコーン,丸いキャンデー,固い生の野菜と果物)⑥食事場所:運転中の車など,万一のどにつめた時に緊急の対応が難しい場所では食べ物を与えない。⑦「ながら食べ」の禁止:テレビを見ながらでは食事に集中できない。ゲーム,絵本,大きな音のミュージックなどの「ながら」も禁止。家族の会話,話しかけ,楽しい雰囲気が大切です。

 このようなポイントをつかんで,お子様の食事にトライしてみましょう。少しずつでも進んでいくのが分かるようになります。焦らず,時間をかけて,お子様が成長して行くのを楽しんでみてください。手間をかけた分だけ,できた時の喜びが大きくなると思います。大変だと苦労に思わず,楽しく子育てができたら,我が子の成長とともに,周囲への感謝の気持ちも湧いてきます。自分の人生もさらに素敵なものになっていくと思います。