サンタ通信No205(08)表 H28.08.18発行

夏の小児科が忙しい?

 私は夏休みを1週間いただき,南西フランスを巡る旅に出かけました。フランスの最も美しい村,サン・シル・ラポピー,コロンジュラルージュ,ラ・ロック・ガジャック,ベナック・エ・カズナックの4村を歩き,世界遺産も7つ見ることができました。美しい風景に出会い,日常生活のリフレッシュができるのが旅の喜びです。今年の夏は診療が忙しく,7月17日の当番医では,なんと200人を超える患者さんを診察しました。夏にこれだけ多くの患者さんが来院されたのは,初めての経験でした。医師1人で200人以上診る場合は,しっかり覚悟して臨むのですが,今回は夏の当番医ということで,気楽に考えていました。9時に診療を始めたと同時に,駐車場がすぐに満杯になり,カルテも常時30枚以上が山積みの状態でした。車で3時間以上も待たれた患者さんも多く,「待っている間に吐気が落ち着き,水分を摂れるようになりました」という人もいれば,「待っている間にぐったりしてきました」と青白い顔色になった人もいました。3時頃に2分間だけ休憩時間をもらい,おにぎり1個を飲み込み,トイレをすませ,また診療に戻り,終わったのは夜の10時半でした。さすがに緊張の連続でしたので,疲れました。いつもの夏は流行する疾患が少なくなり,7~8月は夏カゼが流行するくらいですが,今年はいろいろな病気が混在しており,患者さんの数が減らなかったのだと思われます。夏の当番医だからと気を抜かず,駐車場整理の方を準備したり,朝少しでも早くから診療を始めたりすれば良かったと,反省しきりでした。

 最近1週間(7月30日~8月5日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,おたふくかぜ9人でした。次いで,ヘルパンギーナ5人,手足口病4人,溶連菌感染症4人,RSウイルス感染症2人,咽頭結膜熱1人,水痘1人,感染性胃腸炎1人,突発性発疹1人でした。おたふくかぜが多いです。おたふくかぜの大流行の原因は,予防接種を受けていない人が多くて,しかも,ここ数年大きな流行がなかったために,免疫をもっていない人が多いせいだと思われます。おたふくかぜは治療法がないため,流行はもう少し続きそうです。予防接種を受けて,自分の身を守るしかありません。1回しか接種していない人でも,90%くらいの人に免疫はできているのですが,その免疫は年々低下してしまいます。1回目の接種から2~4年経過していれば2回目を接種できます。欧米の国では2回接種が標準的で,しかも無料で受けられます。そのため,欧米では大きな流行はなくなっています。それに比べ,日本はおたふくかぜワクチンが任意接種で,有料になっています。このような流行をなくすために,早急に定期接種化すべきだと私は考えていますが,国の方は,これまで作ってきたMMR(麻疹・風疹・おたふくかぜ)ワクチンの副反応で,おたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎が多かったことを心配して,定期接種に踏み切れないでいます。また,定期接種にすると,財源も必要になります。今回B型肝炎ワクチンが定期接種になりましたので,次回はおたふくかぜを定期接種にしてくれるのではと期待しています。

 夏カゼが最盛期になっています。手足口病は,発疹が下肢に多く,大きい発疹が目立つタイプの人が多いです。発熱はほとんどみられません。手足口病と同じウイルスで起こるヘルパンギーナも今が最盛期になっています。ヘルパンギーナは,のどの奥に赤い水疱ができ,つぶれて浅い潰瘍になります。強い咽頭

痛とともに,高熱が2~3日間みられますが,ほとんどの人は自然に軽快します。特効薬はありませんが,水分補給ができない時には,解熱剤で一時的に熱を下げ,水分補給や睡眠をとらせるようにします。これらの夏カゼで注意が必要なのは,合併症として起こりやすい無菌性髄膜炎です。高熱が続き,頭痛や嘔吐がみられる時は,要注意です。

 

 8月9日(火)午後~17日(水)が休診となるため,8月19日(金)を診療日と致します。

 9月24日(土)~25日(日)を休診とし,代わりに9月22日秋分の日と23日(金)を診療日とします。

サンタ通信No205(08)裏 H28.08.18発行

定期接種のB型肝炎ワクチンが始まります

 10月1日からB型肝炎ワクチンが定期接種として公費で実施されます。対象は今年4月1日以後に生まれた0歳児です。ただし,母子感染予防のために生後すぐに抗HBs人免疫グロブリンと併用してB型肝炎ワクチンを受けた赤ちゃんは除かれます。母子感染予防は普通の健康保険で対処することになります。

 接種のスケジュールは3回接種で,生後2か月から生後9か月までの期間を標準的な接種期間として,4週間以上の間隔をおいて2回接種し,さらに第1回目の接種から5か月あけて,3回目の接種を行います。つまり,生後2,3,7~8か月で受けることになりますが,4月生まれの赤ちゃんは開始時期の10月の時点で,すでに6か月になっていますので,0歳児で3回受けようとすれば,10月,11月,3月でぎりぎり可能になります。鹿児島市からの案内も,4月と5月生まれの方には「日程の管理が重要になります」という案内ハガキが7月下旬に送付されているはずです。それ以降の方はヒブ・肺炎球菌の予診票と同封されてきます。4月以後に生まれた赤ちゃんで,これまでに自費でB型肝炎ワクチンを受けられた方でも,残りの接種を10月以降にされる時は無料で受けられます

 当院では,4月,5月生まれで0歳中に終わらせなければならないB型肝炎を優先できるようにしたいと考えています。インフルエンザワクチンの開始時期と重なりますので,10月に入ってすぐに受けられるように,早く予約をしましょう。もちろん,定期接種ですので,全額公費負担となり,無料で受けられます。ワクチンの副反応は,発熱,発疹,注射部位の発赤や腫脹などが時々みられますが,ほとんどが無処置で数日以内に軽快します。

 

 このワクチンはB型肝炎を予防します。B型肝炎は,B型肝炎ウイルスにより起こる肝臓の病気で,乳幼児期に感染すると,持続感染する可能性が高く,感染から年月を経て慢性肝炎を発症し,その後,肝硬変,肝細胞癌を発症することがあるため,ワクチンで予防することが大事になります。これまでは,母子感染(垂直感染)を防ぐと患者はどんどん少なくなってくると思われていましたが,水平感染(集団保育の中の感染)が患者数を増やしていることが分かり,B型肝炎も定期接種で全員に行うべきだという結論に達しました。B型肝炎のウイルスを持っている人は,血液,唾液,汗,尿,涙などからウイルスが検出され,保育園などの集団生活で,濃厚接触する機会が多いため,集団生活を送る前に,ワクチンで予防が必要なのです。日本以外のほとんどの国では,すでに早くから定期接種としてすべての赤ちゃんに接種しています。予防接種行政の遅れている日本が,ようやく世界水準に追いついてきた感じです。

インフルエンザワクチンの予約を開始しています

 今年もインフルエンザワクチン接種を10月から開始します。予約はすでに始めていますので,希望の方は,早めにお申し込みください。接種料金は去年と同じ1回3,000円(1回目,2回目ともに同料金)です。ワクチンの中身は,昨年から,3種類(A型2種類+B型1種類)だったのが4種類(A型2種類+B型2種類)に増えています。これはB型に効果が低いと指摘されていたことに対する改善点です。種類が増えたために,ワクチンの価格も高くなりましたが,当院では以前と同じ料金に留めています。

 インフルエンザワクチンの効果については,有効率が60%と言われています。これは60%の人がかからないという意味ではなく,予防接種を受けずに発病した人と予防接種を受けて発病した人の差を比べて,患者数を60%減らしてくれたという意味です。例年,インフルエンザが流行し始める時期は,12月ですので,10~12月に受けるようにしましょう。昨年までは医師2人体制で予防接種ができましたが,今年は1人体制ですので,予防接種の予約が取りにくくなっています。早めのご予約をお勧めします。

 接種回数は生後6か月から13歳未満は2回接種が必要で,接種間隔は2~4週間とされていますが,できるだけ4週間あける方が効果は高いとされています。13歳以上は1回または2回接種とされており,2回接種する場合は,接種間隔は1~4週間とされています。この時も4週間あけて接種した方が効果は高

くなります。受験などしっかり免疫をつけておきたい方は2回接種をお勧めします。接種量は年齢で違っており,3歳以上は0.5ml,生後6か月から3歳未満では半分量の0.25mlを接種するようになっています。ワクチンの副反応は,注射部位の発赤や腫脹が時々みられますが,無処置で数日以内に軽快します。