サンタ通信No204(07)表 H28.07.18発行

おたふくかぜが流行中

 今年の梅雨は,本当にたくさんの雨が降りましたね。鹿児島はシラス台地のため,大雨で土砂崩れを起こしやすく,今年も梅雨の間に犠牲者を出してしまいました。指宿枕崎線は,梅雨の時期は運休が多くなりますし,九州新幹線でさえも大雨で運休になったことがありました。豪雨災害,台風災害などの前には,人間は無力です。私たちは自然の脅威を忘れることなく,謙虚に生活したいものです。さて,いよいよ夏休みに入りますね。私が子どもの頃は夏休みが待ち遠しくて,日課表を作って,その通りに1か月半過ごしたものでした。その頃,磯海水浴場から5分くらいの所に住んでいましたので,自宅から海水パンツ1枚で毎日泳ぎに行ったものです。もちろん,勉強もしました。早朝に起きて,朝飯前と午前中に勉強して,昼から泳ぎに行き,帰って昼寝をして,夜は早く寝るという生活でした。爽やかな夏の朝は,勉強を好きにしてくれます。勉強することが楽しいということに気付いたのが,この時期です。大人になった今でも,夜に眠気と戦いながら仕事をするよりも,朝早く起きて仕事をするようにしています。夜だと仕事が終わるまでだらだらと続けるしかないのですが,朝は時間が限られてしまいますので,まずやるべき仕事の分量で,何時に起きたら間に合うのかを判断し,自分で決めた時間に起きて,脇目もふらず仕事をします。その方が効率が良いように感じます。

 最近1週間(7月4日~7月10日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,手足口病6人とおたふくかぜ6人でした。次いで,伝染性紅斑2人,RSウイルス感染症1人,咽頭結膜熱1人,溶連菌感染症1人,水痘1人でした。手足口病は,掌や足底に発疹が出現しますが,今流行しているタイプは発疹が下肢全体に及ぶようなタイプのものが多く,発疹の大きさも直径1cmくらいの大きいものが見られる人がいます。大流行というほど患者数は多くありませんが,これからまだ増えてくると思われますので,注意が必要でしょう。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の流行も持続しています。おたふくかぜはウイルスによる病気で,両側の耳下腺(耳たぶの下にある唾液腺)が腫れて,発熱もみられる病気です。飛沫感染で伝染した後,2~3週間すると発症します。耳下腺の腫脹が消失するまで1~2週間かかります。以前は「腫脹が消失するまで出席停止」することになっていて,短くて1週間,長いと2週間の休みが必要でした。2012年に学校保健安全法の改正があり,「耳下腺腫脹後5日を経過して,全身状態が良くなるまで出席停止」と変更されました。早くお子さんに登校・登園してもらいたいのは,皆さん一緒だと思いますが,おたふくかぜの治りかけにサイクリングに行って,翌日髄膜炎になったお子さんを診たこともあります。どうしても学校や幼稚園に行くと,一緒に走り回ったり,プールで泳いだりします。感染の危険性が消えても,耳下腺の腫脹がある間は無理をさせないようにしなければなりません。ワクチンをすでに受けていた人で軽症で済んでいる人以外は,できれば1週間くらいは自宅安静で休ませておくのが最良だと私は思います。また,おたふくかぜの予防接種も大事です。定期接種になっていないため,有料になりますが,1歳時と5歳時に受けておくと,9割以上の予防効果があるとされています。おたふくかぜの合併症として,10人に1人の割で無菌性髄膜炎が起こりますし,1,000人に数人の割で難聴になることが知られています。ほとんどが片方の難聴のため,気付かれないことも多いです。おたふくかぜが治っても,難聴は後遺症として残ってしまいます。片方の耳がほとんど聞こえない状態で,生涯過ごすことになるので,ワクチンでの予防をお勧めします。

 

 7月18日(月)~20日(水)は職員研修旅行のため,休診となります。

 8月7日(日)は学会のため休診となります。

 8月9日(火)午後~17日(水)が休診となるため,8月19日(金)を診療日と致します。

 9月24日(土)~25日(日)を休診とし,代わりに9月22日秋分の日と23日(金)を診療日とします。

サンタ通信No204(07)裏 H28.07.18発行

育児の原点

 私が小児科を志望したのは,鹿児島大学医学部に入学と同時に,友人に誘われ,人形劇のサークルに入部したことが大きな理由になっています。児童文化研究会という名称で,人形劇や児童劇を上演しながら,児童文学を研究することを主体にした活動を行っており,部室は教育学部の講義棟の1室を占めていて,よく裏庭で稽古をしていました。部員の多くは教育学部生でしたが,他学部の学生も入部でき,私が入学した年は,理学部,農学部,法文学部,水産学部などの学生も多く,医学の勉強をしながらも,他学部の親友をたくさん得ることができました。毎週のように,リヤカーに人形劇の道具を積んで騎射場公園へ行き,公演をしました。夏休みは地方巡回として,坊津や甑島,屋久島など1週間かけて小学校で人形劇の公演をして回っていました。子どもを笑顔にするために何が必要か,いつも考えながら暮らしていましたので,医学部を卒業する時に小児科に入局したのは,自然の流れだったのかもしれません。そして,小児科の教授が寺脇保先生で,同じ保という名前の私に優しかったのも,決め手になりました。

 その寺脇教授の指導は,まず,医局員や学生に対して,爪を短く切り,清潔にしておくことでした。この指導は,患者さんの母親に対しても同じで,少しでも爪が長いお母さんがいると,すぐに切るように諭されていました。爪が長いと,赤ちゃんを抱く時に,赤ちゃんが急に動いたりすると,爪で傷つけてしまう危険性があるからです。赤ちゃんは,自分の爪でも顔を掻いて,傷ができます。育児の原点は,親としての赤ちゃんに対する愛情です。自分を美しく飾る長い爪よりも,赤ちゃんを一番に思って,短い爪で抱いてあげることが愛情だと,私たちは指導されました。その頃は,今のようにネイルでおしゃれする時代ではありませんでしたが,赤ちゃんを育てる上で,この気持ちは今でも大切だと感じます。

 

 最近,子どもの虐待が増えてきて,自分の欲求不満を赤ちゃんにぶつけたり,食事を与えなかったり,果てはウサギゲージに数ヶ月も閉じ込めて虐待死させた悲しいニュースもありました。もちろん,自分の命を削っても,子どもを大事にしたいという親が大多数だと思いますが,自分中心に生きる人が多くなっている社会ですから,育児がストレスになってしまう場合もあります。そんな時も,子どもの成長に感謝でき,自分の環境にも感謝できる心で子どもに接してあげたいものです。本当に幸せな人生というのは,自分中心に生きていては,得ることができないように思います。家族を大切に思う気持ち,子どもを大切に思う気持ち,そのために何をするのかを考えて,生きていくことが,幸せに結びつくのではないでしょうか。本来ならば,育児はとても楽しくて,嬉しくて,ありがたいものなのです。そして,自分が育児で苦労すればするほど,親も同じような苦労をして,自分を育ててくれたことに気付かされます。親への感謝も湧き出てきます。それが家族の理想の姿ではないでしょうか。

「スマホに子守りをさせないで」

 小児科医会が「子どもとメディア」の問題に対する次のような提言を出しています。

 わが国でテレビ放送が開始されてから50年が経過し,メディアの各種機器が急速な勢いで発達し普及しています。今や国民の6割がパソコンや携帯電話を使い,わが国も本格的なネット社会に突入しました。これからもメディアは発達し,多様化して、そのメディアとの長時間に及ぶ接触が,心身の発達過程にある子どもへ影響すると懸念されています。日本小児科医会の「子どもとメディア」対策委員会では,子どもに関係するすべての人々に,現代の子どもとメディアの問題を提起します。

 1.2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう。

 2.授乳中,食事中のテレビ・ビデオの視聴は止めましょう。

 3.すべてのメディアへ接触する総時間を制限することが重要です。1日2時間までを目安と考えます。

  テレビゲームは1日30分までを目安と考えます。

 4.子ども部屋にはテレビ,ビデオ,パーソナルコンピューターを置かないようにしましょう。

 5.保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールをつくりましょう。

 外来でも,子どもがスマホの動画に夢中になり,おとなしくしているのをよくみかけます。公共の場で子どもが騒ぐよりは,動画を見ながら,おりこうさんにしてくれた方が良いと考えているのかもしれませ

ん。しかし,普段から便利だからと,スマホに子守りをさせてしまっていると,子どもは外遊びの機会を奪われ,運動不足やコミュニケーション能力の低下などが起きてきます。また,メディアの内容が成長期の子どもにふさわしくないものかもしれません。幼児期から暴力映像に長時間接触していると,後年の暴力的行動をとりやすくなります。家族でメディアのより良い使い方を考えましょう。