サンタ通信No203(06)表 H28.06.18発行

夏カゼが多くなってきそう

 6月4日に鹿児島が梅雨入りし,雨が降る日が多くなりました。庭のアジサイがきれいな花を咲かせていますが,いいお天気が2日続くと,花は少し萎れた感じになります。水かけすると,すぐに元気を取り戻しますので,普段から花の元気を気にかけておくことが大事ですね。お子さんの場合も同じような気配りが必要です。何か心配事があると,元気がなかったり,食欲がなかったりします。早めに声かけをしてあげて,心配事が大きくならないようにしましょう。私が小学生だった時に,運動会前の数日間は機嫌が悪くなり,おしゃべりをしなくなったと母親がよく話していました。大人になっても,その傾向は続いていて,海外旅行での最終日が近づくと,翌日からの山積みになった仕事のために,だんだん不機嫌になってくると,妻によく言われます。心のリフレッシュのために旅行をしているつもりですが,仕事を考えずに旅行を最後まで楽しむのは,なかなか難しいものです。

 さて,最近1週間(6月6日~6月12日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症6人とおたふくかぜ6人でした。次いで,ヘルパンギーナ4人,手足口病2人,水痘1人,RSウイルス感染症1人,感染性胃腸炎1人,伝染性紅斑1人でした。インフルエンザの患者さんはいらっしゃいませんでした。おたふくかぜが最近ずっと週数人の割で流行しています。もうしばらくは流行が続きそうです。治療方法がありませんので,ワクチンでの予防が大切です。夏カゼのヘルパンギーナと手足口病が目立ってきました。これからの時期に注意が必要な感染症です。

 ヘルパンギーナはコクサッキーウイルスやエコーウイルスにより引き起こされる夏カゼのひとつです。主な症状は発熱と咽頭痛です。39℃くらいの高熱が2~4日間続き,のどの痛みを伴います。口の奥を見ると,赤い斑点の中に小さな水疱が数個あり,つぶれて浅い潰瘍になって治っていきます。口の痛みが強いと,水分や食事が摂れず,脱水症を起こしてしまうことがありますが,ほとんどの患者さんは自然治癒していきます。有効な薬もありません。感染経路は,くしゃみなどによる飛沫感染と便中に排出されたウイルスが手を介して口に入る糞口感染です。病気が治った後に2~4週間は便中にウイルスが排出されますので,感染予防のためには,トイレ後の手洗い,おむつ交換時の手洗いが大事になります。潜伏期間は2~4日です。夏カゼの代表と言われるくらいですので,7月を中心に,5月頃から9月頃まで多くなります。好発年齢は1歳代が最も多く,5歳以下が全体の90%以上を占めます。ヘルパンギーナは自然治癒する軽症の病気ですが,まれに無菌性髄膜炎や急性心筋炎などの合併症があり,注意が必要です。

 手足口病というのは,コクサッキーウイルス・エンテロウイルスが原因で,症状は発熱と発疹が主症状です。発熱は3分の1くらいの人にみられ,あまり高熱にはなりません。発疹は手のひら,足の裏,口の中に小さな水疱が出現し,数日で消えていきます。手足口病も治療法は特にありません。数日様子をみていると,自然治癒していきます。ただ,エンテロウイルス71型によって起こる手足口病は,髄膜炎や脳炎といった中枢神経系の合併症を起こしやすく,高熱が続き,頭痛・嘔吐などの症状が出てきます。このような症状の場合は,必ず病院を受診しましょう。手足口病の感染経路もヘルパンギーナと同じで,くしゃみなどによる飛沫感染と便中に排出されたウイルスが手を介して口に入る糞口感染です。潜伏期間は3~

 

6日です。手足口病とヘルパンギーナは,どちらも学校や幼稚園での出席停止の基準は明確ではなく,便中には1か月近くウイルスが排出されますので,感染の危険性がなくなるまで出席停止にするわけにはいかず,解熱して全身状態が良ければ,登校・登園させています。

 

 7月17日(日)は当番医を担当します。救急患者優先となります。

 7月18日(月)~20日(水)は職員研修旅行のため,休診となります。

 

 8月7日(日)は学会のため休診となります。

 8月9日(火)午後~17日(水)が休診となるため,8月19日(金)を診療日と致します。

サンタ通信No203(06)裏 H28.06.18発行

アレルギーマーチについて

 アトピー性皮膚炎,食物アレルギー,アレルギー性鼻炎,気管支喘息などのアレルギー疾患はアトピー素因をもつ人に多くみられます。アトピー素因というのは,アレルギーを起こしやすい体質のことで,様々な抗原に対して過剰に反応して,皮膚炎や鼻炎,喘息など引き起こします。1人の患者さんを長期に診ていくと,赤ちゃんの時は乳児湿疹やアトピー性皮膚炎を発症して,小学生の頃には気管支喘息になり,中学生の頃にはアレルギー性鼻炎の症状が出始めてくるという経過をたどる人が結構います。このような現象をアレルギーマーチ(アレルギーの行進)という概念で馬場実先生が説明されています。もともとアトピー素因をもつ人が,母親のお腹の中にいる時,母親が食べた卵などの食物抗原が胎盤を介してアレルギーを引き起こし,食物アレルギー,アトピー性皮膚炎を発症させます。このような人に,ダニなどの吸入抗原が作用するようになると,気道アレルギーによる気管支喘息,アレルギー性鼻炎を引き起こすという考えです。

 

 確かに,母乳しか飲んでいない赤ちゃんにアトピー性皮膚炎の診断をすることはよくあります。その時にお母さんの食事指導で,卵の摂取を控えるようにしてもらうと,結構な確率でアトピー性皮膚炎が改善することがあります。妊娠中や授乳中に栄養をしっかり摂りたいということで,卵料理を多めに摂っているのかもしれませんが,アレルギー疾患の人が多い家系では

食事も気をつけた方が良いと思います。日本古来の和食が日本人の身体に合った食事内容になっています。一方,西洋料理をよく食べるようになってきたのは,50年くらい前からのことです。人間の身体が,食物や気候などの環境に適応して,変化してくるのに何百年もかかりますので,急激な食生活の変化は,いろいろなトラブルを引き起こすことになります。和食が世界遺産に登録され,世界中の人から支持されているということは,和食の素晴らしさを日本人よりも外国人の方が正しく理解している一方,日本人は和食より卵や肉を多用する西洋料理に憧れを持っているため,家庭や外食での食事に,子どもが好むハンバーグや焼肉などの洋食メニューが多くなるのでしょう。100年後は,西洋料理から和食へ戻っているかもしれませんね。

 赤ちゃんの時の食物アレルギー,アトピー性皮膚炎から,次の段階へ進む時に,ダニなどの吸入抗原に曝されると,気管支喘息を発症するようになります。それを予防するには,生活環境の見直しが必要になります。現代の住宅はサッシなど気密性が高く,冬でも室温が保たれます。ダニの発育至適温度は25℃前後で,至適湿度は65~75%でカーペットや畳,寝具に多く潜んでいます。床をフローリングに変えたり,掃除機をダニ除去できるものに変えたりすると,気管支喘息の発症には効果があるものの,喘息になってしまった人に対しては,ダニをいくら除去しても,喘息発作の改善は立証できていません。喘息になってしまったら,環境整備よりも薬物でのコントロールが優先されます。