サンタ通信No202(05)表 H28.05.18発行

インフルエンザは終息

 ゴールデンウィークに,フィリピンのセブ島に旅行しました。一人旅は,気を遣わずにすむ分,不安も大きいです。鹿児島ー東京ーソウルーセブと飛行機を3回乗り継ぎ,ホテルまでタクシーに乗り,チェックインも1人でしなくてはなりません。英語がもう少し自由に話せればと,いつも感じますが,片言英語でも,どうにかなるものです。今回は,飛行機の延着やホテルでのトラブルがなかったので,困ることはなかったのですが,これまでの旅では,飛行機が遅れて乗り継ぎができなかった時などに,自分の語学力のなさに冷や汗をかくことがありました。今の子ども達は,幼い時から英会話を習う機会がありますが,私が学生だった時代は,英語は文章を読むのと書くことが主で,話す授業は全くありませんでした。皆さんのお子さんには,是非とも英語が得意になってほしいですね。これからは英語が話せれば,どこへ行っても困ることはないでしょうから。

 さて,最近1週間(5月7日~5月13日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,感染性胃腸炎7人でした。次いで,溶連菌感染症3人,おたふくかぜ3人,水痘2人,インフルエンザ1人でした。ゴールデンウィークの影響もあり,全体的に感染症が少なくなっています。インフルエンザは,ほぼ終息しています。1週間でB型が1人だけでした。周囲に患者発生の情報があれば,迅速検査をするようにしていますが,ほとんどの例で陰性です。これからの季節を考えると,今後の流行については,心配ないと思います。溶連菌感染症についても,少なくなりました。新学期での感染拡大がピークを過ぎたのではと考えます。典型的な口腔所見のお子さんや,周囲に溶連菌の患者さんがいる場合に検査をするようにしています。おたふくかぜについては,昨年秋以降,週数人のペースで小さな流行が続いており,減少する傾向がありません。治療方法のない病気ですので,是非ともワクチンでの予防を心がけてください。かかってしまった患者さんを見る度に,顔の下半分が腫れて痛がり,食事が摂れずに苦しむ姿は,かわいそうです。おたふくかぜのワクチンも早く定期接種にしてほしいと切に願います。水痘は,定期接種に格上げされて,小さな子ども達がしっかりワクチンを受けてくれるようになり,患者数は著明に減少しましたが,小中学生くらいの年齢の子ども達は,ワクチンを受けていない人が多く,受けていても1回だけの人が多いので,もうしばらくは,今の小さな流行が続きそうです。あと10年もすれば,水痘の流行はなくなるのではと思われます。ちょうど,麻疹と風疹のワクチンが2回接種されるようになって以降,流行が根絶されているように,水痘も2回接種を全員が受ける状態になれば,日本から水痘を根絶できるのではと思います。

 ここに集計されない疾患で,最近目立ってきていると思われるのが,ウイルス性発疹症です。全身に米粒ほどの赤い発疹が拡がり,痒みはほとんどありません。38~39℃くらいの発熱を伴うこともあります。発疹はやや手足に多い印象があり,手足口病に近いウイルスが考えられます。ウイルス性で経過も良好なため,薬は使わずに様子をみることが一番だと考えていますが,よほど痒みが強い時には,痒み止めを処方します。発疹は数日から1週間で消失しています。4月末から急に増えてきた印象があります。これから夏にかけて注意が必要と思われます。ところで,典型的な夏カゼの手足口病はまだ流行はありません。しかし,例年,この時期から流行が見られていますので,今後に注意は必要です。夏カゼのヘルパンギーナについても,まだ患者発生はありませんが,そろそろ流行が始まります。周囲の流行情報に注意しましょう。

 

 6月4日(土)は学会のため,休診となります。

 7月17日(日)は当番医を担当します。救急患者優先となります。

 7月18日(月)~20日(水)は職員研修旅行のため,休診となります。

サンタ通信No202(05)裏 H28.05.18発行

皮膚のスキンケア

 この時期は,あせもや虫刺されなど,子どもの皮膚トラブルを起こしやすい時期です。紫外線の量は初夏が一番強いという報告を時々見ます。そのため,日焼けを起こしやすく,スキンケアが大切になります。また,この季節は,蚊やノミなどの昆虫が多い季節でもあり,虫刺されからとびひになってしまい,受診される患者さんも多く見かけます。特に肌の弱い赤ちゃんやアトピー性皮膚炎のお子さんにとっては,皮膚のバリアが壊れないように,普段からスキンケアが必要です。乾燥した肌は,細菌が入り込むのを防ぐバリア機能が弱くなります。虫刺されなどが原因で,皮膚の痒みがあると,引っ掻いた傷から細菌が入り,化膿してしまいます。このような状況にならないためには,皮膚を保湿することが大事です。

 保湿剤にもいろいろありますが,よく使われるのは,白色ワセリン(商品名:プロペト)とヘパリン類似物質(商品名:ヒルドイド)があります。プロペトは皮膚からの吸収はなく,皮膚表面を保護して,保湿します。このため,副作用はほとんどなく,安心して使えます。ただ,少しべたつくことが短所です。ヒルドイドは血行を高める成分のヘパリンを主成分とした保湿剤です。保湿効果が高いのですが,ヘパリンの影響で,血流が良くなりすぎると,皮膚の赤みが強くなる可能性があることと,炎症を起こした皮膚に塗ると,皮膚症状が悪化することがあり,気をつける必要があります。なるべく,皮膚の状態にあった保湿剤を選択するようにしていますが,実際に使用した後に,効果や使い心地などを教えていただければ,次回の処方に役立ちます。よく,あそこの薬が効かなかったからと,すぐに病院を替えられる方がいらっしゃいますが,かかりつけ医というのは,その方に一番合った薬を選択するのに,最初から強い薬は使いません。最初は弱いものから始め,経過をみながら,少しずつ強くして,ちょうど良い薬を決めます。経過をみながら調整することが,大切なことです。

 

 日常生活においても,皮膚のバリアを壊さないように心がける必要があります。入浴時は,石けんをよく泡立て,やさしく掌で洗ってあげましょう。石けんが残らないようにしっかりすすぐことも大事です。タオルやナイロンで強くこすることは,皮膚を傷めてしまいます。服は夏に向けて,薄着になりますが,それでも子ども達は汗をかきます。吸湿性の良い綿の肌着を着せましょう。外出時に長時間日光を浴びる場合は,必ず日焼け止めを塗りましょう。

梅雨時期の注意点

 ゴールデンウィーク直後に,カンピロバクター腸炎のお子さんを数人診察しました。全員「鶏刺し」を数日前に食べていました。正月やお盆,ゴールデンウィークなど,帰省客が多い時期は,鹿児島の郷土料理として,久しぶりに鹿児島に帰ってきた親族やお客さんに,「鶏刺し」を振る舞いたくなるのでしょう。焼酎に鶏刺しは,最高の組み合わせだと私も思います。でも,お子さんには食べさせないでください。免疫力の弱い子どもや高齢者にとっては,出血性腸炎を起こしてしまうことが往々にあるからです。鶏刺しで起こるカンピロバクター腸炎は,食べてから3~4日後に下痢が出るため,鶏刺しが原因とはなかなか思いつきません。下痢になったお子さんのご家族に「何か当たるような物を食べませんでしたか?」と尋ねても,「その頃は食欲がなくて,ほとんど食べていません」と答えが返ってきます。私の方から3日前に「鶏刺しを食べましたか?」という質問に,「その頃に鶏刺しが食卓に出たけど,〇〇君食べた?」と子どもに確認している光景もよく経験します。当たりそうな食べ物というのは,食べて数時間で起こるのがセレウス菌,ブドウ球菌は考えやすいです。肉類にひそむセレウス菌,おにぎりやサンドイッチに付着するブドウ球菌に注意が必要です。食後1~2日で発症するのがサルモネラ菌で,生卵や鶏肉・牛肉のたたきで起こります。食後数日間の潜伏期間で発症するのがカンピロバクター菌と腸管出血性大腸菌です。鶏刺しや火の通りが悪かった肉類などが原因になります。梅雨の頃から夏にかけて気をつけたいのが,食中毒です。お弁当やおにぎりなどが傷みやすく,ブドウ球菌による食中毒が多くなります。おにぎりを手で直に握らず,ラップでくるんで握るようにしましょう。