サンタ通信No198(01)表 H28.01.18発行

インフルエンザの流行始まる

 明けましておめでとうございます。今年も皆様にとって良い年になりますように。

 今シーズンはインフルエンザの流行が遅かったのですが,1月中旬から急速に流行が始まりました。昨年の終わりに散発的な流行がみられていましたが,お正月の帰省や旅行などで,感染する機会が多くなり,本格的な流行になってきました。これから1~2か月間はインフルエンザに注意が必要でしょう。

 さて,最近1週間(1月11日~1月17日)の感染症情報です。この週は普段より休診日が1日多かったために,患者数はやや少なめになっています。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症で32人でした。次いで,感染性胃腸炎15人,インフルエンザ15人,水痘2人,RSウイルス感染症2人,おたふくかぜ1人,咽頭結膜熱1人でした。今月14日には徳之島の小学校がインフルエンザのために学年閉鎖になったというニュースを聞きました。その頃からインフルエンザの患者さんが急に増えてきて,1週間に15人という数になってきました。内訳はA型9人,B型6人と両方の型が同じくらいになっています。これまで流行が遅かった分,これからは急速に患者数が増加するのではないかと心配しています。当院でも急な発熱患者を診る時には,インフルエンザの迅速検査を積極的にしていきたいと考えています。ただ,発熱後最低でも12時間経過していないと,検査で陽性にならないことが多く,発熱後は自宅で水分補給をさせながら,状態観察をしつつ,半日経過してから病院を受診するようにしましょう。

 インフルエンザの治療は,診断後なるべく早く,抗ウイルス剤を使用します。年齢の小さなお子さんには「タミフル」を5日間内服させます。ウイルスはヒトに感染して48時間以内にウイルスの増殖がピークになります。この増殖を押さえ込むのが「タミフル」ですので,ピークになった後に服用しても,効果がありません。早く服用すればするほど効果が高いのです。10歳台の人には「タミフル」による異常行動が起こりやすいため,服用しないように勧告されています。代わりに「イナビル」「リレンザ」といった吸入薬を使用します。「イナビル」は10歳未満は1個,10歳以上は2個を吸入します。初めに1回吸入するだけでその後の吸入は必要なく,治療は終了です。「リレンザ」は1日2回5日間吸入していきます。治療効果はどちらも同じですので,1回で済む「イナビル」をお勧めしていますが,1回きりの吸入ですので,うまくできないと,効果が乏しくなり,熱が長く続いてしまいます。「リレンザ」は回数が多い分,1回の失敗があっても,それ以外の回に吸入がうまくできていれば,十分な効果が出るというメリットがあります。発症してから2日以上経過している時は,抗ウイルス剤は使わずに経過をみます。抗生物質はインフルエンザには効果がありません。合併症としての肺炎や中耳炎など,二次性細菌感染症を併発してきた時には,抗生物質が必要となります。インフルエンザで高熱が続く時は血液検査をして,インフルエンザによる熱なのか,二次的な細菌の感染症なのかを判断します。

 他人への感染力は,発症前日くらいから発熱後5日間とされています。そのため,学校へ登校する目安は「発症した後5日を経過し,かつ解熱後2日を経過するまで」になっています。早く治療をして,発症後2日で解熱した場合には,解熱後2日で登校できるかというと,発症後4日しか経っていないため,まだ登校はできません。最低でも発症後5日間はお休みが必要で,さらに解熱後2日経過していることが必要なのです。また,保育園や幼稚園などの幼児の場合は,解熱後2日ではなく,解熱後3日経過した後に登園開始となります。もちろん,合併症もありますので,熱の経過だけではなく,全身状態が良いかどうかも,登校の判断材料になります。合併症もありますので,熱の経過だけではなく,全身状態が良いかどうかも,登校の判断材料になります。

 

 1月24日(日)と3月21日(月)(春分の日)は当番医です。救急患者の方が優先となります。

サンタ通信No198(01)裏 H28.01.18発行

     イスラム教の世界

 今年のお正月休みに,中東のアラブ首長国連邦を観光しました。王様が治める首長国,7つが一つの国にまとまったのがアラブ首長国連邦です。この中で一番大きな首長国はアブダビで,国の面積の80%を占めています。首都もアブダビです。このアブダビは面積が広い分,石油産出量が多く,石油の富で経済が潤っています。名前をよく聞くドバイも首長国の一つですが,面積は小さく,石油はほとんど出ないため,貿易を振興させる政策で都市をどんどん大きく成長させ,高層ビルが立ち並び,世界一高い建物や高級ホテルが軒を連ねます。アブダビやドバイは,石油が発見される前は,砂漠の中で,細々と農業をしたり,海で真珠漁をしたりする貧しい地域でした。そこに石油が発見されてからは経済が一変し,国民は莫大な冨を手にします。自分の土地に高層ビルを建てれば,世界中の会社が事務所にするために殺到し,アパートを建てれば,労働者が家を求めて殺到します。ですから,元々のアブダビ人やドバイ人は,働かなくても,自分が持つ土地を有効利用し,利益を得ることができます。国民の平均年収は驚きの 3,000万円くらいとのことでした。実際に働いているのは,異国から来た出稼ぎ労働者です。その労働者でさえも,クビになってしまうと,国外に強制送還されてしまいます。ですから,労働者はクビにならないようにしっかり働きますし,他の国のようにホームレスになる人もいませんし,無職で町をぶらぶらしている人もいません。おかげで,治安は非常によく,安心して観光ができます。この国には税金はなく,医療費も学費もすべて無料です。

 国の宗教はイスラム教で,町のあちこちにモスク(イスラム教の礼拝堂)を見かけます。もちろん,外国から働きに来た人は,キリスト教やヒンドゥ教の信者もたくさんいて,イスラム教以外の信仰も認められています。しかし,アラブ首長国連邦の元々の国民はほとんどがイスラム教徒で,信心深いです。イスラム教の戒律に対しても,ドバイは開放的ですが,シャールジャというドバイから車で30分走った国では,厳格な戒律を守っています。女性は顔以外の所を全て包み隠すような服装を義務づけられ,イスラム教で禁止されているアルコールはどの店でも販売されておらず,この国に持ち込むことも禁止されています。アラブ首長国連邦の隣国,サウジアラビアは最も厳格なイスラム教の戒律を守っている国で,女性が車の運転をすれば罰せられ,女性の生活には大きな制限がついています。また,人の物を盗んだ者は,罰として手を切り落とすというイスラムの刑法が今も残っています。社会生活が乱れないようにイスラムの教えがあるのだから,それから外れる者は重く罰するという考え方です。日本では考えられない価値観ですが,イスラム世界は信仰を第一にしていますので,その教えに従うことが自分の命よりも大切と考えています。

 お祈りも毎日5回決まった時間に行うように決められており,その時間がくると,アザーンという街頭放送が鳴り響き,知らせてくれます。人々はモスクで祈りを捧げ,モスクに来れない人は,自宅や職場で祈りを捧げます。モスクの横には,手洗い場と足洗い場があり,お祈りの前に,手や口,鼻,顔,足を清め,巡礼地メッカの方角を向いて礼拝します。同じイスラム教徒が信仰心を高めるために,できるだけ集団で礼拝を行い,仲間意識を強めます。砂漠のような厳しい土地で暮らしていた人々にとって,生活共同体を守るためには,仲間の固い絆が必要だったのでしょう。ドバイでお土産物を買う時も,値段交渉しますが,外国人には高い値段でしか売ってくれません。なぜ?と尋ねると,自分の兄弟や親戚に売る値段と同じ金額で外国人に売ることは,自分の仲間に失礼に当たるからとのこと。仲間を大事に思う意識は,時によっては他の民族との摩擦を起こすこともあります。イスラム教の宗派には2大勢力のスンニ派とシーク派があり,宗派間の紛争が中東の火種になっています。また,イスラム教徒は欧米から民主主義を押し付けられ,自分たちのイスラム世界を侵害していると感じています。それがイスラム世界を守ろうとする過激な思想の根底にあるのではと私は思います。価値観が違う人に対しては,自分の価値観を押し付けるのではなく,その違いを認めて,平和に共存していくことを進めることが,世界を一つにしていくのではないでしょうか。今回の旅行で,自分の知らなかった世界に触れて,イスラムの世界に生きる人々を身近に感じるようになりました。