サンタ通信No197(12)表 H27.12.18発行

 今年も残すところ2週間となりました。やり残した仕事に追われながら,年賀状の準備や年末年始の掃除に忙しい毎日です。今度の年末年始には当番医が当たらなかったので,中東のドバイを訪れて,イスラムの文化に触れてこようと思っています。イスラム文化と欧米文化の摩擦は,大昔から続いているものですが,考え方の違いや価値観の違いは,さらに激しい摩擦を引き起こしてしまいます。まずは,イスラム系の人々がどんな暮らしをしているのか,どんな考え方をしているのか,少しでも体験できればと思っています。

 さて,最近1週間(12月7日~12月13日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症で42人でした。次いで,感染性胃腸炎10人,おたふくかぜ3人,伝染性紅斑2人,水痘1人,RSウイルス感染症1人,突発性発疹1人でした。インフルエンザはまだ出ていません。市内で毎週数人は発生していますが,まだ流行とは言えない状況です。高熱を主訴に来院される患者さんが多く,一番多い溶連菌感染症かどうかをまずチェックし,インフルエンザなどの疾患も鑑別しながら治療していきますが,発熱後半に発疹を伴う例が時々みられます。これは,おそらくエンテロウイルス系の感染症だと思われます。高熱が続く時は,血液検査を行い,重症の病気を見逃さないようにしています。

 感染性胃腸炎も流行が続いています。感染力の強いノロウイルスやロタウイルスによる胃腸炎と鶏刺しで引き起こされるカンピロバクターや火がしっかり通っていない肉を食べて起こる病原性大腸菌などの細菌性胃腸炎もこの中に入ります。特に鹿児島は,鶏刺しを郷土料理としてよく提供することが多く,家庭でも食卓によく出てきます。当院でも,子どもが強い腹痛で受診したら,「3日前に鶏刺しを食べましたか?」と尋ねるようにしています。先日は,母親が「食べさせていません。」と断言した後で,子どもが「ばあちゃん家でたくさん食べた。」と教えてくれました。年配の方は,鶏刺しがごちそうだという価値観を持っています。その鶏刺しが急性腸炎を引き起こし,腹痛とともに激しい下痢により,お孫さんが苦しがるとは思いもしないでしょう。実家の親に「鶏刺しを食べさせたから,腸炎になった。」という小言も言いにくいものです。「何歳になったら,食べてもいいのですか?」という質問もよく経験します。大人になれば食べても良いということはありません。厚生労働省のホームページでは,市販の鶏肉についてカンピロバクターはレバー56検体中37検体(66.1%),砂肝9検体中6検体(66.7%),鶏肉9検体中9検体(100%)に検出されており,別の報告では鶏肉の汚染率は20~40%と言われています。今の食肉処理技術では菌を100%除去することは困難とされており,若齢者,高齢者,抵抗力の弱い人は生肉を食べないように指導しています。もちろん火を通せば,菌は死滅しますので,感染する危険性はなくなります。

 おたふくかぜが谷山地区で流行しています。毎週数人を診断しています。保育園や幼稚園で数人の患者発生があるという話もよく聞きます。おたふくかぜは治療方法がなく,じっと治るのを待つだけですが,症状がひどいと,難聴になったり,髄膜炎で入院になったりします。ワクチンで予防ができますが,1回だけ受けている方は,まだ発症することが多いです。2回接種(1回目:1歳過ぎた頃,2回目:3~7歳)が推奨されています。国の方でもおたふくかぜワクチンの重要性は認識しており,定期接種にすべきだという方針は決定していますが,より安全性の高いワクチンを求めていて,また財源をどうするかという問題も残っています。国が無料化するのを待っていても仕方ないので,自主的にワクチンで予防するようにしましょう。

 

 年末年始は12月29日(火)~1月3日(日)が休診となります。1月10日(日)は学会のため,休診となります。1月24日(日)は当番医です。救急患者の方が優先となります。

サンタ通信No197(12)裏 H27.12.18発行