サンタ通信No194(09)表 H27.09.18発行

   RS感染症にご注意

 朝晩が涼しくなり,庭に彼岸花が咲ました。空を眺めても,澄みきった青空に,うすい雲やすじ雲が広がり,入道雲は少なくなりました。季節はもう秋ですね。ぶどうや梨などの果物が旬を迎え,味覚の秋を満喫しています。この時期は運動会もたけなわです。先日,運動会の前日に39℃の熱があり,当日は解熱剤を服用して,運動会に参加し,夕方に40℃を越える高熱で病院を受診された患者さんがいらっしゃいました。家族にとって,運動会は一大イベントで,何とかして参加させたいという気持ちは分りますが,残念ながら,病気というのは人間の意のままになりません。無理をして,髄膜炎など重い病気に進行してから後悔しても遅いです。体調が悪いまま運動会に出ても,本人にはきつかった思い出しか残らないでしょうし,お昼のお弁当も美味しく食べられなかったのではないでしょうか。家族旅行を計画した時に,お子さんが熱を出してしまい,急きょ中止になってしまったという経験がある人も多いと思います。お子さんの発熱はいつ出るか,いつまで続くかは分りません。何か計画していても,変更になることはよくあります。親が行きたくても,子どもの体調を一番に考えて判断したいものです。

 さて,最近1週間(9月7日~9月13日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症で36人でした。次いで,手足口病11人,RSウイルス感染症8人,感染性胃腸炎3人,咽頭結膜熱2人,伝染性紅斑1人,突発性発疹1人でした。感染症全体が減少しています。これまで溶連菌感染症と手足口病が大きな流行になっていましたが,患者数は減少傾向が著明になっています。夏休みの間は,集団生活が少なくなり,感染症の流行が抑えられますので,休み明けの今が最も少ない状況だと思います。ただ,RSウイルス感染症は増加傾向です。ここ数年間は8月頃より増加し,冬場にかけて多くなる傾向があります。3か月未満の赤ちゃんがこのRSウイルス感染症にかかると,最初は鼻水や咳が出始めますが,すぐに呼吸がゼーゼーするようになり,夜間に呼吸困難になったり,哺乳ができなくなって入院になることが非常に多い病気です。小学生や大人もRSウイルスに罹患しますが,この年齢は鼻風邪や咳が少し目立つ風邪といった軽い症状しか起こりません。それでも感染力はありますので,小さな赤ちゃんがいる家庭や保育園などでは,このような症状がある人は,マスクをして,感染を防ぐ努力をしましょう。保育園に対する厚生労働省の感染症対策ガイドラインでは,2歳未満と2歳以上のクラスを構造的に分離できるようにしておき,RSウイルス感染症の流行期には交流を遮断するように書かれています。また,3か月未満で保育所へ通うことは,RSウイルス感染症のハイリスク群であり,今後医学的な知見から対応について検討することが必要とされています。つまり,小さな赤ちゃんにとっては,とても怖いウイルスなのです。この病気を実際に診断する時は,鼻水を取って10分くらいで陽性・陰性の判定ができます。しかし,保険で認められている検査対象は,1歳未満の赤ちゃんだけです。以前は,入院中の患者に限られていましたので,外来でも検査ができるようになったことは進歩ですが,赤ちゃんと接触を持つ兄弟や,保育園で接触する子どもや保育者も検査した方が,流行の阻止に役立つと思います。医療費の増大を食い止めたい厚生労働省としては,検査対象に制限をかけた方が医療費は減らせると思っているのでしょう。

が,予防に必要な検査を制限してしまっては,患者を増やし,入院治療が必要になる赤ちゃんが増えることにつながって,かえって医療費は高くなるのではないでしょうか。ほとんどの小児科医は,子ども達に無駄な検査を受けさせないように充分気を遣っています。採血や迅速検査も本当に必要なものだけに限定して,診療しています。そんな小児科医の意見は,国になかなか届かないものですね。

 

 11月22日(日)は当番医を担当します。救急患者の方は受診されてください。

サンタ通信No194(09)裏 H27.09.18発行

   咳の種類

 咳にはいろいろなタイプがあります。まずは,乾いた咳と湿った咳があります。咳のことを医学用語では咳嗽(がいそう)と言います。①乾いた咳(乾性咳嗽)はタンがからまない「コンコン」という“から咳”です。のどから肺にいたる全域で,気道の過敏などによって起こります。タンは少なく,ゼーゼーすることもありません。鼻咽頭炎や喉頭炎などの上気道炎により起こり,気管支や肺といった下気道では気管支炎や肺炎の初期には乾いた咳が出ますが,後には湿った咳になってきます。煙草や花火の刺激でも乾いた咳が出ます。心因性の場合も乾いた咳になります。②湿った咳(湿性咳嗽)は分泌物の多い咳で,気管から肺にかけて炎症が起こると,「ゴホンゴホン」という咳になります。気道の分泌物が非常に多い時や,タンを出す力が弱い乳幼児では,「ゼーゼー」しながら「ゴホンゴホン」という咳をします。気管支炎・気管支喘息・肺炎・RSによる細気管支炎などで起こります。③けいれん性咳嗽というのは,顔を真っ赤にして咳き込んだり,咳込み過ぎて吐いてしまうような強い咳のことです。代表的な病気には百日咳が挙げられますが,他にもピーナッツなどの気道異物や乳児のクラミジア肺炎でも起こります。④発作性咳嗽は,1回息を吸った後に,立て続けに出る咳のことです。これは気道過敏性が高まることで起こります。気管支喘息・せき喘息・マイコプラズマ感染症などでみられます。⑤犬吠性咳嗽は犬が吠えるような音,オットセイが吠えるような音「ウォンウォン」という咳で,普通の咳より音がかすれて聴こえます。これは,気道の入口(喉頭)が狭くなることで起こります。乳幼児は大人と比べて,喉頭の狭窄が起こりやすく,急性喉頭炎でみられる症状です。狭窄が重度になると,声が出なくなり,窒息を起こしますので要注意の咳です。⑥反復性咳嗽というのは咳が数ヶ月にわたり繰り返すもので,喘息を含む気道過敏によるものや,副鼻腔炎で鼻水がのどに流れ込む後鼻漏という状態でも起こります。当然カゼを繰り返している場合もあります。⑦遷延性咳嗽というのはもっと長びいて咳が続く状態で,気道感染後に咳をコントロールする中枢が過敏になってしまったり,喘息で気道が過敏になったり,気道で細菌やウイルスを外に送り出す働き(粘液線毛輸送)が障害されたりすることで起こると考えられています。原因になる感染症は,ウイルス・マイコプラズマ・クラミジアなどです。この遷延性咳嗽は,時間はかかりますが,最終的には自然に治癒していくものがほとんどです。咳についてもどんな咳が出ているのか,詳しく教えていただけたら,病気の診断に役立ちます。お子さんの看病をする時に,注意してみてくださいね。

   図書館へ行こう

 月に2回は図書館へ行って,本を読むようにしています。新刊書のコーナーに「ヒラムシ 水中に舞う海の花びら」という本があったので,借りて読みました。ダイビングをしていると,色鮮やかなウミウシをよくみかけます。ピカチュウウミウシ,シンデレラウミウシなど,人気のあるウミウシについてはガイドブックも多く,これまでたくさん本になっていますが,ヒラムシは同じ水中生物としては地味な存在で,あまり人気がありません。私もウミウシだと思って近づいて,「なんだヒラムシか」と通り過ぎることがよくありました。このガイドブックには,ヒラムシの生態や種類について,とても詳しく書かれており,よくここまでヒラムシを撮影,研究したなあと感心しました。写真に撮ると,どうしも派手で写真映りがきれいな生物に目がいきますが,どんな生物でも,同じ生き物として温かく見てあげることが大事なのだと思います。同じ時に見た新刊書コーナーには,「美しすぎる世界の貝」という本もあり,きれいな写真を見ているだけで海に行きたくなりました。また「スキンダイビング・セーフティ」という本もあって,興味深く読ませてもらいました。図書館は,いろいろな分野の本を蔵書にしていますので,興味はつきません。

 図書館の良い点は,自分が気に入った作家の本をいくらでも読めるところです。私は,原田マハさんの本を一度読んで,いい書き方しているなと感じたので,次から次にこの方の本を読み進めています。気に入った本もあれば,そうでもなかった本もあります。でもすべての蔵書を無料で読めるのですから,図書館は素敵な所です。作家も多過ぎて,どの作家の本を読めばいいのか迷いますが,まずは一冊読んでみましょう。そこで気に入った作家がみつかると,しばらくはその作家の本をいろいろと楽しめます。心温まる本に出会うと,人生が豊かになります。市立図書館は,平日は夜9時まで開館してくれています。私の仕事が終わるのは夜8時半くらいになりますので,さすがにそれから図書館に行くことは無理で,夏場は休診日以外に休みがあるので,図書館に行けるのですが,冬場は火曜日しか休みがないため,図書館の休館日と重なり,ほとんど行けなくなることが悩みの種です。祝日に本を借りに行き,夜にブックポストへ返すようにしています。