サンタ通信No192(07)表 H27.07.18発行

 ようやく梅雨明け!ようやく梅雨明け!

 今年の梅雨は,よく雨がふりましたね。奄美の梅雨明けが7月15日に発表され,2日後の17日に南九州の梅雨明けも発表されました。すっきりとした青空が気持ちいいです。雨は都会で暮らす人にとっては,嫌な雨だと感じることが多いですが,稲作農家にとっては,梅雨がなければ,稲の成長の心配をしなくてはなりません。自然の中で生活している人間ですが,自然に対しては本当に無力です。地震があっても,台風が来ても,洪水があっても,そんな環境の中で,人間は住まわせてもらっているのですから,なるべく謙虚な態度で,日々の生活を送る必要があると私は思います。川内原発が再稼働されますが,地元経済のためには必要不可欠という意見が多い中,福島の災害を教訓にしなさいと大自然が教えてくれているように感じます。原子力発電は経済性に優れていると言われますが,そこから排出される核のゴミについては,人間は処理する方策をまだ持っていません。地下深くに埋設したり,宇宙のかなたに運んだりする方法が考えられていますが,そこまでして原子力に頼る必要があるのか,私は疑問に思います。川内の地元経済を振興するのは,原子力に代わる形で,自然エネルギーを使った振興策を川内にもってきて,エネルギー基地を造ってもいいのではないでしょうか。

 さて,最近1週間(7月6日~7月12日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症で63人でした。次いで,手足口病29人,ヘルパンギーナ16人,感染性胃腸炎12人,伝染性紅斑8人,水痘3人,突発性発疹2人,咽頭結膜熱1人でした。溶連菌感染症はまだ流行が持続しています。夏休みで集団生活の機会が減ると,流行も小さくなります。もうしばらくは注意しておきましょう。夏カゼの手足口病とヘルパンギーナが,大きな流行になっています。手足口病は,発熱があまりなく,手と足,口の中に発疹が出現します。今流行しているものは,足の方に発疹が目立ちます。発疹は,足の裏と膝に多く,水疱になっている場合も多いです。口の中には,赤い発疹や浅い潰瘍ができます。口の痛みで,食事ができなくなったり,飲水ができなくなったりします。脱水にならないように,のどごしの良い飲み物を少しずつ,繰り返し与えることが必要です。ヘルパンギーナは発熱と咽頭痛が主な症状で,のどの痛みは手足口病よりも強いため,食事や飲水に注意が必要です。感染性胃腸炎はほとんどがウイルス性の胃腸炎ですが,たまにカンピロバクター腸炎という細菌性胃腸炎を経験します。今週も2人ほど鶏刺しを食べた後に数日で発症した例がありました。急に腹痛と嘔吐・下痢を訴え,年齢が学童期で,南薩の方でしたので,鶏刺しを食べていないか確認したら,どちらも発症の3日前に食べていたことが分りました。ホスホマイシンという胃腸に効果がある抗生剤を服用すると,数日で良くなります。鶏刺しの文化が根付いている鹿児島では,家庭の食卓に鶏刺しが普通に存在します。食中毒が,食べた後に3日経過してから起こるという発想があまりないため,「何か当たるような物,食べませんでしたか?」という質問では正解にたどりつきません。「3日前に鶏刺しを食べましたか?」という質問で,ようやく「その頃に一切れだけ食べさせました」という情報を得ることができます。食中毒は摂取後数時間で発症する菌もあれば,数日後に発症する菌もあるのです。生の魚を新鮮で美味しいと刺身で食べる日本人は,鶏や牛肉も生で食べた方が美味しいし,新鮮な物は食あたりにならないと信じています。でも,スーパーで普通に売っている鶏刺しのうち,20~50%はカンピロバクターに汚染されているという報告があります。鹿児島では家庭で良く食べているため,それまで何回も腸炎を経験した後,免疫ができて,大人になった時に食べてもどうもないと思っているだけです。鶏肉は,火を通して食べるようにしましょう。それでも十分美味しいです。



 7月26日(日)は当番医を担当します。救急患者の方は受診されてください。お盆休みは8月14日(金)

と15日(土)です。

サンタ通信No192(07)裏 H27.07.18発行

 暑い夏は水分をしっかり摂ろう

 雨が多く,6月はほとんど晴れの日がなかったです。7月中旬から青空が広がるようになりましたが,暑さも本格的になってきました。各地で熱中症のニュースが駆け巡っています。熱中症というのは,高温多湿の環境において,体内の水分と塩分のバランスが崩れ,体温の調節機能が破綻することによって起こる障害のことです。人間の体温はいつも36~37℃に調整されており,運動すると体温が上がりますが,同時に汗を出すことにより,体温が下がります。このように体温調節機能が働いている時は良いのですが,水分摂取が足りなくなると,汗が出なくなり,体温は上昇するばかりで,熱中症に陥ります。

 熱中症の初期は,めまい・失神(立ちくらみ)の症状が現れます。筋肉の痛みや硬直(こむらがえり)が起こることもあります。体温を調節しようとして,大量に汗をかきます。この時の対処は,涼しい所で安静にさせ,水分を補給させることです。さらに重くなると,頭痛や気分不良,吐き気が出てきて,体がぐったりしたり,力が入らなくなったりします。このような場合にも,涼しい所で安静にさせ,水分補給することが大事ですが,口から飲めない場合には,病院を受診し,点滴での水分補給が必要です。もっと重症になると,体温調節機能が破綻し,40℃を越える体温になり,意識がなくなり,けいれんが起こります。こんな時は,直ちに救急車を呼びましょう。一刻も早く点滴処置を行い,同時に濡れたガーゼやペーパータオルなどを体に張り付け,扇風機やうちわであおぐというような,急速冷却処置を行います。

 子どもは熱中症に弱いです。子どもは,体温調節が大人と比べて,うまくできず,同じ運動量でも,子どもの方が大人より多くの熱を産生します。子どもは発汗の速度が遅く,熱がたまりやすい体質をもっています。さらに,子どもは体重あたりの体表面積が大きいため,環境温度の影響を受けやすいのも,熱中症を起こしやすい要因です。熱中症を防ぐには,普段からバランスの良い食事をしっかり摂り,十分な睡眠をとって,外出時には帽子で直射日光を避け,熱を放散しやすいゆったりとした服装にして,水分をまめに摂るようにしましょう。

 手足口病にかかったら手足口病にかかったら

 今,全国的に手足口病の流行が急速に拡大していて,テレビや新聞などで,よく取り上げられています。手足口病の原因は,エンテロウイルスです。その中で,コクサッキーウイルスA16とエンテロウイルス71というウイルスにより起こることが多く,コクサッキーと名前がついていますが,エンテロウイルスの中の一つです。手足口病の主な症状は,発熱・発疹ですが,発熱は出ても37℃台の微熱で,多くの患者さんは発熱がありません。発熱がみられる場合でも,2~3日で自然に解熱します。発疹については,手足の水疱と口の中の口内炎(小さな潰瘍)があります。乳幼児に多い病気で,5歳以下が80%,2歳以下が半数を占めます。夏カゼの代表ですので,夏が好発時期ですが,秋にもよくみられます。潜伏期は3~6日で,感染経路は,病初期には口の中にいるウイルスが,くしゃみなどの飛沫感染により,周囲の人ののどから体内に侵入し,腸管で増殖し,発症します。全身状態が改善した後も,便中にウイルスは長期間排出され,糞口感染という経路で拡がります。糞口感染というのは,手を介してウイルスを含んだ便に触れて,その手を口にもってゆくことでウイルスが口から入ってしまう感染の経路です。病気から回復した後,約1か月くらい便中にウイルスが出ることもあるので,お子さんのおむつ替えの時は,丁寧に手洗いをしましょう。治療に効果的な薬はなく,自然経過でみるしか対処方法はありません。発病後の経過については,手足の発疹は数日すると,色があせて,うすくなってきます。のどの痛みも2~3日すると改善し,あまり重症感を感じません。しかし,これらのエンテロウイルスによる病気の場合に,まれに髄膜炎や脳炎などを合併しやすいウイルスが存在します。特に,エンテロウイルス71は重症化しやすいことが知られています。腸管で増殖したウイルスが,血液中に入り,ウイルス血症を起こし,身体のいろいろな臓器に運ばれます。運ばれた先でもウイルスは増殖し,そこが脳などの中枢神経系の場合は,高熱が続き,頭痛や嘔吐がみられ,髄膜炎や脳炎になってしまいます。症状が軽いからと,外で遊ばせたり,プールに行ったりすると,その夜から高熱になったというお子さんもたくさん診てきました。診断後はゆっくり休ませながら,少しずつ元の生活に戻すようにしましょう。登園や登校については,便を介して感染する可能性は残りますが,本人の全身状態が良好に保たれていれば,集団生活は許可されます。発病初日は経過をみていくしかありませんが,2~3日経過して,熱もなく,食事も普通に摂れるようなら,集団生活に戻れると考えて良いでしょう。